第2回 日本・韓国・中国大学出版部協会
合同セミナー報告

―中国・北京外語教学与研究出版社にて―

石井 誠二

 第2回日本・韓国・中国大学出版部協会合同セミナーは去る8月27日、中国・北京市の北京外語教学与研究出版社会議室に於て、中国大学出版社協会23名、韓国大学出版部協会14名に我が日本大学出版部協会10名を加え、開催された。

 北京大学出版社彭松建社長の開会挨拶の後、壇上の各国代表団が紹介され、主催国として中国大学出版社協会の高旭貨常務副理事長が挨拶され、その後、日本大学出版部協会山下正団長と韓国大学出版部協会金容徳団長がそれぞれ挨拶に立った。今回のセミナーでは、3カ国計6名の発表が行われた。先ず最初に会場を提供した中国の北京外語教学与研究出版社の李朋文社長が『外語教学と研究出版社の発展の道から見た中国の大学出版社の発展様式』というテーマについて、 大変力強く発表された。

 内容的には、1)世界の大学出版社のいくつかのパターンとわが社の発展の基本状況、2)図書企画は出版社の命の絆なり、3)独特な販売パターン、4)国際協力は成果が多い、5)経営管理・内部体制を強化する発展の道を歩む、6)目標の規定と実施の進路、といった要点にまとめられ、韓国と日本(東京大学出版会・長坂正幸氏東海大学出版会・三浦義博氏の発表内容は本号で後述されるので、本稿では割愛)の発表とは、かなり次元・内容とも異質なものに感じられた。現在の中国の大学出版社では、いわゆる「学術出版 の売上げシェアーが10〜20パーセントにすぎず、残りの80〜90パーセントは、教科書・テキスト・教材書等が中心で、正に時流とニーズに合致し中国出版社500社の内100社を占める大学出版社は毎年売り上げが倍々ゲームで伸びている出版社も多いとの発表に、驚きを隠しきれなかった。

 この後、韓国の建国大学出版部・朱弘均出版課長より『韓国の大学出版構造の特性と発展方向』というテーマのもと、1)韓国の大学出版部の現況、2)大学の出版構造の特徴と当面の課題、3)発展のための提言、4)おわり、として、大学出版部が大学という保護幕に隠れて目立たない役割と努力をしてきたが、これからは大学の先進化のために大学と大学出版部が同伴者としての、見せる役割を果たさなければならない時点に来ていると強調され、データも含め内容的には地道ながら大いに参考になった。

 次に中国の清華大学出版社・李淑江副社長より『清華大学の学科優勢を発揮し、世界的に有名な大学出版社を目指す』とのテーマで、清華大学出版社の、1)概要、2)図書構造、3)出版特徴、4)運営等を盛り込み、積極的で前向きな発表であった。最後に、北京医科大学・中国協和医科大学連合出版社の陸銀道常務副社長より、『大学出版社の管理について』というテーマに基づき、1)目標の選択と発展戦略の作成、2)システムの統制と人的資源の利用、3)技術の進歩と技術の整備について述べられ、多角的な視野から経営管理について発表された。時間的な制約もあったが、日本を含め六名の発表の後には活発な質疑も有り、参加者の積極的な姿勢で討議は深まったと思われる。

 今回のセミナーは一日というスケジュールの中で、昼食後には、会場を提供した北京・外研社(略称)李社長の案内で社内視察も行われ、日本の大学出版社には無い最新の施設、最先端のコンピュータ室、TVスタジオ等を見学した。

 日本・韓国・中国大学出版部協会合同セミナーも今回で第2回となりましたが、それぞれ国の社会体制など異なる中であっても、大学出版部に携わる立場は共通であり、お互い得るものも多かったと思う。最後に3カ国の代表が記念品を交換し、来年韓国での再会を約した。(慶應義塾大学出版会・大学出版部協会幹事)


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