大学出版部協会

 

万葉集羈旅歌論

楡文叢書3
万葉集羈旅歌論

A5判 334ページ 上製
価格:7,700円 (消費税:700円)
ISBN978-4-8329-6872-1 C3095
奥付の初版発行年月:2021年03月 / 発売日:2021年05月下旬

著者プロフィール

関谷 由一(セキヤ ユイチ)

1984年東京都生まれ。1993年より北海道在住。
2016年北海道大学大学院博士後期課程修了。博士(文学)。
2021年3月現在、旭川工業高等専門学校非常勤講師。

■論文(本書収載のもの以外)
「道ゆきふりにことやつてまし──躬恒歌における擬人法と「複数の主題」をめぐって──」(『古代中世国文学』25、2010年5月)
「駆落ちできない男──想像力を育む教材としての『伊勢物語』第六段「芥川」の取り扱い──」(『国語論集』17、2020年3月)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡 例

はじめに──旅の歌の形成過程とその結果を考える
 1 本書を読む前に──万葉集について
 2 本書の意図

序 章 研究史をたどって──旅の歌の誕生と発想様式
 1-1 旅の歌の類型をめぐる先行論(1)──大濱論
 1―2 旅の歌の類型をめぐる先行論(2)──伊藤論
 1-3 旅の歌の類型をめぐる先行論(3)──神野志論
 2 近年の論──羈旅信仰論への疑問
 3 残された課題──万葉における「家」や「旅」をどう理解するか
 4 万葉人にとっての大和・都を〈故郷〉とみなすことの問題
 5 日本の古代和歌における〈公〉と〈私〉
 6 本書の構成と問題意識


 第一部 旅の歌における「家」と「妹」

第一章 旅の歌における共感関係の淵源──〈留守歌〉考
 1 なぜ〈留守歌〉か
 2 旅の安全を祈るために詠まれたのか
 3 留まる者が「らむ」と思い遣る意味
 4 〈留守歌〉における同行希望と羨望の要素
 5 〈留守歌〉における讃美的要素
 6 おわりに──旅の歌における〈共感関係〉の淵源と展開

第二章 「家」の表現性の再検討──「家もあらなくに」と遍在する「家」
 1 「家」=〈家郷〉という把握の問題と、奥麻呂の歌
 2 「家もあらなくに」の問題点
 3 「家」の表現性の基盤──一定期間住む居宅としての本質とその遍在性
 4 「家もあらなくに」は「自分の住む家を離れていること」か
 5 おわりに──共有された仮構としての〈家の妹〉

第三章 山上憶良「日本挽歌」の「家」「国内」について
 1 当該歌の解釈をめぐる問題
 2 長歌と反歌Ⅰの「家」
 3 長歌「大君の遠の朝廷としらぬひ筑紫の国に泣く子なす慕ひ来まして」
 4 反歌Ⅲ「あをによし 国内ことごと 見せましものを」
 5 おわりに

第四章 相聞から望郷へ──巻四・509・510番歌考
 1 はじめに
 2 当該歌の和歌史的意義と表現の特徴
 3 当該長反歌の「妹」は自宅で待つ妻か
 4 長歌の表現の問題
 5 反歌の理解
 6 当該歌における「妹」との別離の意味
 7 おわりに


 第二部 羈旅歌論

第五章 羈旅歌とは何か──大伴卿傔従等の「悲傷羈旅」歌考
 1 はじめに──羈旅歌をどう論じるか
 2 大伴卿傔従等の「悲傷羈旅」歌の問題点
 3 「悲傷羈旅」歌の解釈
 4 〈移動〉の主題化と漢語「羈旅」
 5 おわりに──「羈旅」の思いとは如何なるものか

第六章 〈羈旅〉主題化の始発──柿本人麻呂「羈旅歌八首」考
 1 はじめに──〈羈旅〉をうたうということ
 2 移動表現と「大和島」の表象──Ⅶ歌の解釈
 3 〈羈旅〉の多様な局面をうたう──Ⅰ~Ⅴ歌の解釈
 4 「家のあたり見ず」とうたうことの意味──Ⅵ、Ⅷ歌の解釈
 5 おわりに──人麻呂「羈旅歌八首」の表現史的位置

第七章 高市黒人歌の方法(1)──「棚無小舟」の象徴性
 1 黒人歌の「寂寥」をめぐって
 2 黒人歌の同時代性──文武朝行幸従駕歌における美景意識との関わり
 3 「棚無小舟」の象徴性の検証
 4 去り行くものをうたう──送り出す者の視点を借りること

第八章 高市黒人歌の方法(2)──黒人「羈旅歌八首」の同時代性と独自性
 1 黒人評の相対化のために
 2 八首の描く〈羈旅〉の枠組みとⅦ歌──旅と〈移動〉の焦点化
 3 黒人歌の同時代性──黒人歌は〈憂愁〉を主題とするか
 4 黒人歌における独自性の片鱗──今・ここを超えて想像を及ぼす
 5 おわりに

第九章 部類歌巻における〈羈旅〉像──巻七「羈旅作」考
 1 巻七・羈旅作の問題
 2 巻七雑歌部における羈旅作の位置──畿外にあること、海との関わり
 3 羈旅作全体をどのように見るべきか
 4 描かれる〈羈旅〉像──畿外諸国を移動することとその感慨
 5 おわりに──巻七・羈旅作の描き出すものとその表現史的位置

終 章 旅の歌における「家の妹」と羈旅歌の意義
 1 旅の歌と土着の抒情
 2 旅の歌における「家」と「妹」の意義
 3 羈旅歌の意義
 4 その後の羈旅歌
 5 本書のおわりに


初出一覧
あとがき
万葉和歌索引
書名索引
人名索引


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。