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 中華民国による統一の構想と挫折大陸反攻と台湾

大陸反攻と台湾 中華民国による統一の構想と挫折

A5判 400ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-1034-4 C3031
奥付の初版発行年月:2021年09月 / 発売日:2021年09月上旬

内容紹介

米中両大国のはざまで見落とされてきた台湾の「大陸反攻」をはじめて解明。大陸奪還と中国統一を目標に展開された軍事・外交政策の実像とその変容を、「蔣経国日記」など最新の資料から浮き彫りにするとともに、今日の東アジア国際政治の最大の焦点となっている台湾海峡危機の全体像を歴史的視野で描き出す。

前書きなど

今日、「台湾」(Taiwan)と呼ばれる地域を統治している政府は、自らの国号を「中華民国」(Republic of China)と称している。その政府は、かつて国際社会において「中国」(China)を代表し、台湾の地で「大陸反攻」をスローガンとして掲げ、軍事力で中国大陸を奪還し、中国全土を統一する構想を抱いていた。

アメリカ合衆国太平洋軍司令官キーティング(Timothy J. Keating)が二〇〇七年五月に訪中した際、中国人民解放軍(以下、解放軍)海軍高官から「太平洋の米中分割管理」の提案を受けていたことが翌年三月に明らかになると、米中のパワー・バランスがアジア太平洋地域における秩序の帰趨を決めかねないと懸念する声が広がった。その中華人民共和国は、一九八〇年代後半から経済成長を続け、二〇一〇年に国内総生産(GDP)の規模でアメリカに次ぐ世界第二位に達した。また、このような経済力を背景として、一九八九年以降、国防費は前年比でおおむね二桁を超える高水準の伸びを維持し、世界一の兵力数を誇る軍事力をさらに増強させ続けている。そして、いまやアジアの大国となった中華人民共和国と、第二次世界大戦後のアジア太平洋地域に覇権を築いてきたアメリカとの関係は、国際政治における最も大きな関心事になっているといっても過言ではない。

しかし、東アジアにおける米中の対立は、今世紀に入って始まったことではない。太平洋戦争後、米中間に生じた「台湾」をめぐる確執は、一貫して東アジアの不安定要因であり続けている。今日、中華人民共和国政府の対台湾政策については、一九九三年に発表された『台湾問題と中国統一』および二〇〇〇年に発表された『一つの中国原則と……

[「はじめに」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

五十嵐 隆幸(イガラシ タカユキ)

1975年生。2020年、防衛大学校総合安全保障研究科後期課程修了。現在、防衛大学校防衛学教育学群准教授、博士(安全保障学)。論文、「台湾における軍事戦略の転換(1961-1991年)」(『日本台湾学会報』第18号、2016年、日本台湾学会賞)、「蔣経国の行政院長期における国防建設(1972-1978)」(『アジア研究』第66巻第4号、2020年、アジア政経学会優秀論文賞)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに
巻頭地図

序 章 大陸反攻と台湾
1 台湾に存続する中華民国の大陸反攻
2 先行研究と史資料
3 本書の論点と構成

第1章 大陸反攻の起源とその展開
――1949~1957
はじめに
1 中華民国政府の台湾への撤退
2 冷戦の影と大陸反攻
3 第一次台湾海峡危機と「米華相互防衛条約」
4 大陸反攻作戦の準備再開
小括

第2章 「蔣介石=ダレス共同コミュニケ」と大陸反攻
――1957~1960
はじめに
1 第二次台湾海峡危機の勃発
2 「蔣介石=ダレス共同コミュニケ」
3 第二次台湾海峡危機の収束と反攻作戦準備の再開
4 大陸反攻の好機を求めて
小括

第3章 「攻勢作戦」の限界と「攻守一体」への転換
――1961~1969
はじめに
1 大躍進政策の失敗と単独反攻作戦の構想
2 核実験の成功と完全単独反攻作戦の構想
3 ベトナム戦争に乗じた米華共同反攻作戦の構想
4 文化大革命と共同反攻作戦の断念
5 新たな国家戦略の検討
6 「攻勢作戦」から「攻守一体」への戦略転換
小括

第4章 ニクソンの対中接近と蔣経国への権力移行
――1969~1972
はじめに
1 「グァム・ドクトリン」と蔣介石の執念
2 「攻守一体」戦略への移行初期における国軍
3 ニクソン・ショックと国連からの「脱退」
小括

第5章 「予想される対米断交」と蔣介石死後の大陸反攻
――1972~1978
はじめに
1 蔣経国の行政院長就任と日華断交
2 台湾を取り巻く国際環境の複雑化
3 アメリカの軍事的コミットメントの変化
4 蔣介石の死去と蔣経国による「今後の国防方針」
5 共産党指導者の相次ぐ死去と単独反攻作戦の構想
小括

第6章 蔣経国の総統就任と米華相互防衛条約の終了
――1978~1983
はじめに
1 蔣経国の総統就任とアメリカの対華武器売却
2 米華断交と「台湾関係法」
3 アメリカに頼らぬ単独防衛体制の整備
4 大陸反攻の残された希望とレーガン政権
小括

第7章 大陸政策の再定義と大陸反攻任務の解除
――1984~1991
はじめに
1 「台湾防衛」型軍隊への改編と戒厳令の解除
2 蔣経国から李登輝に託された「中国統一」の責任
3 大陸反攻の終焉
小括

終 章 台湾に在る中華民国政府の選択
1 「正統中国」の原則と大陸反攻の終焉
2 1991年以降の台湾をめぐる安全保障


あとがき
参考文献
索引


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