北大文学研究院ライブラリ17
かなしむ人間 人文学で問う生き方
価格:2,860円 (消費税:260円)
ISBN978-4-8329-3404-7 C1095
奥付の初版発行年月:2019年08月 / 発売日:2019年07月下旬
「かなしみ」(悲、哀、愛、愁、歎、そして涙)は、古今東西、人間と社会に否応なく是非なく存在してきました。だからこそ、かなしみと共にあることが、じつは人間の根源なのかもしれない…。人文学の視点と方法論によって、かなしみの諸相を問い、探ります。
■シリーズ名変更のおしらせ
北大文学研究院ライブラリは当初、北大文学研究科ライブラリとして刊行されていましたが、2019年4月より北海道大学大学院文学研究科が北海道大学大学院文学研究院に改組されたため、本シリーズも「北大文学研究院ライブラリ」と改称して刊行を続けることになりました。
目次
はしがき
第一章 仏教における「悲」
──凡夫の「悲(かなしみ)」とブッダの「悲(あわれみ)」………林寺正俊
はじめに
一 愛別離苦の悲しみ
二 わが子を亡くしたキサー・ゴータミーの悲しみ
三 釈尊入滅時の人々の悲しみ
四 悲しみを経験しない聖者の理想
五 人々に対する釈尊の「悲(あわれみ)」
六 仏教における「悲」とその実践
七 「悲」と「大悲」
おわりに
第二章 母と子の悲しみ
──聖母マリアとイエス・キリストの図像学………谷古宇 尚
一 神の母マリアと人の子イエス
二 「聖母子像」の起源
三 イコン(聖像画)の表情
四 聖母の悲しみ
おわりに──母マリアの喜び
第三章 かなしむ身体
──ジャン=リュック・ゴダール『女と男のいる舗道』………阿部嘉昭
一 ゴダールが成し遂げたもの
二 顔が見えないということ
三 売春婦は都市を迷宮化する
四 吹き替えと売春の映画的関係
第四章 紙の原料生産地で何が起きているのか
──環境ガバナンスをめぐる「隠れた物語」を掘り起こす………笹岡正俊
はじめに
一 インドネシアの産業造林が引き起こしてきた問題
二 紙原料・紙製品の「責任ある」生産・消費にむけたガバナンスの形成
三 複雑化するガバナンスとその帰結
四 土地紛争を生きる人びと
おわりに──「隠れた物語」の掘り起こし
第五章 溥儀の悲憤──「宣統十六年」の紫禁城………吉開将人
はじめに
一 研究上の諸問題
二 溥儀の悲憤
三 「優待条件」をめぐる諸問題
四 優待条件体制終焉に至る道
五 問題の発見──修正優待条件・善後条例による清室財産の整理構想とその失敗
六 問題の検討──金梁による上奏の再検討
おわりに
第六章 珠光の嘆き
──「心の一紙」を読み解き、「和漢の境をまぎらかす」を考え直す………橋本 雄
一 本章のもくろみ
二 〈和漢論〉の構図
三 茶道史の〈語り〉を相対化する
四 古市澄胤とその周辺
五 珠光は和物を好んだか?
六 「和漢のさかいをまぎらかす」再考
七 「心の師とハなれ、心を師とせざれ」
八 維摩信仰と珠光の教えと
第七章 愁歎の人形浄瑠璃………冨田康之
はじめに
一 義太夫節の愁歎について
二 愁歎の表現
三 死に行く者の嘆き(心中直前の述懐)
四 残された者の嘆き
おわりに
第八章「晋の予譲が例を引き」(しんのよじょうがためしをひき)
──予譲の説話と絵馬をめぐって………鈴木幸人
はじめに
一 「予譲」を引く浄瑠璃・歌舞伎
二 予譲の説話──「士は己を知る者の為に死す」
三 予譲を描いた絵画──「予譲刺衣図」絵馬
四 予譲説話の展開──落語・小説での変容
五 まとめに代えて──晋の予譲の例からの絵画論へ向けて
あとがき
執筆者紹介