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北のウェットランド大全湿地の科学と暮らし

湿地の科学と暮らし 北のウェットランド大全

A5判 並製
価格:3,740円 (消費税:340円)
ISBN978-4-8329-8228-4 C3045
奥付の初版発行年月:2017年04月

内容紹介

いま注目を集める「湿地」知るための入門書。

湿地の島、北海道。
アイヌは湿地の恵みを受け、固有の思想をもとに湿地を利用していた。その後、開発の対象となり多くは姿を消した……。しかし依然として湿地の宝庫である。
本書では過去から現在にわたる湿地の変遷を解説し、湿地との関わり方について未来に向けた提言を行う。

著者プロフィール

矢部 和夫(ヤベ カズオ)

1988年 北海道大学大学院環境科学研究科博士課程修了
現 在:札幌市立大学デザイン学部教授 学術博士(北海道大学)
専 門:植物生態学,湿原再生,ビオトープ管理

山田 浩之(ヤマダ ヒロユキ)

2002年 北海道大学大学院農学研究科博士課程修了
現 在:北海道大学大学院農学研究院講師 博士(農学)(北海道大学)
専 門:生態水文学,泥炭地水文学,生態系モニタリング,湿地再生

牛山 克巳(ウシヤ マカツミ)

2003年 東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了
現 在:宮島沼水鳥・湿地センター専門員  博士(農学)(東京大学)
専 門:生態学,鳥類(特に水鳥),湿地CEPA

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序文(高橋英紀)


  第Ⅰ部 湿地の生態

1章 泥炭形成と植物(矢部和夫)
    湿地と湿原/泥炭地と非泥炭地/フェンとボッグ/北欧のリッチフ
    ェンとプアフェン/日本のフェンとボッグ/高層湿原,低層湿原と
    中間湿原/泥炭地湿原群落の地理的変異/日本のリッチフェンとプ
    アフェン
コラム① 実は近くにいるエゾホトケドジョウ(Lefua nikkonis)
                          (桑原禎知)

2章 泥炭地の物質循環(原口 昭)
    泥炭地の植生と物質循環/海洋性泥炭地の物質環境

3章 湿地の炭素固定機能(平野高司)
    泥炭地の炭素蓄積/泥炭地の炭素収支/炭素収支の測定/炭素収支
    の変化

4章 北方と熱帯の泥炭(島田沢彦)
    熱帯泥炭地の形成/熱帯泥炭地の炭素蓄積速度

5章 湿原植物の窒素利用(中村隆俊)
    フェンとボッグの環境/湿原植物の窒素利用戦略/窒素の吸収と同
    化のメカニズム/湿原植物の窒素同化酵素活性と有機体窒素の利
    用

6章 火山活動と湿地(ホーテス シュテファン・釜野靖子)
    火山活動と生態系の動態/地理学的・古生態学的研究/テフラ降下
    が湿原植生に及ぼす影響に関する実験/実験的撹乱に対する応答
コラム② 美々川におけるクサヨシの異常繁茂(片桐浩司)


  第Ⅱ部 湿地の生物

7章 湿地のハンノキ林(藤村善安)
    ハンノキの一年/ハンノキの一生/林相の異なるハンノキ林―異な
    る立地環境への適応結果としての形態の多様性/林相の異なるハ
    ンノキ林―成長更新段階の相違による形態の多様性/ハンノキ林
    の更新メカニズム解明が難しい理由/ハンノキ林の拡大とその要
    因/ハンノキ林への遷移とハンノキ林拡大の問題

8章 類似品にご注意ください―水生植物とは?(山崎真実)
    雨竜沼湿原のコウホネ属―ウリュウコウホネの正体/水生植物の
    「たくましさ」/人知れず消える水生植物/まだまだ水生植物未開
    の地,北海道

9章 マリモ,藻類に着目して(若菜 勇・中山恵介)
    マリモは湿地の生物/阿寒湖における形態と生態の多様性/マリモ
    はなぜ丸くなるのか―マリモの育成・回転装置としての阿寒湖

10章 底生動物と湿地環境(根岸淳二郎・三浦一輝)
    イシガイ目二枚貝/水生昆虫/底生動物による陸域とのつながり/
    湿地底生動物相を特徴づける環境要因/生息環境に迫る危機

11章 魚類・両生類・爬虫類(桑原禎知)
    北海道における地理と自然分布/湿地内の生息地の特徴と水域間
    のつながりの重要性

12章 鳥類(玉田克巳)
    鳥類の生息地としての湿地/シマアオジの生息地としての湿原/湖
    沼と田んぼという湿地を巧みに使い分ける石狩地方のアオサギ
コラム③ 湿地と外来種(桑原禎知)

13章 外来生物問題―湿地の新しい住人と人間の付き合い方を考える
                          (大澤剛士)
    外来生物とは/何が問題なのか/行われている対策/利益と被害の
    バランス/今後の展望
コラム④ 石狩平野で起こったトノサマガエルの反乱(高井孝太郎)
コラム⑤ ハスカップ―湿原の利用の一例として(小玉愛子)


  第Ⅲ部 湿地の環境

14章 泥炭地の水文と形成プロセス(山田浩之)
    地球スケールの水の流れと泥炭地/流域スケールの水の流れと泥
    炭地/地域スケールの水の動きと泥炭地/泥炭地表面の微小な動き
    とミクロスケールの水の流れ/これからの泥炭地の水文学

15章 大気・湿原生態系間の水とエネルギー(高木健太郎)
    湿原になる条件/湿原と大気との間の水とエネルギーのやりとり/
    湿原のもつ環境緩和機能/植物の活動が環境に与える影響

16章 ミズゴケハンモックの形成と維持のプロセス(矢崎友嗣)
    湿原の微地形/ハンモックの形態/ミズゴケ類が形成する水環境/
    気候とハンモック形状との関係

17章 湿原の霜害(山田雅仁)
    サロベツ湿原での気象・水文観測/ゼンテイカの霜害/泥炭の熱的
    性質/数値モデル実験による気温低下要因の検討

18章 泥炭地湖沼の役割(木塚俊和)
    湿原にできた大小の池沼―泥炭地湖沼/泥炭地湖沼に棲む生物と
    その特殊な環境/泥炭地湖沼と人々とのかかわり

19章 湿地としての田んぼの機能(吉田 磨)
    湿地と田んぼ/田んぼによる地球温暖化/ふゆみずたんぼ/フィー
    ルド観測/観測結果の一例/持続可能な環境を目指して
コラム⑥ カナダのウェットランド―地球温暖化で変わっていく亜寒帯の
     湿地(林 正貴)


  第Ⅳ部 湿地の人と歴史

20章 石狩平野の海牛類化石と湿原(古沢 仁)
    北海道の地史からみた湿原/石狩平野の海牛化石とその進化/北海
    道における海牛化石分布の時代変遷と湿原の形成

21章 北海道島の文化変遷と湿地の科学―アイヌ文化史の視点から
                           (吉原秀喜)
    和人は舟を食う?―チプ(舟)とチェプ(魚)/チプ(舟)にか
    かわる文化の系譜をたどる/チェプ(サケ)にかかわる文化の系
    譜をたどる/文化変容の様相と担い手をさぐる/ワイズユースの集
    積としての伝統文化

22章 泥炭地の分布の変遷(高田雅之)
    泥炭地の変貌/泥炭地が変化した原因/泥炭地と人とのかかわり/
    泥炭の採掘

23章 泥炭地と河川の治水(鈴木英一)
    石狩川流域への入植と湿地/治水と湿地の農地化/近年の治水と湿
    地の再生
コラム⑦ ラムサール条約釧路会議を振り返って未来へ(小林聡史)
コラム⑧ 人にも生物にも良い「食」を目指す,びっくりドンキーのお米
     の取り組み(橋部佳紀)


  第Ⅴ部 湿地の保全

24章 生態系サービスと自然再生(中村太士)
    湿地の生態系サービス/氾濫原の自然再生/おわりに

25章 湿地保全の社会システム(牛山克巳)
    湿地と人・社会/湿地のワイズユース/湿地の文化/今後の課題と
    方向性

26章 湿地景観の重要性(松島 肇)
    景観とは/湿地の現状と景観/湿地景観の印象評価について/湿地
    景観の保全に向けて

27章 海洋基礎生産にとっての湿地―アムール川と親潮・オホーツク海
    の事例(白岩孝行)
    海洋生態系に与える陸域の影響/「巨大」魚附林としてのアムー
    ル川流域/鉄を生み出すアムール川流域の湿地/顕在化する人為的
    影響

28章 釧路湿原の土砂堆積と流域の変化(水垣 滋)
    釧路湿原の変化/堆積履歴を調べる/久著呂川の湿原流入部での堆
    積履歴/流域の土砂堆積履歴

29章 流域環境モデルを用いた流域の河川水温推定と気候変動による影
    響評価(亀山 哲)
    流域生態系に与える河川水温の影響/地球温暖化と釧路川流域の
    水温変化/流域環境モデルの概要/使用データと気候変動シナリオ
    /釧路川水温の時空間変動/釧路湿原の保全と河川水温モニタリン
    グの重要性

30章 「持続可能な発展のための教育」と保全活動(鈴木敏正)
    「持続可能な発展のための教育(ESD)」とは?/ESDと湿地保
    全・湿地学習/湿地のある地域づくりへ
コラム⑨ ウェットランドにおける環境学習(鈴木 玲)
コラム⑩ 酪農からの副産物を考える―「厩肥?」「ふん尿?」それとも
「エネルギー?」(亀山 哲)

私とウェットランドセミナー―20年のセミナーの変容(矢部和夫)

用語解説


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