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近現代日本の自然風景の権威付けはどのように行われてきたのか国立公園と風景の政治学

国立公園と風景の政治学 近現代日本の自然風景の権威付けはどのように行われてきたのか

西田 正憲:編著, 佐山 浩:著, 水谷 知生:著, 岡野 隆宏:著
A5判 456ページ
価格:4,840円 (消費税:440円)
ISBN978-4-8140-0314-3 C3061
奥付の初版発行年月:2021年02月 / 発売日:2021年02月下旬
発行:京都大学学術出版会  
発売:京都大学学術出版会
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内容紹介

昭和6年、「我ガ国ノ風景ヲ代表スル二足ル大風景地」を必要条件として本格始動した国立公園の選定と区域決定。自然の風景をどのように評価し、どのように区切ればよいか? そこには理念と現実、建前と本音、行政と世論、中央と地方の大きな落差があり、乖離、矛盾、対立が渦まいていた。風景の公共性、歴史性、政治性の三つの側面を軸に、創設期から現在までの国立公園史とそこに働いた複雑な諸力を解き明かす。風景の本質を考えさせる一書。

著者プロフィール

西田 正憲(ニシダ マサノリ)

奈良県立大学名誉教授。博士(農学)、技術士。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。造園学を専攻。環境庁山陽四国地区国立公園・野生生物事務所保護科長、京都御苑管理事務所庭園科長などを経て、奈良県立大学地域創造学部教授、退職して現在に至る。主な著書に『瀬戸内海の発見——意味の風景から視覚の風景へ』(中央公論新社)、『自然の風景論——自然をめぐるまなざしと表象』(清水弘文堂書房)など。国立公園協会田村賞、日本造園学会賞、同学会特別賞を受賞。

佐山 浩(サヤマ ヒロシ)

関西学院大学総合政策学部教授。博士(工学)、技術士、潜水士。筑波大学第三学群社会工学類卒業。都市計画を専攻。環境庁阿寒国立公園管理事務所主査、九州地区国立公園・野生生物事務所世界自然遺産生態管理官、環境省山陽四国地区自然保護事務所次長、近畿地方環境事務所長などを経て現職。主な著書に『グリーンMOT 入門』(共著、中央経済社)、『47 都道府県・花風景百科』(共著、丸善出版)など。日本造園学会賞(著作部門)、同学会田村剛賞を受賞。

水谷 知生(ミズタニ トモオ)

奈良県立大学地域創造学部教授。博士(学術)、技術士(環境部門)、測量士。京都大学文学部史学科(人文地理学専攻)卒業。環境省生物多様性センター長、中国四国地方環境事務所長、近畿地方環境事務所長などを経て現職。人と自然の関係史を研究。著書に『47都道府県・花風景百科』(共著、丸善出版)など。「わが国の公用制限による国立公園の成立過程に関する研究」で日本造園学会賞(研究論文部門)受賞。

岡野 隆宏(オカノ タカヒロ)

環境省自然環境局温泉地保護利用推進室長。博士(環境学)。千葉大学大学院園芸学研究科修了。環境省九州地方環境事務所国立公園・保全整備課長、鹿児島大学教育センター特任准教授、環境省自然環境局自然環境計画課保全再生調整官などを経て現職。主な著書に『自然保護と利用のアンケート調査——公園管理・野生動物・観光のための社会調査ハンドブック』(分担執筆、築地書館)、『ユネスコエコパーク——地域の実践が育てる自然保護』(分担執筆、京都大学学術出版会)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

国立公園等位置図について
本書カバーの国立公園絵画について
 
はじめに――風景の政治学 [西田正憲]
 
序 章 日本を代表する傑出した自然風景の編成 [西田正憲]
  1 自然風景へのまなざし
  2 自然観光空間として誕生した地域制公園
  3 世界史の中の国立公園
  4 戦時期の国土における適正配置案
  5 戦後の観光振興をめざした国立公園の増大・広域化
  6 都市の観光レクリエーションに応えた国定公園と自然公園法の制定
  7 生態系保護を重視した自然保護空間への転回
  8 生物多様性確保による二一世紀の再編
  9 近現代の自然風景の権威付け

第Ⅰ部 風景の制度化――風景の公共性
第1章 風景地の制度化の端緒 [水谷知生]
  1 自然の風景地の保全の仕組み
  2 明治初期の公園と名所
  3 風景地の保全・整備への期待
  4 風景の保全・整備をめぐる制度の模索
 
第2章 国立公園調査地の選定 [水谷知生]
  1 国の大公園をどこに設けるのか
  2 内務省の一六調査地とは
  3 衛生局の国立公園調査の経過
  4 田村剛の考えた国立公園の箇所
  5 一六調査地とは何だったのか
 
第3章 公用制限による国立公園の成立 [水谷知生]
  1 国立公園法による仕組み
  2 田村の考える国立公園制度
  3 私有地を含む国立公園のあり方
  4 国立公園法での制度
  5 公用制限による公園とは何だったのか
 
第4章 大台大峯地域の国立公園反対論 [水谷知生]
  1 公用制限による公園の宿命
  2 国立公園選定時の大台大峯地域の土地利用
  3 国立公園での森林施業の制限
  4 林業家による反対要請と調整
  5 国立公園に含まれた私有林の林況と指定後の取扱い
  6 田村剛の森林施業制限の捉え方
  7 公用制限による公園の姿

第Ⅱ部 風景評価思想の変遷――風景の歴史性
第5章 一二国立公園の誕生と風景型式による風景評価 [岡野隆宏]
  1 国立公園の風景評価の基点
  2 国立公園調査会における国立公園選定に関する議論
  3 「国立公園ノ選定ニ関スル方針」に照らした候補地の評価
  4 一二国立公園決定に至る議論の流れ
  5 地学的型式を軸とした風景評価
 
第6章 戦後の自然保護重視と原生保護思想による方向転換 [佐山 浩]
  1 戦時下から昭和三〇年代に至る国立公園の指定状況
  2 昭和三〇年代の国立公園の指定状況
  3 昭和三〇年代における国立公園内の特別保護地区の指定状況と特徴
  4 国立公園数二〇の方針を巡る行政側の動きと新規指定の胎動等
  5 国立公園指定・自然保護等に係る国内外の動き
  6 昭和三〇年代の特別保護地区の指定状況等にみる特徴
  7 高度経済成長期のなかで抗い続けた国立公園行政
 
第7章 海中公園制度創設と海域の新たな評価 [佐山 浩]
  1 海中公園制度と足摺宇和海国立公園
  2 足摺宇和海国立公園指定に至る経緯
  3 他の国立公園指定時の状況との比較
  4 海中公園制度が足摺宇和海国立公園の指定に与えた影響
  5 因縁の国定公園指定同期
    ――足摺宇和海国立公園と山陰海岸国立公園の指定をめぐって
 
第8章 生態系と野生生物重視による湿原の新展開 [佐山 浩]
  1 二〇世紀の最後を飾った二つの国立公園
  2 利尻礼文サロベツ国立公園指定に至る経緯
  3 釧路湿原国立公園指定に至る経緯
  4 二つの国立公園の関連性と指定の意義
  5 時代とともに変化する風景評価

第Ⅲ部 風景の政治学――風景の政治性
第9章 国立公園誕生の委員会にみる風景の政治学 [西田正憲]
  1 国立公園委員会等の議事録
  2 国立公園の選定・区域決定と国立公園委員会
  3 国立公園委員会の論点
  4 委員会・行政・時代の力学
  5 一二国立公園誕生にみる風景の政治学
 
第10章 「地元」の風景認識の国立公園への反映 [水谷知生]
  1 熊野地域の選定の背景にあるもの
  2 熊野地域の選定の経過と田村の考え
  3 熊野地域の区域拡大に関する地元の動き
  4 熊野地域の地元の準備――写真館による風景の生産
 
第11章 複雑な社会状況の中で生みだされる国立公園 [佐山 浩]
  1 国立公園・屋久島の誕生過程
  2 国立公園・屋久島の決定までと以後の国立公園等の全国の指定状況
  3 戦後から昭和三〇年代にかけての屋久島・硫黄島の社会状況
  4 単独指定から霧島国立公園への編入
  5 指定遅延の要因と選定要領からみた国立公園・屋久島の意義
  6 風景の政治性に翻弄されてきた屋久島
 
第12章 生物多様性と協働管理による国立公園の再編 [佐山 浩]
  1 二一世紀の国立公園のダイナミックな動きとその要因
  2 「生物多様性」の意味と国立公園行政上の意義
  3 国立公園等における生物多様性保全等に向けた国の対応
  4 わが国の国立公園の現地管理運営の歴史
  5 国立公園の現地管理運営に関する「新しい協働のかたち」に向けて
  6 生物多様性保全と管理運営体制を軸とした国立公園の再編の動き
  7 協働型管理と再編による国立公園の再生と持続可能な地域社会
 
終章 風景の行方――ナショナルな風景からグローバルな風景へ、そして、再びローカルな風景へ [西田正憲]
  1 出遅れた世界遺産
  2 ナショナルな風景である富士山の風景の政治学
  3 グローバルな風景である世界遺産の風景の政治学
  4 新たな視覚
  5 生成し続ける風景
  6 ローカルな風景の再発見
 
あとがき
索引


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