食の豊かさ 食の貧困 近現代日本における規範と実態
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-1166-2 C3036
奥付の初版発行年月:2024年09月 / 発売日:2024年09月中旬
「善き食生活」とは何か──。「崩食」を背景として、栄養学や伝統・自然など多様な指針が乱立するいま、食の豊かさ/貧困をどう再定義するかが問われている。社会学と倫理学を結び合わせて「食潜在能力」の考え方を提示し、日本食文化の歴史的考察と現代の食卓調査から、私たちの食生活を問い直す力作。
上田 遥(ウエダ ハルカ)
1992年生まれ。2018-19年トゥールーズ・ジョン=ジョレス大学客員研究員。2020年京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了。博士(農学)。日本学術振興会特別研究員(名古屋大学)などを経て、現在、東京大学東洋文化研究所助教。主著に『食育の理論と教授法』(昭和堂、2021年、日本農業経済学会奨励賞)、Food Education and Gastronomic Tradition in Japan and France (Routledge, 2022)がある。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 あいまいな「食の豊かさ」、みえにくい「食の貧困」
1 現代=再帰的近代の食べ手
2 潜在能力としての「食の豊かさ」
3 相対的剥奪としての「食の貧困」
4 本書の内容
第Ⅰ部 現代の食をどう捉えるか
—— 社会と倫理の結節
第1章 食の社会学
1 農村社会学から食の社会学へ
2 食の社会学の発展史
3 食の近代化論
4 食事モデルと社会表象
5 近代家族と戦後体制
第2章 食の倫理学
1 基本命題
2 功利主義、義務論、徳倫理
3 ウェルビーイング(生活の質)研究
4 フード・インセキュリティ研究
5 潜在能力アプローチの可能性
第Ⅱ部 食規範と実態の歴史的変遷
第3章 「第一の食の近代」の萌芽
1 フードシステムの近代化
2 近代家族と栄養学
3 「米食型食生活」の成立
第4章 戦後「食の近代」の再出発
1 食生活の戦後体制の確立
2 フードシステムの戦後体制と副作用
3 「日本型食生活」の成立
4 食事型にみる家族の戦後体制の矛盾
第5章 「第二の食の近代」の徹底化
1 崩食論の本質
2 食品安全問題と法的規制化
3 食育と栄養主義
4 和食の遺産化
5 食の貧困と脱政治化
第Ⅲ部 現代日本の「善き食生活」と「食の貧困」
第6章 食潜在能力
—— 理論から実践へ
1 食潜在能力理論の応用
2 本書で用いるデータ
3 分析方法
第7章 「善き食生活」の多様性と共通性
1 「善き食生活」の主観的価値づけ —— 健康から品質まで
2 食事モデルの客観的評価 —— 食事回数から食事内容まで
3 食生活言説と実態との相克
第8章 経済的貧困では捉えられない「食の貧困」
1 「食の貧困」とは十分な食料がないことか
2 貧困シングルマザーの食生活
3 シングルマザーの食生活特徴
4 シングルマザーの「食の貧困」測定
第9章 食潜在能力の測定
1 「善き食生活」と「食の貧困」の認定
2 食潜在能力の格差はどこにあるか
3 現代社会の縮図としての食生活
第10章 食料政策の体系化
1 食生活支援の実態とニーズ
2 食料政策の国際的動向 —— フランスを中心に
3 日本型「食料政策」の体系化へ
終 章 豊かさの中の貧困、貧困の中の豊かさ
1 食の豊かさ、食の貧困とは何であったか
2 研究の制約と批判
3 食の豊かさの哲学へ
註
あとがき
付 録
参考文献
図表一覧
索 引