日本統治下の台湾 開発・植民地主義・主体性
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8158-1158-7 C3022
奥付の初版発行年月:2024年06月 / 発売日:2024年06月下旬
半世紀に及ぶ支配のなかで、台湾は何を経験したのか。経済開発を軸として社会の隅々にまで及んだ統治の実態と、環境の激変を生き抜く台湾人の主体性を同時に捉え、日本最初の植民地における「近代化」の全容と限界を描き出す。「収奪」一色でも賛美・肯定でもない、信頼できる通史の決定版。
平井 健介(ヒライ ケンスケ)
1980年生。2003年、慶應義塾大学経済学部卒業。2008~09年、台湾中央研究院近代史研究所訪問学員。2011年、慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(経済学)。2012年、甲南大学経済学部専任講師。2019年、名古屋大学大学院国際経済政策研究センター国内研究員などを経て、現在、甲南大学経済学部教授。主な業績に『砂糖の帝国──日本植民地とアジア市場』(東京大学出版会、2017年)、「日本植民地の経済」『二つの大戦と帝国主義II(岩波講座 世界歴史 第21巻)』(岩波書店、2023年)。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 なぜ日本統治時代の台湾なのか
1 植民地としての台湾
2 植民地経済史の視角
3 本書の視角と構成
第Ⅰ部 台湾統治の開始
—— 19世紀後半
第1章 台湾領有の系譜
—— 日清講和条約第2条
1 日本統治前の台湾
2 日本における台湾認識の形成
3 台湾領有へ
第2章 統治者の交代、被治者の選別
—— 日清講和条約第5条
1 日台戦争
2 列強の権益の回収
3 誰を統治するのか
第Ⅱ部 「対日開発」の時代
—— 1895~1910年代前半
第3章 統治の開始
—— 特別統治主義と対日開発
1 台湾の統治制度
2 「財政独立」という難題
3 児玉源太郎・後藤新平の時代
第4章 帝国経済圏の形成
1 農業基盤の整備
2 経済空間の一体化
3 対外関係の変容
第5章 近代製糖業の移植
1 製糖技術の進歩とアジア砂糖市場
2 台湾における近代製糖業の移植
3 砂糖生産量の増大
第6章 官 業
—— 専売と鉄道
1 アヘンの専売と消極的漸禁
2 樟脳の専売と先住民
3 鉄道事業と滞貨問題
第Ⅲ部 「総合開発」の時代
—— 1910年代後半~1930年代前半
第7章 統治の再編
—— 内地延長主義と総合開発
1 内地延長主義
2 内地延長主義の実際
3 「総合開発」へ
第8章 農業の多角化
—— 科学的農業の普及と負担
1 稲作の拡大と「米糖相剋」
2 研究開発体制と技術者
3 政策の「成功」と農民の負担
第9章 工業化の進展
—— 政策的工業化と自生的工業化
1 南進政策
2 工業化政策
3 自生的工業化
第10章 アジアのなかの台湾
1 東アジア砂糖市場のなかの台湾糖
2 食料原料基地化とアジア
3 輸出貿易と華僑通商網
第11章 地方開発
—— 植民地における「民意」
1 都市化の進展
2 地域利害の代弁者
3 地方振興活動の諸相
第Ⅳ部 「軍事開発」の時代
—— 1930年代後半~1945年
第12章 統治の黄昏
—— 皇民化政策と軍事開発
1 皇民化政策
2 戦争への動員
3 「軍事開発」へ
第13章 戦時下の台湾経済
1 日本の南方進出と台湾
2 軍事工業化政策の実態
3 戦時下の生活
終 章 日本統治時代の開発の評価
1 日本統治時代の台湾開発史
2 開発の植民地性
3 台湾人の主体性、アジアへの開放性
あとがき
参考文献
図表一覧
索 引