学術選書102
乾燥地林 知られざる実態と砂漠化の危機
価格:2,200円 (消費税:200円)
ISBN978-4-8140-0381-5 C1345
奥付の初版発行年月:2022年03月 / 発売日:2022年03月上旬
頻発する干ばつに砂嵐。荒廃したイメージが強い乾燥地だが、そんな環境に成立する「森林」がある。地下60mに根を伸ばし地下水を利用したり、霧を巧みにトラップしたりと、ユニークな戦略を凝らして生きる乾燥地林は、世界の人口の3割以上にのぼる乾燥地住民の生活に深く結びついてきた。しかし、その生態が正確に把握されていないため、近年の急激な劣化・消失の危機感も、適切な森林管理のためのガイドラインも共有されていない。乾燥地林の実態を知り、地球規模の砂漠化対策を考える必読書。
吉川 賢(ヨシカワ ケン)
岡山大学名誉教授
1949年奈良県に生まれる。1981年京都大学大学院農学研究科博士課程修了(農学博士)。高知大学農学部講師、岡山大学農学部助教授、教授、同大学大学院環境科学研究科教授、研究科長を歴任。2015年定年退職の後、日本沙漠学会会長、岡山大学地域総合研究センター特任教授。
日刊工業新聞「技術・科学図書文化賞」優秀賞のほか、内蒙古自治区政府より国際科学技術賞、日本森林学会、日本沙漠学会より学会賞、日本緑化工学会より功績賞を受賞。
専門は樹木生理生態学、とくに乾燥地の樹木のストレス耐性の解明。
目次
はじめに
第1章 森林と乾燥地
1 乾燥地はどんなところ
乾燥度指数
乾燥地の区分と広さ
乾燥度指数による分類の限界
乾燥気候の特徴
2 樹木も森林も乾燥と戦っている
樹木の耐乾戦略
森林の水不足への適応
3 乾燥地林とは何か
森林の定義
森林の広がり
乾燥地林の種類
森林の外の樹林地
4 乾燥地林の植生管理
乾燥地植生への関心の推移
環境を劣化させたのは誰か
植生修復の歩み
コラム01 山頂に広がるアフリカビャクシン林
第2章 乾燥地林が持つ機能
1 資源を生産する
現存量と成長量
燃材
用材
2 環境を整える
炭素隔離
水源涵養
3 環境を保全する
災害を防止する
日差しを和らげる
生息地を提供する
4 乾燥地の木の文化
コラム02 砂漠の河畔を彩る胡楊林
第3章 乾燥地の利用と課題
1 林業・牧畜・農業のための乾燥地林
乾燥地林業
牧畜のための森林
乾燥地林での農業
2 砂漠化
砂漠化の面積
砂漠化の原因
砂漠化のメカニズム
3 乾燥地林の劣化が止まらない
情報の不足
経験の不足
人材の不足
4 管理のための課題と対策
立地環境の変化
対策の方針
コラム03 砂丘の上の臭柏群落
第4章 乾燥地林の修復と造成
1 乾燥地林の造成に特有の要因
要求に合致する造成目的
乾燥地ならではの立地条件
もっと立派な森林が作れる
在来種か、外来種か
2 植林と保育の技術
樹木が生育できる環境を整備する
水を集めて利用する
灌水の仕方
植栽する樹種と植栽方法
保育のいろいろ
3 防風林
防風林の構造
造成と管理
4 ガイドなき道をどう進むか
劣化する乾燥地林の再生ビジョン
破壊が進む前に修復を
伝統的な森林の利用法を止揚する
持続的管理を目指す
コラム04 シロアリの塚が立ち並ぶ高木サバンナ
おわりに
謝辞
注釈
参考文献
索引