部会だより(編集部会)

 編集部会のこころ……

 現在、大学出版部協会の主たる活動は、編集、営業、電子、国際の四部会によって運営されている。この四部会の名称、実にいまの出版業界全体の在り様と方向性を表わして簡にして要を得ていると思う。
 で、編集部会である。出版というなりわいに編集業務が不可分・不可欠なのは当たり前。だが、各大学出版部の編集者が呉越同舟(と思うのだが)、出版の理念を追究し、語りあい互いに編集技術を研鑚しあう「会」の存在となると話は別だ。
 私は、編集部会の一員に加わりながら、ふと不逞にも、この部会の存続していること自体に不思議を感じてしまうのである。私の偏頗な思い込みかもしれないが、そもそも「編集者」という種族は、比較的に孤を好み、ひとかどのライバル心もあり、結構なうぬぼれ屋でもある。そんな連中が、小なりと言えども、一堂に会し、一つの運動体を構成してきたのだ。先人の小異を排し、大同につくを潔しとした真摯かつ悠揚たる心意気を想わずにはいられないのである。
 われわれもその驥尾に付し、編集部会のさらなる発展のために微力を尽くそうと心に期す今日この頃である。

 編集部会のそれから……

 そして、去る8月26日、福岡の地、九州で初めて開かれた夏季研修会において、編集部会は営業部会の賛同・協力のもと、理事会の承認を得て、従来、編集部会のサークル内で行なってきた「編集・本作りのケーススタディ」を四部会を横断し、さらに協会外の書籍販売業界およびメディアにまで参加を呼びかけ、「公開研修会」を試みた。報告は、名古屋大学出版会の橘宗吾氏にお願いした。
 残念ながら、メディア側からの参加は得られなかったが、福岡エリアの有力書店および取次会社の幹部の方々(9名)にご出席をいただき、大よそ好評裡に会を収めることができた。初めての試みゆえ、戸惑うこともあったし、心地よい緊張も走ったが、法人化を機に、より業界(世間)に開かれた活動を目指しての第一歩を踏み出したとは言えよう。少なからぬ反省を踏まえ、公開研修会を継承・発展させる気運が高まっているところだ。
 言い忘れたが、編集者の大事な資質がもう一つある。バカがつくほど、限りなく楽天的であること。




 関西支部だより

 大学出版部の新たな試み――京都大学学術出版会「学術選書」

 昨年12月の第一回配本の4冊を皮切りに、すでに6冊の書物が刊行された、京都大学学術出版会の「学術選書」。
 とかく難しそうで、小部数で、高価格の本が連なる大学出版部の書籍ラインナップのなかで、この京都大学学術出版会のチャレンジは、一際眼を引くものでしょう。この「学術選書」の刊行趣旨にはつぎのように記されています。
 「携帯電話一つとってみても、私達の暮らしは、科学・技術の支え無しには成り立ちません。しかし今日の科学は、研究者の間でさえ、少し専門が異なると理解することが難しい程に高度化し、一言で言えば「難しい」ものになってしまいました。しかし、これは悲観することではありません。本来、この世界は「分からないこと」だらけです。進歩したと言っても、まだ科学はこの世界のほんの一隅を理解しただけなのです。そしてなにより、この「分からない」ところにこそ、科学を学ぶ面白さ、楽しさがあるのです。「分からないから面白い」――このことを少しでも知っていただきたい。……」
 「大学と社会を結ぶ知のネットワーク」の構築が大学出版部協会の大きな目的のひとつですが、その理念実現のために、より多くの読者の方々に手にとってもらうような書籍の形態を整え、先の刊行趣旨に掲げたような学問の面白さ、楽しさを伝えるように内容の充実を図ることにはさまざまな困難が伴います。その幾重もの困難を乗り越え、ひとつの明確な「学問への入り口」としてかたちづくられたのがこの「学術選書」です。
 「学術選書」はサイエンスの多彩なテーマを用意しています。読者の方々が興味のあるテーマに出会ってくれることを期待しています。




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