新・動物記3
隣のボノボ 集団どうしが出会うとき
価格:2,420円 (消費税:220円)
ISBN978-4-8140-0336-5 C0345
奥付の初版発行年月:2021年08月 / 発売日:2021年08月中旬
思いがけないきっかけでチンパンジーの原野からボノボの森に身を移すことになった著者。森を遊動する複数のボノボ集団が出会う瞬間を求めて追跡をつづけた先に目撃したものは、集団どうしの出会いを避けるチンパンジーとは対照的に、異なる集団が交わり一緒のときを楽しむボノボたちの姿だった。コンゴの森で綴られた、瑞々しい動物記。
坂巻 哲也(サカマキ テツヤ)
1997年、京都大学理学部卒業。旅人と詩人になる夢を保留し、大学院に進学。タンザニアのマハレ山塊でチンパンジーを追跡することに魅せられる。個体識別したチンパンジーが夢に出てくるようになる。2005年、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。原野のチンパンジーの広域調査などを進めた後、2007年、コンゴ民主共和国でボノボの調査をはじめる。日本チームのボノボ調査地ワンバをベースにしながら、国際NGO「アフリカ野生生物基金」のイヨンジ保護区プロジェクトにも参加。2018年、ロマコ森林にベースを移す。夢に出てくるボノボの数は増えてきた。京都大学霊長類研究所研究員などを経て、現在はベルギーのアントワープ動物園が進めるボノボ保全活動、ロマコのツーリズム開発プロジェクトに従事する。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
巻頭口絵
はじめに
1章 森への序章
1 ボノボの棲む森から
2 ボノボの森へのいざない
長期調査地からのスタート
森の達人との出会い
チンパンジーの出会いと挨拶を追って
チンパンジーの原野からボノボの森へ
3 進化という世界へ
関心の原点
ボノボに見る人類進化とは
4 裏庭の森に棲むボノボたち
2章 ワンバのボノボたち—かれらの生活を追う
1 ワンバの朝
2 ボノボたちのあいだへ
ワンバの調査基地
はじめてのボノボ
ボノボを個体識別するとは
3 ワンバの森と人々
豊かな森
ワンバの村人と民話
4 ボノボの一年を追う
ワンバの季節
ボノボも分け合うおいしいボリンゴ
村の子供が木登りを覚えるバトフェ
ラムネの味のディアリウム
乾いた季節に訪れる畑と二次林
ワンバの森に広がる湿地林
5 ともにあることが好きなボノボたち
まとまりのよい遊動をするワンバのボノボ
チンパンジーと比べてみると
まとまりのよさが意味するところ
3章 ボノボたちの出会いの祝宴—集団の出会いを追う
1 ボノボからの洗礼
2 ワンバのボノボ集団の変遷
平和裏に出会うボノボの集団
増えたオトナオスの謎
ボノボの生活史と性について
ボノボ集団の消滅、そして融合
3 村と森のあいだで
ワンバ村の生活になじむ
ワンバ基地の立て直し
隣接集団の調査へ
4 ボノボの出会いを求めて
集団どうしのつかず離れずの遊動
P集団の人づけ達成
集団の輪郭を見きわめる
さらなる隣接集団の人づけへ
ついに集団の出会いを観察する
四つの集団の出会い
ボノボたちの祝宴
5 集団を超えたつながりはあるか
ボノボの集団関係から見えてきたこと
集団関係に果たすメスの役割
4章 イヨンジの森のボノボたち—隣の地域個体群を追う
1 イヨンジの森にて
2 新しい集団の人づけ
イヨンジのプロジェクト、はじまる
イヨンジの森の位置
足跡が途切れてしまう
慣れていないボノボの難しさ
板根を叩く音に反応する
新奇なものへの関心
3 行動の違いが意味するもの
行動の地域変異に出合う
食べ物が違う
ボノボの肉食の変異
チンパンジーと違う集団間の行動変異
4 社会進化の謎を問う
社会が進化するとはどういうことか
ボノボとチンパンジーの社会の違い
ボノボの社会はなぜ今あるように進化したか
5章 ボノボの保全
1 自然のあいだから
森に生きる五感
あいだに立つ
「コンサーベーション」に思うこと
2 ボノボをめぐる保全の現場
保全の対象としてのボノボ
ルオー学術保護区設立の経緯
二〇〇九年にジョルで開かれた会議
保護区設立プロジェクト、お決まりのパターン
イヨンジ保護区予定地で発覚した問題
イヨンジ保護区でも繰り返された騒動
3 ボノボの保全を考える
Column 1 生物の分類と進化
Column 2 霊長類の進化
Column 3 霊長類社会の多様性
Column 4 コンゴの森で出会うサルの仲間
Column 5 コンゴの森で出会う他の哺乳類
Column 6 進化する社会の三つの側面
Column 7 野生ボノボ調査史とワンバでの支援活動
あとがき
参考文献
索引