生態人類学は挑む MONOGRAPH7
サバンナの林を豊かに生きる 母系社会の人類学
価格:3,630円 (消費税:330円)
ISBN978-4-8140-0420-1 C3339
奥付の初版発行年月:2022年07月 / 発売日:2022年07月中旬
ミオンボ林があればどこへでも――。ザンビア北部、林の恵みで生きる焼畑農耕民ベンバ。女性のネットワークが基盤となる母系社会は世帯の垣根をこえ、離村や分裂も織り込んで林を自在に移動する。貨幣経済の侵入や農業の商業化政策、それらの変化をすべて組み入れてなお、樹上伐採と焼畑農耕を選びつづける彼らの「食物の道」。
杉山 祐子(スギヤマユウコ)
弘前大学人文社会科学部教授。筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士後期課程修了、京都大学博士(地域研究)。主な著作に、『極限―人類社会の進化』(共著、京都大学学術出版会、2020年)、『地方都市とローカリティ―弘前・仕事・近代化』(弘前大学出版会、2016年)などがある。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 ミオンボ林の焼畑農耕民
1 焼畑農耕民ベンバに出会う
2 本書の構成
第1章 村入り―調査地概要
1 ベンバの人びととベンバランド
2 歴史と政治社会構造
3 ベンバの村と王国
4 村への住み込みがはじまる
5 入り口は「ミリモ・ヤ・サイエンス(サイエンスの仕事)」
6 年長女性たちのレッスン
第2章 生計活動と平準化機構
1 チテメネ・イバラ・ミオンボ林
2 環境利用のジェネラリストとしての生計活動
3 生計の単位としての世帯と生計戦略
4 格差を均す平準化機構
第3章 女性たちの集まりと調理加工の共同・消費の共同
1 調理加工作業の共同と女性の集まり
2 調理加工作業の共同と共食・食物の分かち合い
3 女性の集まりと子どもたちの食
4 足りない調理道具を求めて―女性たちはなぜ集まるのか
5 ライフステージの上昇と物をもつことの意味
6 道具の貸借をめぐる女性たちの動き―社会的地位をふまえたポリティクス
7 親和的関係は日々の蓄積で更新される―生活に内包された移動性
8 消費の共同体としての女性の集まり
第4章 人びとの移動と村の発達サイクル
1 人びとの移動と「世帯の失敗」
2 「世帯の失敗」の様態
3 変動する世帯構成と「世帯の必要」の確保
4 生計維持の困難を支える母系親族と年長女性の社会的地位
5 男性の伐採地選択と開墾ゾーン
6 集落の創設と開墾ゾーン
7 世代交代とML村の分裂
8 祖霊祭祀と村長の権威
9 再生の縁となる祖霊祭祀と秘匿される知識の継承
第5章 チテメネ農法の秘密と村長の権威
1 農法の説明になぜ「秘密」のにおいがするのか
2 マーレ氏は語る―チテメネ・システムの理論的背景
3 世界観との連動―「焼くこと」と祖霊への作法
4 「焼くこと」と生殖論
5 「見ればわかる」知識と見るだけではわからない知識
6 村長の権威のありか
第6章 農業政策の変化に揺れる母系社会
1 農業の商業化政策と換金用トウモロコシ栽培の進展
2 苦境に陥る女性世帯―世帯間の格差は広がる
3 女性世帯の連帯、世帯を越えた消費のネットワーク
4 生計における現金の位置づけは変わったか―食物の道・敬意の道・お金の道
5 変化の様相と変化を生み出す連続性
第7章 チテメネ耕作と人びとのイノベーション・ヒストリー
1 農民の技術と在来知へのまなざし
2 タカムラ・チテメネが開く村びとの試行の歴史
3 チテメネ耕作錬成の歴史における三つのイノベーション
4 生計戦略と技術の選択の基準、経験知としてのプロジェクトの失敗
5 異質な技術の取り込みと技術の指向性の変換
6 個別多発的試行から村全体のイノベーションへ
7 ベンバにおけるフォークイノベーション・ヒストリー(FIH)
終 章 小さな村からの生態人類学
1 小さな村から何を考えるか
2 生計にあらわれる消費と分与の様態
3 誰かのモノを「食べてしまう」こと=消費の力と社会的な広がりとしての世帯
4 生業複合における生産から見た自給レベルの維持
5 ベンバの生活から私たちの社会を考える―食べることを前提にした共同と食物分与
6 生態人類学の可能性
謝 辞
参考文献
索 引