大学出版部協会

 

関西大学の多様な取り組みアカデミアが挑むSDGs

アカデミアが挑むSDGs 関西大学の多様な取り組み

A5判 282ページ 並製
価格:1,980円 (消費税:180円)
ISBN978-4-87354-748-0 C1000
奥付の初版発行年月:2022年03月 / 発売日:2022年03月下旬

内容紹介

 COVID-19が世界を席巻し、多くの犠牲者を出し続けており、一刻も早い、その終息が求められている。治療法やワクチンが急速に開発されたと同時に、私たちの社会は、このように脆いものであることを思い知らされた。中でも、先進国と開発途上国との間での状況の違いは深刻であろう。危機に対する社会の脆弱性は、世界社会の格差と結びついており、先進国にとっても、開発途上国にとっても、いかに重要であるかを物語っている。継続性のある、平和な世界社会を作ることは、つぎに来る危機への備えとして、これからの人類の存続にとって必要不可欠なことだ。
 一方、大学におけるSDGs の位置づけはどうであろう。若い世代の人たちが、いまの世界の現状とその課題を知り、自分たちの手でどのような社会を作っていくのかを考える場が大学でもある。その学びの過程でSDGs の意義と意味を考えながら、それぞれの専門の勉強を行う。関西大学はいままで、多くの地方自治体や企業との連携活動を推進してきた。
 本書はSDGs の課題解決に対する関西大学ならではの取り組みを紹介する。
SDGsのひとつひとつの目標達成が展開するにつれて、いまの世界社会のもうひとつの重要な課題が見えてくるように思う。それは、われわれ人類の精神の進化、進歩についての課題である。
 21世紀に入り、地球という有限の環境の中での人類の継続性、ここに暮らす、すべての生物の将来を考える必要があることにわれわれは気づいた。
 SDGsの17のゴールはそれを達成することもさることながら、そのような目標を設定することができた人類の精神性の進歩という意味での重要性を示し、これを越えることができるのかという問題を提起しているように思う。
 例えば、パンデミックの中で限られたワクチンで誰を救うのかという問題に直面したとき、政治や経済、文化、民族、宗教の壁を越えて、適切な配分を行うことができるのか。
科学技術に代表される物質的な意味でのDとともに、精神的な進歩、すべての人類が心穏やかに過ごせる、心の有り様を目指すDが求められているように思えてならない。
 VUCA( Volatility ・ Uncertainty ・ Complexity ・ Ambiguity、未来の予測が困難な状況の意)の時代に、これからの人生における2つのDが必要である。
 いま、ポストSDGsも視野に入れた、世界社会全体の持続的発展と、ひとりひとりの精神性の進化が問われている。
 本書がSDGs に対する読者の理解の一助になることを願う。

出版部から一言

さぁ、世界を変革しよう!
拡大する経済格差、消耗する社会資本、悪化する環境問題‥‥‥
課題が山積する我々の世界。もう少し住みやすく変えていきませんか。
その主役は皆さん。
キーワードは持続可能な開発。
                    法政大学デザイン工学部教授 川久保 俊
                                 (本書帯文)

前書きなど

 COVID-19が世界を席巻し、多くの犠牲者を出し続けている。つぎの犠牲者を出さないためにも、一刻も早い、その終息が求められている。治療法やワクチンが急速に開発されたと同時に、私たちの社会は、このように脆いものであることを思い知らされた。中でも、先進国と開発途上国との間での状況の違いは深刻であろう。治療薬やワクチンが届いているのかという問題以前に、医療施設などのインフラ面での整備など、生活基盤が十分でない地域があることも事実である。
 パンデミックに代表される、危機に対する社会の脆弱性は、先に述べた世界社会の格差と深く結びついており、まさに、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が、先進国にとっても、開発途上国にとっても、いかに重要であるかを物語っている。多くの格差を縮め、継続性のある、平和な世界社会を作ることは、つぎに来る危機への備えとして、これからの人類の存続にとって必要不可欠なことだ。
 一方、大学におけるSDGsの位置づけはどうであろう。大学は研究機関であり、教育機関でもある。若い世代の人たちが、いまの世界の現状とその課題を知り、自分たちの手でどのような社会を作っていくのかを考える場が大学でもある。そのとき、SDGsは大切な指標になる。つぎの社会の担い手である若い世代が、その学びの過程でSDGsの意義と意味を考えながら、それぞれの専門の勉強を行う。若い世代にとって、自分たちのいまの学びが社会とどのようにつながっているのかを考えるよい機会でもあり、なぜ学習するのかを考える上でもよい目標となる。
 同時に、研究機関としての大学、総合大学としての関西大学は、分野の垣根を越えてSDGsに対する提案をすることができる存在でもある。関西大学はいままで、多くの地方自治体や企業との連携活動を推進してきた。これらの連携に基づいた、SDGsの課題解決は関西大学ならではの取り組みである。いままで、関西大学SDGsパートナー制度として、31の団体に、それぞれのテーマに関してパートナーとして参画していただいた。これからの連携を踏まえてユニークな活動がはじまり、成果の上がることが期待される。
 さらに、各課題解決に向けた、分野の枠を越えた提案や技術開発は、総合大学としての関西大学がSDGsに対して貢献できることのひとつである。そして、そのような研究開発、社会連携の過程を学生は間近に見て、参加することができる。これも、彼らにとっても貴重な体験である。
 加えて、1つの組織として、カーボンニュートラルをはじめ、その活動の中でSDGsに協力できることがある。関西大学にしかできない知恵を出して、進めていきたいと思う。
 物質的な意味でのSDGsのひとつひとつの目標達成が進展するにつれて、いまの世界社会のもうひとつの重要な課題が見えてくるように思う。それは、われわれ人類の精神の進化、進歩についての課題である。われわれ人類は21世紀に入り、地球という有限の環境の中での人類の継続性、ここに暮らす、すべての生物の将来を考える必要があることに深刻に気づいた。「環境への負荷と経済開発のバランス」から「かけがえのない地球」、「持続可能な開発」への変化は、人類の科学技術の進歩によるものだけではなく、人類の精神性の変化を端的に表しているように思える。
 その意味では、SDGsの17のゴールは、それを達成することもさることながら、そのような目標を設定することができたわれわれ人類の精神性の進歩という意味での重要性を示し、つぎの時代では、これを越えることができるのかという問題を提起しているように思う。例えば、パンデミックの中で限られたワクチンで誰を救うのかという問題に直面したとき、政治や経済、文化、民族、宗教の壁を越えて、適切な配分を行うことができるのか。現代の人類の精神性がまさに問われている。
 このように、人類の精神の進化の中で、SDGsのDevelopmentの意味を強調する必要があるように思う。科学技術に代表される物質的な意味でのDとともに、精神的な進歩、すべての人類が心穏やかに過ごせる、心の有り様を目指すDが求められているように思えてならない。特に、若い世代にとって、VUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、未来の予測が困難な状況を意味する)の時代に、これからの人生における2つのDが必要である。
 いま、ポストSDGsも視野に入れた、世界社会全体の持続的発展と、われわれひとりひとりの精神性の進化が問われている。本書が、SDGsに対する読者のみなさまの理解の一助になることを願って、まえがきとさせていただく。
                                  前田 裕

著者プロフィール

KANDAI for SDGs推進プロジェクト(カンダイフォアエスディージーズスイシンプロジェクト)

まえがき 前田裕
序章 SDGsと私たち関西大学 芝井敬司
第1部 関西大学とSDGs
まえがき 前田 裕
序 章 SDGsと私たち関西大学 芝井敬司
第1章 キャンパスライフのSDGs大津留(北川)智恵子
第2章 SDGsと日本のフードシステム 良永康平
第3章 ジェンダーから考えるSDGs 西山真司
第4章 SDGsと国際ボランティア 吉田信介 
第5章 SDGsとファッション 桑名謹三
第6章 SDGsの視点からの介護・福祉機器用具用金属材料 池田勝彦
第2部 関西大学が取り組んでいるSDGsの事例
第7章 シングルナノサイズ金属微粒子を用いた触媒変換プロセスにおけるレアメタルリソースイノベーション 大洞康嗣
第8章 かかわりEye 幸せを分かち合うコミュニケーションテクノロジー 瀬島吉裕
第9章 光エネルギーを化学エネルギーに変換するための人工光合成(光触媒)技術 福康二郎
第10章 SDGsの実装化と地域経済の活性化 SKIMA プロジェクトの挑戦 後藤健太
第11章 学生主体の地域連携活動を通したSDGs教育 熊野本宮町と浅香山地区での事例から 村川治彦・安田忠典
第12章 学生が主導するSDGs 産学連携および高大連携を通じて 小井川広志
あとがき 高橋智幸

前田 裕(マエダ ユタカ)

関西大学長。工学博士。
専門は同時摂動最適化手法を中心とした、ニューラルネットワークの学習・ハードウェア化とその応用、ロボット制御に関する研究。

芝井 敬司(シバイ ケイジ)

学校法人関西大学理事長。博士(文学)。
専門は西洋近現代の史学史で、18世紀のモンテスキューやギボンに関する研究を行う。

大津留 (北川) 智恵子(オオツル キタガワ チエコ)

関西大学法学部教授。国際学修士/MA。
専門は西洋近現代の史学史で、18世紀のモンテスキューやギボンに関する研究を行う。

良永 康平(ヨシナガ コウヘイ)

関西大学経済学部教授。博士(経済学)。
専門は経済統計学(国民経済計算論、産業連関論)。

西山 真司(ニシヤマ シンジ)

関西大学政策創造学部准教授。博士(法学)。
専門は政治学、政治理論、ジェンダー論。

吉田 信介(ヨシダ シンスケ)

関西大学外国語学部教授。
専門はSDGs国際教育活動に必要なキー・コンピテンシーの研究、ICT国際学生交流プロジェクトにおける英語交渉力、多文化共生力、対話力、人間力についての実証研究。

桑名 謹三(クワナ キンゾウ)

関西大学社会安全学部准教授、博士(環境学)。
専門は基金、保証証券、目的税などを含む広義の保険を用いた環境政策・公共政策の可能性の分析・評価とそれらを用いた政策の提言。

池田 勝彦(イケダ マサヒコ)

関西大学化学生命工学部教授。博士(工学)。
専門は環境材料学(金属材料)、チタン(Ti)材料を安価に製造するための合金設計を行い、福祉用具への利用を目指している。

大洞 康嗣(オオボラ ヤスシ)

関西大学化学生命工学部教授。博士(工学)。
専門は有機金属化学、触媒化学で、有機金属化合物の特性を活かした環境調和型フィードストックの触媒変換反応開発ならびにナノ制御空間を有する触媒種開発。

瀬島 吉裕(セジマ ヨシヒロ)

関西大学総合情報学部准教授。博士(工学)。
専門はヒューマンインタフェースによる人を惹き込むコミュニケーション技術の研究開発。

福 康二郎(フク コウジロウ)

関西大学環境都市工学部准教授授。博士(工学)。
専門は(光)触媒・電気化学。

後藤 健太(ゴトウ ケンタ)

関西大学経済学部教授。修士(公共政策・国際開発)、博士(地域研究)。
専門は経済発展論、グローバル・バリューチェーン、インフォーマル経済、持続可能な開発目標(SDGs)。

村川 治彦(ムラカワ ハルヒコ)

関西大学人間健康学部教授。Ph.D.(Integral Studies)。
専門は身体教育学、死生観の教育、身体技法。

安田 忠典(ヤスダ タダノリ)

関西大学人間健康学部教授。体育学修士、文学修士。
専門は体育学、思想史。南方熊楠研究をライフワークとする一方で、体験学習法を用いて堺市や和歌山県田辺市をフィールドに学生たちと様々な連携活動を開発する。

小井川 広志(オイカワ ヒロシ)

関西大学商学部教授。博士(経済学)、D.Phil(Development Studies)。
専門分野は経済発展論、アジア経済論、東南アジア地域研究など。

高橋 智幸(タカハシ トモユキ)

関西大学副学長・社会安全学部教授。博士(工学)。
専門は津波や洪水などの水災害、再生可能エネルギーやサンゴ礁再生などの水に関連した環境問題。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき 前田 裕
序 章 SDGsと私たち関西大学 芝井敬司
◆第1部 関西大学とSDGs
第1章 キャンパスライフのSDGs大津留(北川)智恵子
第2章 SDGsと日本のフードシステム 良永康平
第3章 ジェンダーから考えるSDGs 西山真司
第4章 SDGsと国際ボランティア 吉田信介 
第5章 SDGsとファッション 桑名謹三
第6章 SDGsの視点からの介護・福祉機器用具用金属材料 池田勝彦
◆第2部 関西大学が取り組んでいるSDGsの事例
第7章 シングルナノサイズ金属微粒子を用いた触媒変換プロセスにおけるレアメタルリソースイノベーション 大洞康嗣
第8章 かかわりEye 幸せを分かち合うコミュニケーションテクノロジー 瀬島吉裕
第9章 光エネルギーを化学エネルギーに変換するための人工光合成(光触媒)技術 福康二郎
第10章 SDGsの実装化と地域経済の活性化 SKIMA プロジェクトの挑戦 後藤健太
第11章 学生主体の地域連携活動を通したSDGs教育 熊野本宮町と浅香山地区での事例から 村川治彦・安田忠典
第12章 学生が主導するSDGs 産学連携および高大連携を通じて 小井川広志
あとがき 高橋智幸
研究・地域連携事例
索引


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