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強国に生きる民族性と帰属性北の民の人類学

北の民の人類学 強国に生きる民族性と帰属性

A5判 348ページ
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-87698-695-8 C3039
奥付の初版発行年月:2007年01月 / 発売日:2007年01月下旬

内容紹介

ポスト・ソビエト状況,改革開放政策,都市への移住・開発,生態的変化と文化復興運動,アイデンティティの構築など,さまざまに揺れ動く社会状況の中で生きる北方周極地域の少数民族.圧倒的な力をもつ多数派集団と共生する彼らのエスニシティとアイデンティティの動態を描き出し,人類学的視点から両者の関係を解明する.

著者プロフィール

山田 孝子(ヤマダ タカコ)

京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。京都大学理学博士。現在,京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専門は宗教人類学,文化人類学,シャマニズム研究。
主要著書・論文:『アイヌの世界観』(講談社,1994),An Anthropology of Animism and Shamanism (Akad士iai Kiad 1999), The World View of the Ainu (Kegan Paul, 2001), 「現代化とシャマニズムの実践にみる身体」(『文化人類学』70(2),2005)など。

煎本 孝(イリモト タカシ)

東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学。Ph.D.(サイモン・フレーザー大学)。現在, 北海道大学大学院文学研究科教授。専門は生態人類学,文化人類学,自然誌,北方地域研究。
主要著書・論文:『文化の自然誌』(東京大学出版会,1996), 『カナダ・インディアンの世界から』(文庫版,福音館書店,2002),『東北アジア諸民族の文化動態』(編著,北海道大学図書刊行会,2002),『トナカイ遊牧民,循環のフィロソフィー』(明石書店,2006)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 北の民の民族性と帰属性          [煎本 孝・山田孝子]

第 I 部 共存への道

第1章 アイヌ文化における死の儀礼の復興をめぐる葛藤と帰属性
                             [煎本 孝]
1 序論——民族間の紛争とその解決
2 アイヌ文化の変化と死の儀礼
3 死の儀礼の復興の準備
4 死の儀礼の実践
5 考察——民族的帰属性と共生関係の形成
6 結論——共生の思考と人類学

第2章 カナダ・イヌイットの文化的アイデンティティと
    エスニック・アイデンティティ           [岸上伸啓]
1 はじめに——エスニックシティ研究とアイデンティティ
2 アイデンティティの概念と理論的な視座
3 カナダ・イヌイットのアイデンティティの複合性
4 カナダ・ヌナヴィクのアクリヴィク村におけるイヌイットのアイデンティティ
5 カナダ国ケベック州モントリオールのイヌイット・アイデンティティ
6 文化的アイデンティティとエスニック・アイデンティティ
7 結論——文化的アイデンティティとエスニック・アイデンティティの形成と再生産

第 II 部 「自然」のシンボル化

第3章 自然との共生
——サハのエスニシティとアイデンティティ再構築へのメッセージ[山田孝子]
1 はじめに——ポスト・ソビエトと民族的アイデンティティ
2 サハの歴史的背景
3 共和国政府による生態学的国家建設
4 ヤクーチアにおける文化復興
5 おわりに——アイデンティティ再構築の核となる「自然との共生」の哲学

第4章 「我々はカリブーの民である」
——アラスカ・カナダ先住民のアイデンティティと開発運動  [井上敏昭]
1 はじめに
2 現代グィッチンの狩猟採集社会
3 グィッチンの狩猟採集社会とアイデンティティ
4 ANWR開発計画とグィッチンの反対運動
5 考察:強国に生きる先住民社会

第5章 アイデンティティ構築におけるブッシュ・フードおよびブッシュの役割——オマシュケゴ・クリーの事例から           [大曲佳世]
1 はじめに
2 クリーの現代的生活
3 多文化適応とアイデンティティ
4 アイデンティティ構築におけるブッシュ・フードの役割
5 おわりに——多文化適応の戦略としてのアイデンティティ

第 III 部 社会変動を生きる

第6章 チュコトカ自治管区におけるトナカイ牧畜の変化の多様性
——危機に対するチュクチの対応              [池谷和信]
1 はじめに
2 チュコトカをめぐる近年の政治経済の動向
3 チュコトカ自治管区におけるトナカイ牧畜の変化(1927-2001年)
4 チュコトカ自治管区内の地区別の変化
5 「急激衰退型」の村の経済変容と最近の先住民運動
6 まとめと考察

第7章 トゥメト・モンゴル人の民族的アイデンティティの変遷
                             [雲 肖梅]
1 はじめに
2 1940年代におけるトゥメト人の民族的アイデンティティ
3 新中国成立初期におけるトゥメト人の民族的アイデンティティ
4 文化大革命時期におけるアイデンティティ
5 改革時期におけるアイデンティティ
6 考察——激動のなかでの民族的アイデンティティ

第8章 中国満洲族のアイデンティティ——清朝時代と中国成立以降
                             [汪 立珍]
1 はじめに
2 清朝時代における満洲族の政治・経済・社会の状況とアイデンティティ
3 中国の成立以降における満洲族の社会状況とアイデンティティ
4 おわりに——民族的アイデンティティの核となる満洲文学

第 IV 部 民族性と帰属性の諸相

第9章 デルス・ウザーラの言語に見るアイデンティティ   [津曲敏郎]

1 はじめに
2 デルスのアイデンティティ
3 デルスの言語
4 「デルス=ウデヘ」説
5 アルセーニエフの現地語理解
6 フィクションとしての『デルス・ウザーラ』
7 おわりに

第10章 サハ共和国北部における重層するアイデンティティとエスニシティ
                            [佐々木史郎]
1 はじめに
2 エヴェノ=ブィタンタイ民族地区の成立
3 エヴェノ=ブィタンタイ地区の経済状況
4 エヴェノ=ブィタンタイ地区における民族的状況
5 おわりに——民族の対立軸が見えない理由

第11章 モンゴルの文様から見える民族性——美意識の継続と変化
                           [阿拉坦宝力格]
1 はじめに
2 モンゴル文様の定義
3 文様から見た物の文化——博物館で見る文様と物の関係
4 文様から見たモンゴル人の美意識
5 おわりに

第12章 「考古学文化」とエスニシティ——極東ロシアにおける民族形成論再考                            [加藤博文]

1 はじめに
2 対象地域の特性
3 「文化」と「集団」をめぐる問題
4 極東ロシアにおける「考古学的文化」の展開
5 極東ロシア古代社会における「考古学文化」内部の多様性
6 エスニシティ論から見た「考古学文化」
7 おわりに:エスニシティ,過去から現在へ

終章 未来の民族性と帰属性                [煎本 孝]

1 新しい模範
2 北の民の民族性と帰属性
3 民族性と帰属性の未来

索 引


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