ペーパークラフトの四季−春

動くペーパークラフトとの出会い

畑野 光男



 パッケージデザインという仕事の中に、構造デザインがあります。紙を素材としたパッケージでは、内容品の保護が重要な条件の一つとなります。紙は折ることにより一定方向からの力に対して強度が生まれる特性から試行錯誤を重ね、ギフト箱やこわれ物の運送箱、そして、楽しさや後利用性、キャリー式などの形状のユニークなものを、アイデアとしてクライアントにプレゼンします。
 具体的に話が進むにつれて、生産性、経済性などの問題が生じ、結局、ユニークな作品を追求するが為に、加工が複雑であったり量産の工程にマッチしなかったりして、無難なつまらないパッケージに止まってしまいます。このようなことから私としては、ジレンマのようなものを感じ、仕事とはかけ離れた全く規制に捕らわれない作品を創作できないものかと模索していました。

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 そんな時期に、友人からデザインコンペを一緒にやらないかと誘われ、それに参加することになりました。これは日本広告技術協議会が主催する第1回「NAAC展」で、かつての日宣美展を引きついだデザインコンペでした。応募作品は、動物をテーマにしたペーパークラフト「ANIMALS IN CIEANLAND」で、立体デザイン部門の特選を受賞しました。
  
  

  
 この時のAD/加藤清克氏からの影響が、後に私がペーパークラフトに入り込む大きなきっかけとなりました。1987年には、日本デザインコミッティー主催のデザインフォーラムで、作品「クラフテリア・サウルス」で金賞を受賞するなど、ここまではデザイナーとして知人との共同制作でした。
 その後もっと自由な作品創りを追求したくなり、デザインコンペとは違う手づくりを主体とした作品公募の、東急ハンズ主催「ハンズ大賞」に単独で挑戦する事にしました。
 この時から、何の制約も無い紙の特性を十分に生かした自分流のペーパークラフト作品が生まれました。野生動物をモチーフに、紙で出来る動きのメカニズムへの追求、そして動物らしい質感の用紙(レザック66)を使い、カット、折り、糊貼りで表現した作品「野生動物のなかまたち」でプランニング賞。
 次に厚口の用紙で、どこまで大きい作品が出来るかチャレンジしました。以前から興味があった恐竜のティラノサウルス、トリケラトプスを題材に、それぞれの骨格を古生物専門図鑑などの資料でチェックし、観察できない細部は国立科学博物館に通い、骨一本ずつを展開図におこし、実物に近い一体約300パーツを一年がかりで組み立てた作品「恐竜の親子」(全長約4m)で準グランプリ。
 江戸古来からある張り箱の技法を取り入れた引き出しと、自宅で同居していた猫をモチーフにしたペーパークラフトを合体させ、猫の日常のしぐさと、引き出しを引く事により中に潜んでいるネズミたちが、動きだす作品「ねこだんす」でグランプリを頂きました。
 それぞれの作品には、それぞれの思い入れがあります。構想からスケッチ、平面図、展開図、カッティング、組み立てを数回繰り返し、満足のいくまで仕上げて行く工程の疲労と充実感、そして完成した時の感激は苦労した度合に比例して大きく、背筋がゾクゾクするほどです。まさに私がペーパークラフトにはまった瞬間でした。
(グラフィックデザイナー)



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