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現代中国 内政と外交

現代中国 内政と外交

A5判 240ページ 上製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8158-1035-1 C3031
奥付の初版発行年月:2021年08月 / 発売日:2021年08月中旬

内容紹介

世界政治の焦点――。強勢外交と権威主義政治は切り離せない。グローバル大国化した中国の内政と外交を同時にとらえ、国家資本主義から「周縁」問題まで、両者のネクサスに照準を合わせつつ、革命後の70年をふまえて現在の姿を浮き彫りにした、第一人者によるエッセンシャルな一冊。

前書きなど

本書は、中国内政を分析した拙著『現代中国政治(第3版)――グローバル・パワーの肖像』(名古屋大学出版会、2012年)と、現代中国の外交を解明した『現代中国外交』(岩波書店、2018年)との間をつなぐ著作である。両者からあふれ出した「中国問題」に挑戦しようとしたものである。巨大になった中国が抱える問題の核心はまさに内政・外交の諸課題が混じり合い、交錯するところ(ネクサス)にあるから、「間をつなぐもの」という意味は重い。本書は次のことを狙っている。

内外を分けずトータルに、「丸ごと」現代中国を分析する(日本で最も優れた地域研究者・末廣昭氏の言葉)。今日の中国、明日の中国の問題は、実は、内政・外交の境目、その交錯するところ、両者が絡み合うところに所在するのである。従来は、内外は内政と外交に画然と区別され、複数の研究者が分業して対処してきた。古今東西ともにそうである。そうしないと問題領域が無限に拡張してしまうし、両者を一体的に捉える方法論も未確立で、ともかく大変にむずかしいからにほかならない。

本書はその難問に挑戦する。具体的には次のような工夫をしてみたい。

第一に、明らかに内外交錯、一体化した問題と認識できるものを対象として選ぶ。最適な事例は、香港、台湾、新疆、チベットなどの、国民や国家の統合に関わる問題である(第6章)。

第二に、昨今とみに肥大化している中国の「国家」を取り上げて、内外両側面から立体的に分析し、一つの国家像(新国家資本主義)にまとめ上げる(第3章)。

第三に、中国の対外軍事行動は軍事行為か政治行為かと問いかけ、内外が交錯したプロセスを究明し、「結果」で評価する(第4章)。

第四に、グローバル時代の中国の大国外交が、国有企業や軍、地方などの新アクターの諸圧力を受け強勢外交に転じている状況は、明らかに内外交錯によ……


[「はじめに」冒頭より]

著者プロフィール

毛里 和子(モウリ カズコ)

早稲田大学栄誉フェロー・名誉教授(政治学博士)。著訳書に『中国とソ連』(岩波書店)、『現代中国政治』(名古屋大学出版会)、『周縁からの中国』(東京大学出版会)、『現代中国政治を読む』(山川出版社)、『日中関係』(岩波書店)、『グローバル中国への道程』(共著、岩波書店)、『現代中国の構造変動』I,VII(編、東京大学出版会)、『ニクソン訪中機密会談録』(共訳、名古屋大学出版会)、『周恩来・キッシンジャー機密会談録』(共監訳、岩波書店)他多数。2010年、福岡アジア文化賞、国際中国学研究賞、2011年、文化功労者。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

序 章 日本における当代中国研究
――これまでとこれから

第1章 現代中国政治の三位一体体制
1 変わる政策と、変わらない制度
2 党(共産党)
3 議会(人民代表大会)
4 軍(人民解放軍)
5 7人の統治集団
6 共産党の変化と企業家の政治化

第2章 政策決定
――基本パターンと天安門事件
1 政策決定の基本パターン
2 天安門事件再訪――資料の紹介
3 事件前半の政策決定――八老政治
4 事件収拾の政策決定――北京市党委員会と4中全会

第3章 肥大化する国家
――国家資本主義の実相
1 市場化か、国有企業保護か
2 国有企業と「国家資本主義」
3 腐敗と反腐敗
4 中国における国家

第4章 中国外交の固有性
1 中国外交のむずかしさ――米国が犯した誤認と錯誤
2 中国外交はどこまで中国的か――六つの問いと暫定的な答え
3 現代中国外交の時期区分
4 現代中国外交の政策決定パターン
5 現代中国外交の政策決定機構
6 外交としての対外軍事行動

第5章 グローバル大国化と「強勢外交」
1 国際関係をめぐる新構想
2 アフリカに架ける夢
3 強勢外交と新アクター

第6章 中国を悩ます「国家性」問題
1 「国家性」問題とは
2 「周縁」から見えるもの
3 チベット問題
4 新疆ウイグル問題
5 台湾問題
6 香港問題――雨傘運動から国家安全維持法反対へ
7 領域統合のいくつかの構想

終 章 ポスト権威主義
――レジーム変容はあるか
1 レジームの定義――民主制・全体主義・権威主義
2 権威主義の諸類型
3 統治とガバナンス
4 deliberative democracyと「協商民主」
5 一党支配体制の歴史的役割は終わったのか

参照文献
あとがき
図表一覧
索引


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