ペーパークラフトの四季−夏

ペーパークラフトで表現する動物たち

畑野 光男



 紙で作る動物には、さまざまな表現方法があります。折り紙のようにハサミや糊を使わず、折り込むだけで細かな部分まで表現するものや、本の付録などでよく見かける、表面を絵で処理したものを糊貼りや差し込みで組み立てるもの、そして、動物の形を多面に置き換えて、それを貼り合わせて立体にしたもの等、たくさんのペーパークラフトがあり、それぞれがすばらしい表現方法です。
 私が作る動物たちは、紙の特性、素材を出来る限り生かし、形だけでなくそれに動きを与え、生き生きとした親しみのあるペーパークラフトであってほしいと考えています。
  
 作品の題材は自然の中で自由に生活する動物が多く、これを選んだ動機の一つに、子供のころサーカスで初めて見たゾウの大きさと臭いにびっくりした印象が強くあります。当時はサーカステントの脇にゾウの囲いがあり、自由に見ることが出来たのです。ライオンやトラ、そしてゾウのショーを、目を輝かして見ていたのを覚えています。後に、大自然の野生動物が出てくる「ターザン、ハタリ、ディズニーの動物ドキュメンタリー」等の映画を見て野生動物がより好きになりました。
 ちょっと話がそれましたが、作品制作の過程を順を追って説明したいと思います。
 まず、動物の観察をします。図鑑等で下調べしたのち、動物園で動物のしぐさ・体型をスケッチします。スケッチは、細かな部分のデテールをつかむのには一番良い方法だと思います。動きについては動物園の動物はほとんど参考になりません。それはドキュメント映画等を見て研究しています。
 こうして、いよいよ図面に描き起こす段階に入ります。動物のスケッチを見ながら、俯瞰図を単純な直線に置き換えて、フリーハンドで数点のラフスケッチを描きます。この中から動き方も踏まえ、より単純な線で的確にその動物に見えるものを選び、方眼紙に直線で側面図、正面図、上面図と描き移します。ここでむだな線がないかギリギリまで整理し、煮詰めていき仕上げます。
 動きの部分は、側面図にコンパスを使って足跡を描き、支点を求めながら動きの変化を描いていきます。私は、作品のポリシーとして3カ所以上は動くように心掛けています。紙の動物たちの動く様子を想像しているこのときが、一番楽しい瞬間かも知れません。



 平面図が完成した所で、展開図を描き起こします。平面図から実寸を求めるのに、数式は使いません。小数点以下の数値が出てしまい、定規で計れないのです。そこで三角定規とコンパスで実寸を出します。組み立て順、のりしろを踏まえて展開図を完成させます。
 展開図をコピーし、用紙(レザック66)にセロテープで止めます。鉄筆で折り筋を入れ、カッターナイフで切り離します。それぞれのパーツに折り癖を付け、組み立て順序を考えながら糊貼りで組み立てていきます。
 いろいろ困難な過程を経て仕上がった動物たちが図面どおりに動き、草原を駆け、食事をし、水浴びをする野生動物に重なって見えた時が、このペーパークラフトの完成です。作品ひとつひとつの完成は喜びと感激でいっぱいになり、また次への作品のエネルギーと意欲につながります。
(グラフィックデザイナー)



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