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シベリア 温暖化する極北の水環境と社会

環境人間学と地域
シベリア 温暖化する極北の水環境と社会

檜山 哲哉:編著, 藤原 潤子:編著
A5判 550ページ 上製
価格:7,150円 (消費税:650円)
ISBN978-4-87698-315-5 C3325
奥付の初版発行年月:2015年03月 / 発売日:2015年04月上旬

内容紹介

人が暮らす最も寒い地域,シベリア。水の凍結と融解が自然環境を支配し,特有の自然と文化を育んできたこの地は今,大きな変化に晒されている。温暖化による生態系と水環境の変化,社会変化がもたらす影響と,それに適応して生きる人々の姿を描く。

著者プロフィール

檜山 哲哉(ヒヤマ テツヤ)

名古屋大学地球水循環研究センター教授
名古屋大学大気水圏科学研究所助手、同・地球水循環研究センター助教授および准教授、総合地球環境学研究所准教授を経て、2014年4月から現職。
専門分野:水文学、気候・気象学、地球環境学
主な著作:『新しい地球学―太陽―地球―生命圏相互作用系の変動学』(共編著、名古屋大学出版会)、『水の環境学―人との関わりから考える』(共編著、名古屋大学出版会)

藤原 潤子(フジワラ ジュンコ)

日本学術振興会特別研究員
東北大学東北アジア研究センター機関研究員、総合地球環境学研究所上級研究員などを経て、2014年10月から現職。
専門分野:文化人類学、ロシア研究
主な著作:『呪われたナターシャ―現代ロシアにおける呪術の民族誌』(人文書院)、『水・雪・氷のフォークロア―北の人々の伝承世界』(共編著、勉誠出版)、『途絶する交通、孤立する地域』(共著、東北大学出版会)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

巻頭付録
 口絵
 地図1 ロシア広域
 地図2 シベリア行政区分
 地図3 サハ共和国(ヤクーチア)
 シベリアに関する略年表
 シベリア先住民族一覧
「環境人間学と地域」の刊行によせて
はじめに

第1部 シベリアの自然と水環境

第1章 気候・凍土と水環境  [檜山哲哉]
1―1 凍土と植生
(1)シベリアの凍土・植生と景観の成り立ち
(2)シベリアの現在の気候と水循環
1―2 シベリアの温暖化
(1)温暖化は起こっているのか
(2)水循環と水環境はどう変わっているか
(3)温暖化は水環境変化を通してシベリア地域社会に影響を及ぼす
(4)温暖化で「植生―凍土」共生系は崩壊するか
1―3 シベリア気候研究における長期的視点の重要性

第2章 シベリアの植生  [杉本敦子]
2―1 植生の地理的分布と特徴
2―2 気候変動と景観・植生の変遷
(1)タイガの景観
(2)森林ツンドラとツンドラ
2―3 永久凍土生態系
(1)永久凍土の水循環システム
(2)過去100年間の森林環境
(3)タイガ林の栄養塩循環
(4)人間活動の影響と森林火災
2―4 シベリアの植生の脆弱性と将来

第3章 シベリアの動物相と温暖化の影響  [立澤史郎・I.オクロプコフ]
3―1 シベリアの陸生脊椎動物相
(1)マンモス動物群
(2)現生哺乳類相の特徴と変化
(3)急速に変化する鳥類相と両生・爬虫類相
3―2 野生動物の土地利用と水系の変化
(1)ジャコウウシの季節移動と河川凍結時期の遅れ
(2)コハクチョウの渡りと肉食獣の北上
(3)外来種マスクラットとアラースの拡大
3―3 野生トナカイの生息地利用と温暖化
(1)トナカイの生息現状
(2)野生トナカイの季節移動とハビタット利用
(3)政策への応用と今後の課題
3―4 シベリア動物相の保全
◉コラム1 シベリアに関係する北極の気候  [大島和裕]
◉コラム2 フラックス観測―植生と大気の見えない「つながり」を測る  [小谷亜由美]
◉コラム3 2005年~2008年のヤクーツク地域の過湿イベント  [太田岳史]
◉コラム4 タイガの蒸発散はどのように表現できるか?  [山崎 剛]
◉コラム5 衛星データからみたシベリアの植生変化  [山口 靖・山本一清・陳 学泓]
◉コラム6 西シベリアにおけるメタン放出量の推定  [S. マクシュートフ・金 憲淑]

第2部 荒ぶる水―シベリアの洪水と社会

第4章 シベリアの河川流出  [八田茂実]
4―1 シベリアの河川流出の重要性
4―2 レナ川流域の概要
(1)流域と水文資料
(2)水文資料にみるいくつかの特徴
4―3 レナ川支流域の流況と長期的な流量変動
(1)レナ川支流域の流況
(2)レナ川流域の長期的な流量変動
4―4 レナ川流域の洪水流出特性
(1)水文モデルの概要
(2)洪水流出の特徴

第5章 氾濫原の農牧地利用と気候変動  [酒井 徹]
5―1 温暖化研究における衛星リモートセンシング利用の意義
5―2 レナ川流域の農牧地の利用
5―3 レナ川流域の気候変動:温暖化と湿潤化
5―4 レナ川流域の気象災害:春洪水と夏洪水
5―5 リモートセンシングによる監視

第6章 恵みの洪水が災いの水にかわるとき  [高倉浩樹]
6―1 レナ川の解氷洪水
6―2 中洲の生活
(1)生活空間としての中洲
(2)アイスジャム発生についての認識
6―3 災害としての洪水
(1)近年の変化
(2)2010年の解氷洪水災害
(3)洪水対策行政
6―4 地域住民の洪水認識と行動
(1)洪水による家畜災害と水の滞留
(2)洪水災害の記憶
(3)洪水への適応行動
6―5 洪水被害のない水害
(1)干し草不足
(2)中洲の分散利用
6―6 気候変動と社会変化が河川利用の文化生態に与える影響
6―7 文化生態と適応の限界
◉コラム7 気温データで予測するレナ川アイスジャム災害  [吉川泰弘]
◉コラム8 永久凍土は融けているのか? ―夏の河川流量から見た永久凍土動態  [檜山哲哉・W. ブルッツァート]

第3部 水をめぐる多様なまなざし ―北方諸民族の文化にみる水

第7章 北方諸民族のフォークロアにみる水観念  [山田仁史]
7―1 水をめぐる神話と観念
(1)恐ろしい水
(2)原初の水、終末の水
(3)魔物の住処としての水界
(4)生命の水
7―2 水の認知・認識・知識
(1)認知と認識
(2)民俗知識
(3)水界の「主」
(4)水の人格化
7―3 災害の描写とそれへの対応
7―4 水観念の共通点と相異点

第8章 チュクチ・カムチャツカ諸語のフォークロアにみる自然観  [永山ゆかり]
8―1 火の信仰
8―2 世界観の概要
(1)世界の構成
(2)主(ぬし)の概念
(3)海の主
(4)湖の主
(5)無生物の人格化
8―3 創世伝承と水
(1)世界の起源
(2)川や湖の起源
(3)雨の起源
8―4 川とフォークロア
8―5 人と自然
8―6 自然環境・生業と自然観

第9章 口琴ホムスを通じてみたサハの自然と人  [荏原小百合]
9―1 「国民楽器」ホムス
9―2 演奏の修得と自然に関する曲目
9―3 ホムスの製作と鍛冶師
9―4 ホムス演目の生成と自然
9―5 ホムスを通じてサハの大地が語る
9―6 ホムスと自然と人
◉コラム9 水・氷・洪水に関わるサハ語  [江畑冬生]
◉コラム10 トナカイ牧畜民の日常生活における水  [大石侑香]

第4部 気候変化への社会の適応

第10章 適応と脆弱性  [石井 敦]
10―1 「適応タブー」を超えて
10―2 適応・脆弱性とは何か
10―3 文理融合研究における「複合研究」
10―4 多様なアプローチ
(1)定性的研究
(2)定量的研究
(3)複合研究
10―5 適応政策に向けて

第11章 資源動物利用に関わる環境変動と住民の適応  [立澤史郎・吉田 睦・中田 篤・池田 透]
11―1 シベリアの狩猟
(1)狩猟の低迷化
(2)狩猟の社会経済
11―2 毛皮獣利用と環境変化
(1)シベリアにおける毛皮獣狩猟の変遷
(2)マイナーサブシステンスとしての狩猟
(3)生産重視から生態系管理へ―マスクラット問題と管理
(4)狩猟者及び地域住民における気候変動への認識
(5)毛皮獣利用の今後の課題
11―3 野生トナカイ利用と環境変化
(1)トナカイ猟
(2)野生トナカイの生態変化とその社会的影響
11―4 トナカイ牧畜と環境変化
(1)シベリアにおけるトナカイ牧畜
(2)トナカイ牧畜に対する地球温暖化の影響
(3)西シベリアの状況
(4)東シベリア(サハ共和国)の状況
(5)トナカイ牧畜のまとめ
11―5 北方少数民族の環境変化に対する認識と適応
(1)トナカイ牧夫会議での聞き取りから
(2)温暖化がトナカイ牧畜に及ぼす影響 ―インタビューから
(3)岐路に立つ遊動文化
(4)動き出す少数民族 ―2つのワークショップ
11―6 北方少数民族の社会適応の今後

第12章 洪水リスクへの適応―サハ共和国の移住政策   [藤原潤子]
12―1 川辺の村でのくらし
12―2 春の解氷のリスク化
12―3 移住までの道のり
(1)考察対象
(2)どのように移住するか?
(3)移住の最終決定者は誰か?
(4)村存亡の閾値はどこか?
(5)最終的にいかに移住を説得したか?
(6)長期に渡る移住プロセス
12―4 在来知を生かした適応

第13章 シベリアの水環境変動と社会適応 ―東日本大震災との対比からみたリスクへの対応  [奥村 誠]
13―1 水環境とその恩恵
(1)シベリアの水環境とその恩恵
(2)三陸地方の水環境とその恩恵
13―2 水環境変動がもたらす問題
(1)シベリアの気候変動に伴う水環境変動
(2)急激な水環境の変動としての津波
13―3 社会変動がもたらす問題
(1)ソビエト連邦崩壊に起因する社会変動
(2)三陸地方が直面する社会変動
13―4 リスクに対する適応と脆弱性の概念
(1)リスクマネジメントの脆弱性概念
(2)レジリエンスの三角形と減災
(3)シベリアと三陸地方におけるリスクと適応戦略
13―5 リスク対応策の特徴と限界
(1)脆弱性を低めるための防災対策の限界
(2)回復力を高めるための減災戦略の特徴と限界
(3)超過外力問題と巨大災害に関する理解
(4)避難行動の外部性と避難促進策の必要性
(5)危険な場所をぎりぎりまで利用することを防ぐ仕組み
13―6 経験が乏しいリスクへの対応力
◉コラム11 衛星データを使ったトナカイ放牧地の植生解析  [吉田 睦]
◉コラム12 シベリアのエネルギー資源と日ロ関係  [杉本 侃]
◉コラム13 システム・ダイナミックスでみるトナカイ牧民経済  [加賀爪優]

おわりに ―本書のまとめにかえて
あとがき
索引
執筆者紹介
巻末カラー図版


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