生態人類学は挑む SESSION5
関わる・認める
価格:3,850円 (消費税:350円)
ISBN978-4-8140-0385-3 C3339
奥付の初版発行年月:2022年01月 / 発売日:2022年01月下旬
単独になりがちなオランウータン、努力して群れるゴリラ、離合集散するチンパンジー、いくつもの集団を生きるヒト。葛藤と喜びのはざまで常に隣人とともにある世界。否応なく開始される不断の交渉と、あらゆる相をみせる共存の形が生み出す他者への想像力は、いかに独自の秩序を形成していくのか? 霊長類とヒトの比較から、「ともに生きること」の諸相に迫る。
河合 香吏(カワイ カオリ)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授.1961年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学).主な著作に,『ものの人類学2』(共編著,京都大学学術出版会,2019年),『極限―人類社会の進化』(編著,京都大学学術出版会,2020年)などがある.
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 [河合香吏]
第Ⅰ部 秩序と社会の起原
第1章 何が社会に「秩序」をもたらすのか?[北村光二]
1 社会の秩序とは何か?
2 「パラドックス=決定不能な状態」の克服による新しい「秩序」の生成
3 「価値ある物の他者への移譲」という相互行為が切り開く新たな秩序の地平
4 「意味の共有」を手がかりにした「協働」による問題対処
第Ⅱ部 社会に生きる,社会で育つ
第2章 群れない類人猿—オランウータンの関わり合いから見える「集まらない」社会性[田島知之]
1 野生オランウータン調査のある1日
2 オランウータン―群れない類人猿
3 集まり,離れることで生成される社会
4 集まらない理由―環境による制約と行動の違い
5 オランウータンが集まるとき
6 共存実現のメカニズム―社会的葛藤への対処行動
7 離れながらの相互作用―オスの二型成熟と繁殖戦術
8 まとめ:離れながらつながる社会性の原型
第3章 狩猟採集民の子どもはどのようにして大人になるのか—育児協働と子どもの狩猟採集活動[山内太郎]
はじめに
1 人間のライフサイクル
2 狩猟採集社会における乳幼児と人々との関わり
3 子どもと森との関わり
おわりに
第Ⅲ部 食べることとささえあい
第4章 全体の努力と個体の努力—群れはいかに維持されるのか[岩田有史]
はじめに
1 方法
2 ニシゴリラの採食行動の季節変化
3 体サイズによる採食行動の違い
おわりに―「関わる・認める」結果としての群れ
第5章 栄養生態学からみた人との関わりと子どもたち—近代化過程にあるパプアニューギニア東高地州におけるフードシェアリング[夏原和美]
はじめに
1 「何をどのくらい食べるか」を規定する要因
2 調査地の概要と調査方法
3 フードシェアリングの実態
4 近代化とフードシェアリング
おわりに
第Ⅳ部 行為のやりとり,もののやりとり
第6章 群れの「外」の関わり合い—ニホンザルの互恵性からみる社会[川添達朗]
はじめに
1 ニホンザルの社会とオスの生活史
2 群れの内と外―オスのメンバーシップと交渉
3 親和的関係の持続性と機能
4 互恵的利他行動のメカニズム
おわりに
第7章 格差のある二者の共生にみる力学—ミャンマーのチャ農家と労働者によるチャ摘み制度の調整を事例に[生駒美樹]
はじめに―格差のある二者の共生
1 シャン州ナムサン郡の茶生産
2 農家と労働者の「支援」関係
3 制度の調整
4 揺らぐ農家と労働者の境界
5 「制度」の調整と共生
第Ⅴ部 婚姻と家族のすがた
第8章 離合集散が織りなす集団の動態—ヒトとチンパンジーの社会にみる概日性多相集団[座馬耕一郎]
1 人間が作る集団の特徴
2 人間が作る集団の起原
3 霊長類の社会構造
4 観察事例
5 離合集散と周期性
おわりに
第9章 振る舞いをつむぎ,他者とともに生きる—パプアニューギニア・マヌス島の結婚生活と相互行為[馬場 淳]
はじめに―相互行為の深遠な森へ
1 民族誌的背景
2 プヌオウ―クルティ社会における相互行為の鍵概念
3 「振る舞い」の指標としての婚資
4 開示される「振る舞い」―パラ・ソウエ儀礼
5 相互行為への意思―他集団との姻戚交流
おわりに―他者のための行為へ
第Ⅵ部 ともに生きることの方途
終 章 共存の諸相—他者と関わり,他者を認めるとはどのようなことか[河合香吏]
はじめに
1 人類学と霊長類学の協働―異種間比較という視点と方法
2 群居のなかから
3 行為のやりとり,もののやりとり
4 集団レベルの「関わる・認める」
おわりに
索 引
執筆者紹介