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研究の歩みを回顧して笑いを学問する

笑いを学問する 研究の歩みを回顧して

A5判 288ページ 並製
価格:1,540円 (消費税:140円)
ISBN978-4-87354-744-2 C0036
奥付の初版発行年月:2021年12月 / 発売日:2021年12月中旬

内容紹介

著者自身の85歳の人生を振り返りながら、手掛けた研究と事業を回顧する。著者の研究キーワードは、「メディア」「おおさか」「笑い」と言える。大阪の商家に育った著者は、「やってみるか!」の精神に動かされて、新しい試みにチャレンジする。本書は、まず「大阪で生まれて育った」少年時代からはじまり、京都大学で社会学を専攻し、大阪のテレビ局に就職。テレビマンとして13年間を過ごした後、関西大学に専任講師として転職するに至った経緯を記す。大学では、「メディア研究」を主専攻とし、コミュニケーション論に関心を持ち、「大阪論」や「笑いとユーモア」の研究にも興味を持つ。「笑い学研究」の必要性を思い、「日本笑い学会」を立ち上げて初代会長に就任。人間は、もとから「笑う存在」で、「人間が笑う」ことの意味を追求して、「笑う行為」を正当に評価しなければならないと考える。著者の「テレビ研究」は、「おおさか」への関心と同時に「番組研究」とも重なり、「笑いの芸能論」へと発展する。「上方お笑い大賞」の審査委員を努め、大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)の設立に関与し、二代目館長に就任。テレビ研究は、「ニューメディア研究」へと発展し、著者は「在外研究員」としてアメリカの大学に学ぶ機会を得、その機縁で米国フルブライト委員会からの招聘を受け、客員教授として二度目の渡米を果たす。二度に渡るアメリカでの生活は、国際交流の中で「笑い」を考えるチャンスとなる。「笑いとユーモア」の研究は、国際的な課題で、「国際ユーモア学会」(International Society for Humor Studies)が組織されていて、そのアジアでの初めての開催を関西大学で開催し、著者が実行委員長を務める。大学を定年退職して、70歳で心臓のバイパス手術を受け、一ヶ月の入院を余儀なくされ、大きな転機を迎える。その後元気を回復して、一層「笑い学研究」に傾斜していく。非常勤講師として、関西大学、追手門学院大学、放送大学などで「笑いとユーモア」についての講義、知恩院の「おてつぎ文化講座」や円覚寺の「夏期講座」の講演などを担当し、「笑いとユーモア」に関する講演依頼があれば引き受ける。その他に、大阪府立上方演芸資料館の「運営懇話会」の会長を努めながら、現在の資料館が貸しビルのワンフロアー使用なので、独立館として将来自立できる日の夢を見て、演芸資料館への期待を語る。定年後に書き綴ったエッセーを『笑いのユーモアのこころ』というエッセー集にまとめることで、著者の「笑いを学問する」は一層深まる。個人にあっても世界においても「矛盾」が同時的に存在し、この「矛盾のバランス」(均衡・平衡・折り合い)に「笑いとユーモア」が欠かせない。

著者プロフィール

井上 宏(イノウエ ヒロシ)

井上 宏(いのうえ ひろし)
1936年 大阪市に生まれる
1960年 京都大学文学部哲学科社会学専攻を卒業、読売テレビ放送に入社
1973年 関西大学社会学部に転職。専任講師、助教授を経て1981年に教授
1994年4月 新設の関西大学総合情報学部に移籍
2003年4月 関西大学名誉教授 専門は情報メディア論、コミュニケーション論、笑い学研究

1975~2009年 大阪市社会教育委員
1994年 「日本笑い学会」設立、以後2010年7月まで会長、10月より顧問
1999~2002年 大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)館長

1995年 大阪府知事表彰
1996年 全国社会教育委員連合表彰
1997年 大阪市民表彰
1999年 文部大臣表彰
2015年 瑞寶小綬章

主な著書として、『情報メディアと現代社会』『大阪の笑い』『大阪の文化と笑い』『笑いの力』(いずれも関西大学出版部)、『笑い学のすすめ』(世界思想社)、編著に『上方文化を探索する』(関西大学出版部)など

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき
第一章 大阪で生まれて育って
1 学校嫌いの幼少年時代
2 疎開先での田舎暮らし
3 兎を連れて大阪に戻る
4 中学校でバスケット部の選手に
5 大阪ミナミの空気を吸って
6 父親の個人商店の浮き沈み
7 高校生時代の甘い夢
8 時計台が見える下宿生活
9 哲学科社会学専攻で学ぶ
10 大阪のテレビ局に就職

第二章 テレビ局で働く
1 テレビ局の「モニター」という仕事
2 労働組合の結成で初代書記長に
3 無期限ストライキに突入
4 「営業」から「番組企画」へ
5 番組企画で大阪の歴史と芸能史を学ぶ
6 「考査」担当でテレビとは何かを考える
7 大学のスタッフとの番組研究
8 大阪万博と漫才ブーム
9 大学の非常勤講師を務める
10 現代社会の「広場」としてのテレビ
11 テレビの「全裸表現」はどこまで可能か
12 深夜帯を開発した「11PM」
13 テレビ局を辞めるとき

第三章 大学の教員になって
1 関西大学の専任講師に就任して
2 「上方お笑い大賞」のスタッフとして
3 漫才作家「秋田實」のこと
4 史上初の「漫才ティーチイン」
5 「笑学の会」の発足と中田ダイマル・ラケット「爆笑三夜」の開催
6 初めての「放送演芸史」の刊行
7 大学の「大阪論」で「大阪の大衆芸能」を講義
8 「漫才の笑い」の類型化

第四章 アメリカでの研究生活
1 ニューメディア時代を迎えて「関西ニューメディア研究会」発足
2 アメリカ留学に備えて
3 インディアナ大学に到着
4 アメリカで英会話教室に通う
5 日本とアメリカの大学の違いを学ぶ
6 家族で初めてのアメリカ大旅行
7 「テレコム」先進国のアメリカ
8 『テレコム社会』の出版
9 フルブライト委員会からの招聘
10 アメリカでの英語講義「日本の社会と文化」
11 「日本の現代文化」の国際シンポジウムに参加
12 パーティ出席は夫婦同伴で

第五章 「笑い学研究」と「メディア研究」を生かして
1 大阪府立上方演芸資料館(ワッハ上方)の設立
2 大阪府立上方演芸資料館館長に就任
3 関西大学で「国際ユーモア学会」を開催
4 大阪府立高校に「芸能文化科」が誕生
5 「日本笑い学会」の設立
6 関西大学「総合情報学部」の設立に参加して
7 ゼミ生と「井上サロン」
8 最終講義の「現代コミュニケーション・ライフ考」
9 研究サロンに参加して
10 社会教育委員を引き受けて

第六章 大学を定年退職してから
1 退職直後の忙しさ
2 心臓手術で一カ月の入院
3 検査入院中に書いた原稿「笑いと心のゆとり」
4 円覚寺「大方丈」での講演
5 放送大学で「大阪の文化と笑い」の「集中講義」
6 「島之内寄席」から「天満天神繁昌亭」
7 学会十五周年記念『笑いの世紀』を出版
8 「笑い学研究所」の夢を見て
9 『笑いとユーモア』のエッセー集を出版
10 大阪府立上方演芸資料館への期待
11 「笑い」の「最中」について
12 「ユーモアのこころ」について考える

あとがき
井上宏の著書・編集一覧


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