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沿岸域再生のために森と海をむすぶ川

森と海をむすぶ川 沿岸域再生のために

A5判 330ページ 並製
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-87698-575-3 C3045
奥付の初版発行年月:2012年06月 / 発売日:2012年06月中旬

内容紹介

森と海は,川をとおしてどのようにつながっているか。流域管理のあり方が沿岸域へ与える影響や,ダムをはじめとする大規模構造物のインパクトなど,具体例に基づいて紹介し,森里海の連環を意識しながら河川の上流域と下流域の関係を現在改善するための取り組みや、統合的管理のあり方を考えるための基礎的な知識を提供する.

著者プロフィール

向井 宏 (ムカイ ヒロシ)

[監修,はじめに,第1章2節,第5章,第6章,おわりに]
京都大学フィールド科学教育研究センター・特任教授,北海道大学名誉教授
専門は海洋生物生態学.日本および太平洋各地で,浅海のアマモ場などの群集生態を中心に研究を行い,ジュゴンの生態研究も続けている.2000年から陸上生態系と海洋生態系の相互作用の研究を進めてきた.
主な共著書に,『海洋ベントスの生態学』(共著,東海大学出版会,2003年),『サンゴ礁—生物の作った生物の楽園』(共著,平凡社,1995年),『森里海連環学—森から海までの統合的管理をめざして』(共著,京都大学学術出版会,2007年)など.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

口絵
巻頭言[柴田昌三]
まえがき[向井 宏]

第1章 自然河川流域と沿岸生態系—農業と沿岸—
1 天塩川—日本最北の大河流域—
(1) はじめに
(2) 天塩川流域の土地利用変化と栄養塩動態
(3) 溶存腐植物質の特性と流域内変化
(4) 下流感潮域におけるシジミを巡る物質動態
(5) おわりに
[柴田英昭,上田 宏,イレバ・ニーナ,長尾誠也,中村洋平,門谷 茂,柴沼成一郎]
2 別寒辺牛川における森と海の関わり
(1) 厚岸水系(別寒辺牛川・厚岸湖・厚岸湾)の概観
(2) 人間の利用とその影響
(3) 森と海の連環
(4) 海の利用と問題
(5) 水質改善の取り組み 農業における取り組みも
(6) 上流下流問題
(7) 砂防ダム問題
[向井 宏]
3 アムール川とオホーツク海・親潮
(1) 豊穣の海 オホーツク海
(2) オホーツク海が豊かな理由
(3) 鉄が豊かなオホーツク海・親潮
(4) 巨大魚附林としてのアムール川流域
(5) 劣化する巨大魚附林
(6) アムール川流域とオホーツク海・親潮の環境保全にむけて
[白岩孝行]

第2章 森林の管理と沿岸域管理—林業と沿岸—
1 仁淀川
(1) はじめに
(2) 仁淀川流域に設定された調査地
(3) 調査地および下流に至る地域における仁淀川の状況
(4) おわりに
[柴田昌三,長谷川尚史]
2 由良川
(1) 由良川の構造と大水害
(2) 由良川河口域の物理環境
(3) 由良川の流域利用と水質—遡及的アプローチ
(4) 河川有機物の起源—探検的アプローチ
(5) 森は海の恋人—川から流れ出す有機物は海の生物にどのように利用されているか
[上野正博,山下 洋]
3 琵琶湖集水域
(1) 琵琶湖
(2) 森林からの硝酸イオン(NO3−)の流出
(3) 渓流水質から見た森林生態系(土壌)における窒素と炭素の循環
(4) 野洲川の水質と土地利用・土地被覆の関係
(5) 琵琶湖に流入する炭素と窒素の量
(6) 琵琶湖の環境問題
(7) 流域管理への住民参加
[吉岡崇仁]
4 人工林化と河川水質
(1) 我が国における人工林の拡大
(2) 森林の伐採が渓流水質に及ぼす影響
(3) 渓流水質を規定する森林の成長
(4) 水質に配慮した森林施業
(5) 人工林化が渓流水の水質に及ぼす影響
(6) 渓流水質の指標としての人工林率
(7) これからの人工林化
[徳地直子,福島慶太郎]

第3章 沿岸管理の現実と理想—水産業と沿岸—
1 太田川—広島湾流域圏—
(1) 太田川の環境—現状と修復事業
(2) 広島湾の環境の現状と再生計画
(3) 江田島湾の環境再生
(4) 太田川—広島湾をトータル・システムとして捉える
[山本民次,山本裕規,浅岡 聡]
2 森里海連環学の原点
 —有明海特産稚魚の生態に学ぶ—
(1) はじめに
(2) 稚魚学の教え
(3) 有明海 この不思議の海の魅力と悲劇
(4) 特産種スズキの初期生活史
(5) 特産カイアシ類を育む高濁度水塊
(6) 有明海特産魚成立の不思議
(7) 豊穣の海の悲劇
(8) おわりに
[田中 克]

第4章 大型構造物による連環の分断と沿岸域
1 河川の公共事業と政策評価—豊川を事例に—
(1) はじめに
(2) 費用便益分析と公共事業・政策評価
(3) 環境の経済評価と市民参加
(4) おわりに—公共事業と環境・地域の調和
[佐藤真行]
2 古座川・七川ダム・串本湾から考える森川里海の連環
(1) はじめに
(2) 古座川の概要
(3) ダムの放水と河川および河口域環境との関係
(4) 海洋生物の時空間的変動と,河川の変動特にダムの放水との関係
(5) まとめ
[白山義久,深見裕伸,嶋永元裕]

第5章 環境保全のための流域管理と海洋保護区
1 流域管理の必要性
2 日本における土地利用の変遷
3 統合管理としての流域管理
4 流域ガバナンス
5 沿岸域管理と海洋保護区(Marine Protected Area)
6 国際的な動向
7 国内の動向
8 国内の「海洋保護区」とその現状
9 どのような保護区が必要か
10 おわりに
[向井 宏]

第6章 森・里・海の統合的な沿岸管理をめざして—討論—
1 流域・沿岸域管理とはなにか?
2 多様性のための流域・沿岸域管理
3 どのように管理するか?
4 森里海連環学の役割
5 人工林と天然林
6 上流と下流のコンフリクト
7 今,何が問題か?
8 管理の方法としての海洋保護区
9 森里海連環学における「里」の意味について
10 生命(いのち)の里
[白山義久,山下 洋,吉岡崇仁,柴田昌三,向井 宏,佐藤真行,中島 皇,久保田信,
山本民次,上野正博,徳地直子,田中 克]


用語解説
引用文献
おわりに[向井 宏]
索引


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