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台湾経済の歴史的起源緑の工業化

緑の工業化 台湾経済の歴史的起源

A5判 286ページ 上製
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-8158-1032-0 C3033
奥付の初版発行年月:2021年08月 / 発売日:2021年08月中旬

内容紹介

植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。

前書きなど

工業化という大きな社会変動が過去200年ほどにわたって世界の人々の生活を大きく変えてきたことは疑う余地がない。とりわけ、20世紀後半における東アジア地域の工業化は、それまで欧米地域と日本に限定されていた工業化という現象を世界レベルに拡大する契機となった。本書の舞台となる台湾も、1970年代以降に「新興工業国」(Newly Industrializing Countries; NICS)あるいは「新興工業経済地域」(Newly Industrializing Economies; NIES)の一員として注目を浴びるようになった。

本書は、この台湾社会の工業化を、20世紀を通じた長期的な転換過程として捉え、その淵源を日本統治期に探る試みである。つまり、台湾は、日本統治期に工業化社会への転換を遂げたと考える。このイメージは、一般的なものとはいえない。日本統治期の台湾経済の一般的なイメージは、日本に砂糖や米を供給する農業社会であったというものである。もちろん、日本統治期に台湾の近代化が進んだことについては、さまざまな方面から検討が加えられ、明らかにされている。たとえば、鉄道や電力などのインフラストラクチャの整備、近代的な銀行制度の確立、教育制度の充実、などが挙げられる。産業面では、近代的な製糖業が成立し、甘蔗(サトウキビ)と米を中心とする農業の近代化が……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

堀内 義隆(ホリウチ ヨシタカ)

1973年、京都府に生まれる。1996年、京都大学経済学部卒業。2004年、京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。2008年、京都大学より博士(経済学)学位取得。現在、三重大学人文学部准教授。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

地図

序 章 台湾工業化社会の形成
1 植民地工業化論と台湾
2 課題の敷衍と参照枠組み
3 視角と構成

第I部 日本統治期台湾社会の工業化

第1章 市場社会の変容
――工業化社会の始まり
1 日本統治初期台湾の分業構造
2 分業構造の変容(1905-1940年)
3 1920年代の変化の背景――農業植民地化と工業化
まとめ

第2章 小経営的工業化への道
――中小零細工業の発展
1 中小零細工業の発展と諸類型
2 中小零細工業発展の諸条件
まとめ

第3章 小経営・内需・工業化
――島内市場と台湾人商工業者
1 小経営の動向
2 島内市場の発展
3 物品販売業者と工業化
まとめ

第4章 小農社会のなかの工業化
――農村工業と労働供給
1 農村工業の発達
2 農村工業の経営形態と業種
3 工業化と農家の労働供給
まとめ

第II部 工業化社会の形成と産業

第5章 民族工業と帝国経済圏
――製帽業による世界市場への進出
1 製帽業の概観
2 生産組織――問屋制家内工業
3 帽子の流通と金融
まとめ

第6章 「米の帝国」と工業化
――籾摺・精米業の展開
1 台湾工業化における籾摺・精米業
2 籾摺・精米業の発展過程とその特質
3 籾摺・精米業発展の経済的動因
4 籾摺・精米業の発展と台湾の小経営的工業化
まとめ

第7章 「機械を使用する社会」の形成
――機械市場と人的資本蓄積
1 日本統治期台湾の機械工業の発展水準
2 機械市場の動向と植民地的規定性
3 機械工業における工業経営の実態
4 日本統治期の到達点と戦後への展望
まとめ

終 章 「緑の工業化」と解放後の台湾経済

参考文献
あとがき
初出一覧
図表一覧
索引


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