ほろ酔いの村 超過密社会の不平等と平等
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-8140-0194-1 C1039
奥付の初版発行年月:2019年03月 / 発売日:2019年03月下旬
遊牧民との抗争、痩せた土地での農耕、酒と土器の経済がつくりだす均衡と身分制度――。いろいろあっても毎日が宴会! どうしてこの村は「不平等」の一歩手前でとどまっていられるのか。人類が平等から不平等社会へ跨ぎ越す瞬間を探し求めてきた人類学。跨ぎ越してしまった「近代」の別の可能性として現れたコンソ社会に暮らし、彼らの生活を記録した人類学者が、不平等の起源に迫る。
◉推薦 山極壽一氏(第26代 京都大学総長)
私たちの社会と対極をなす世界があった。エチオピアのコンソ村に住んだ体験をもとに描き出した日本の非常識とは、「山の下に住む」、「ビールは嗜好品」、「プライバシーの尊重」の3つだった。それを覆すコンソ社会は酒と土器の経済が均衡を保つ、もう一つの近代の可能性を示している。そこには人類が追い求めてきた「平等社会」という見果てぬ夢が今も眠っている。驚きのエピソードを基に語る筆者の透徹した哲学に耳を傾けよう。
篠原 徹(シノハラ トオル)
1945年中国長春市生まれ。民俗学者。京都大学理学部植物学科、同大学文学部史学科卒業。専攻は民俗学、生態人類学。国立歴史民俗博物館教授を経て、2019年3月まで滋賀県立琵琶湖博物館館長。従来の民俗学にはなかった漁や農に生きる人々の「技能」や自然に対する知識の総体である「自然知」に目を向ける(「人と自然の関係をめぐる民俗学的研究」)。著書に『自然と民俗―心意のなかの動植物』(日本エディタースクール出版部、1990年)、『海と山の民俗自然誌』(吉川弘文館、1995年)、『アフリカでケチを考えた―エチオピア・コンソの人びとと暮らし』(筑摩書房、1998 年)、『講座・生態人類学7 エスノ・サイエンス』(共編、京都大学学術出版会、2002年)、『自然とつきあう』(小峰書店、2002年)、『自然を生きる技術―暮らしの民俗自然誌』(吉川弘文館、2005年)、『自然を詠む―俳句と民俗自然誌』(飯塚書店、2010年)、『酒薫旅情』(社会評論社、2014年)など。
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
はじめに
第1章 山の上に住む、ほろ酔いの人びと
1 コンソに出会う
2 山の頂上にある超過密空間
3 水汲み値段の上がり方
4 狙われたガラス瓶
第2章 畑の中の墓標
1 農耕民、コンソ
2 祖先と神あるいはハウラとワーガ
3 ブッカと老人たち
第3章 不毛の大地を耕し段々畑を作る
1 斜面に段々畑を作る
2 農耕と家畜
3 生活と労働
4 コンソの農耕の特色
第4章 屋根の上の土器
1 サウガメ村集落図
2 問題の所在 屋根の上の土器
3 サウガメの集落構造と社会構造
4 社会を映す土器
5 社会構造と土器
第5章 土器と市場の生態学
1 はじめに
2 土器作りハウダと農民エダンダ
3 土器作りの生態学的問題
4 ハウダの土器作りとエダンダの使用法
5 ハウダの土器の供給量とエダンダの土器の需要量
6 土器需給のバランス
第6章 土器と織物の村 ――分業は不平等社会への橋渡しとなるか
1 はじめに
2 不平等社会起源論
3 土器と織物の分業論
4 土器作りの並立化
5 機織りの内部化
6 不平等社会は余剰を蓄積するか
7 商品としての土器と市場の機能
8 おわりに 美しい村と吝嗇
おわりに
初出情報
あとがき
コラム
コンソの食事
クーファと牛糞
コンソと弥生時代
索引