AJUPオピニオン



 にわか「編集者」の呟き

 編集の仕事をするようになってはや三年が過ぎた。著者や訳者という立場から、長年編集の方々にお付合いいただいてきたが、皆さん個性が強く、そこに編集者としての矜持を感じ取ってきた。編集者が本を好きなのは当然だが、「好き」を支える骨太な信念がそれぞれにあって、時に応じてそれが顔をのぞかせる。共通するのは、「文化を支えリードする出版」に対する熱意、大げさにいえば使命感であろう。だから、東北の小都市の生意気な研究者であった私などにも、気配りや目配りをしてくださったのだ。協会のある方などは年に一、二度わざわざ出かけてこられたが、それは東北の酒と温泉が目当てであったというばかりではあるまい。若造たちの話に熱心に耳を傾け、いつも口癖のように「なるほどねー!」と相槌を打ってくださった。それがどれほど私たちを勇気づけてくれたことか。
 にわか「編集者」として、協会のさまざまな方々に助言や指導を仰ぎながら、何とかボロを出さずにやっているが、いつの間にか「なるほどねー?!」と呟くようになった自分自身に気づいてニンマリするこの頃である。
座小田豊
(東北大学出版会)




 和綴じ本の風合い

 自費出版ブームのようである。昨今のカルチャー文化や社会人の生涯教育の広がりが底流にあることは間違いない。それを商業出版が色々な謳い文句で後押しをしている。ひと昔前なら自費出版は非売品と相場がきまっていたものを、定価を付けます、一定期間書店におきます、等々と創作意欲旺盛な市民の射幸心をかきたてるかのようである。
 かくいう私もいま自費出版に取り組んでいる。私の俳句の師匠が三年前に癌でなくなったが、半年間の壮絶な闘いを詠んだ六百句余りをなんとか句集にしたいと思っている。が問題は資金、あれこれの思案の挙句、思い至ったのが和綴じ本。
 本文はパソコンによるDTPに近いともいえるが、表紙に和紙を使い糸でかがって綴じるので当然量産はできない。故人に縁りのあった人達に進呈できれば充分なので、もっぱら日曜日の趣味として本つくりに勤しんでいる。和紙の独特の風合いを愉しみながらも、小部数ローコストの出版が可能な時代を待ち望んでいる。
 平山勝基
(中央大学出版部)




 会社はこれから・・・

 小会「寄附行為第4条目的」を読む。
 「この法人は、九州大学を中心とした西日本一帯の…」―2003年、3つの医科大学と九州芸術工科大学が各々佐賀大学、宮崎大学、大分大学と九州大学に統合し、広島修道大学が新規に加盟して現在27大学共同学術書出版会である。会の名称について設立時から今だに意見百出であるが、「九州(僅か間(ま)を入れ)大学出版会」で落着。
 「民間出版社において採算上刊行を引受けないような優良学術図書の刊行頒布…」―1975年の設立の前後2回の募金合せて5000万円弱で今日まで約30年活動を続けているが、その困難な「目的」を達成するための事業には、たえず寄附行為=募金活動も必要ではないか。
 「もって学術の振興及び文化の発展に寄与する…」―いわゆる「学界」に寄与する活動であり、関係「学会」で、刊行物の紹介・販売に協力いただきたい。
 とにかく、編集者をはじめとした関係者の間に徒労感が残るだけ、という事態は避けなければならない。
藤木雅幸
(九州大学出版会)




 関西支部だより

 大阪経済法科大学出版部の誕生
 小部は1987年9月に設立され、今年10月で18年目を迎える。
 本学では、1986年前後から出版部設立の準備を進めてきた。出版部創設の意義・目的は、教員の研究成果・業績などの発露となって大学全体の研究活性化に寄与できること、社会への文化発信となること、大学間交流を促進できること、国際交流において側面的に寄与できることにある。しかし当時、日本で出版事業に着手している大学は少なかった。それは「出版事業」というものの重要性を認識しながらも、多くの問題があることを裏付けている。出版事業が財政的に引き合わないこと、体制が組めないこと、既成業者との利害関係があることなどが主要な原因と考えられた。それゆえ、本学で出版事業を軌道に乗せる意義には大きいものがある。
 以後、出版部設置のための問題解決に向けて行動を開始し、出版に関する動向や状況を調査・把握するため、他大学への研修などを行った。地理的に近い関西大学出版部などを訪問して多くの情報をいただいた。また1987年5月、東京大学出版会、東京電機大学出版局をたずね、各大学の出版部の現況、大学出版部協会の諸事業、出版部設立に際しての留意事項など多くの貴重な助言をいただいた。そののち、大学内部で慎重な討論を重ね、大学出版部協会への加盟申請を行い、1989年4月に承認をいただいた。
 設立当初は、本学創設者の故金澤尚淑博士を悼む『故金澤尚淑博士追悼論文集』を創刊、翌年1988年には出版企画委員会規程ができ、学術出版に弾みがでてきた。それからは教科書をはじめとして歴史、法律、経済関係などの書籍を刊行し、現在では100点を超えるまでになり、年平均7点を刊行する出版部となった。現在も刊行書籍の質の向上に向け、部員一同、鋭意努力を重ねている。
 こうして大学出版部協会や加盟大学出版部のかたがたの暖かい励まし・貴重な助言、熱い情熱で初志を貫いた先輩諸兄の努力により小部は設立された。現在、草創期の理念を継承しつつ、「日々精進」という気持ちで業務に励んでいる。
月城 浩
(大阪経済法科大学出版部)




 部会だより

 電子部会からのお知らせ
 インターネット利用人口は五千万人を越え、これまでにない可能性をもった新しいメディアとして利用されるようになった。このインターネットを利用して、大学出版部で出版している学術書や一般読者に向けた教養書を紹介する取り組みが始まった。
 ひとつは、TFMインタラクティブという東西NTT、全国38のFM放送局が設立したインターネット放送の番組で、学術書を画像や音声を取り入れて紹介する試みである。iiV Book Lounge(ブックラウンジ)(http://iiv.ne.jp/booklounge/)という番組名で11月から放送がはじまり、毎週1冊の学術書を著者へのインタビューなどで紹介している。
 また三省堂ブックサイト(http://www.books-sanseido.co.jp/)では、月ごとにテーマを設け、大学出版部の学術書を紹介している。さらに丸善インターネットショッピングのサイト(http://www.maruzen.co.jp/)では「大学出版部協会のおすすめ」が紹介されている。それぞれのサイトを訪問してご覧いただければ幸いである。




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