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 『分析論後書』の統一的解釈の試みアリストテレスの知識論

九州大学人文学叢書16
アリストテレスの知識論 『分析論後書』の統一的解釈の試み

A5判 266ページ 上製
定価:4,500円+税
ISBN978-4-7985-0278-6 C3310
奥付の初版発行年月:2020年04月 / 発売日:2020年04月中旬

内容紹介

古代ギリシアの哲学者アリストテレスの著作集には、「オルガノン(学問の道具)」と呼ばれる著作群が存在する。その1冊である『分析論後書』は、古来、アリストテレス哲学の方法論を提示する著作であるとみなされてきた。しかし、この書で展開される方法論については、『自然学』や『形而上学』を代表とする彼の他の著作において明示的に使用されていないという問題点がしばしば指摘される。この批判が正しいものであった場合、アリストテレス哲学における『分析論後書』の布置が見失われてしまうのではないか。

本書は、『分析論後書』がアリストテレスの知識論を提示する著作であると主張する。この知識論は、彼の理想とする、学問を行う者が目指すべき必然的な知識についての理論である。このような知識を獲得するための方法論について、論証と探究という二つの方法が相補的に機能しなければならないという見解をアリストテレスが持っていた、と本書では解釈する。この方法論は学問を遂行する者が従うべき規範のようなものであるがゆえに、アリストテレスの他の著作にはっきりと登場しないのである。さらに、この知識論と方法論の背景にあるものとして、彼の意味論や第一原理の問題、そして『分析論後書』の想定する読者についても考察を行う。

著者プロフィール

酒井 健太朗(サカイ ケンタロウ)

2010年、宮崎大学教育文化学部地域文化課程卒業。
2017年、九州大学大学院人文科学府人文基礎専攻博士後期課程単位修得退学。
博士(文学、九州大学)。
九州大学大学院人文科学研究院助教を経て、現在、環太平洋大学次世代教育学部専任講師。
専門は古代ギリシア哲学。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 論

 問題の所在
 ἐπιστήμη という視座
 『後書』の構造と本書が重視するテクスト
 本書の目的と考察のためのアプローチ
 「質料形相論」の不在
 本書の構成

   第Ⅰ部 アリストテレスの方法論

第1章 『分析論』における「分析」の意味

 1.1 分析と総合
 1.2 幾何学的分析
 1.3 推論作成の方法と分析
 1.4 分析と探究
 1.5 論証と探究の相補性

   第Ⅱ部 アリストテレスの論証理論

第2章 必然性・自体性・普遍性   『後書』第1巻第4章―第6章

 2.1 必然性の要請
 2.2 自体性と定義
 2.3 緩やかな自体性
 2.4 必然性を支えるもの
 2.5 釣り合いの取れた普遍

第3章 基礎措定と定義

 3.1 基礎措定と定義についてのテクスト   『後書』第1巻第2章72a18-24
 3.2 「基礎に置かれる類」の措定
 3.3 意味了解としての定義
 3.4 基礎措定と定義の相補性

第4章 類と自体的属性

 4.1 『後書』第2巻第13章96b15-25と Ross-Pacius 解釈
 4.2 Goldin 解釈の紹介と検討
 4.3 Charles による算術の例の解釈
 4.4 諸学の独立性
 4.5 「自体的属性」とは何か

   第Ⅲ部 アリストテレスの探究論

第5章 「名目的定義」の問題

 5.1 『後書』第2巻第10章についての先行研究の紹介
 5.2 『後書』第2巻第10章の3種類の定義についての解釈
 5.3 「名目的定義」の問題
 5.4 「何であるか」と部分的定義

第6章 『後書』における「意味表示」と「ある」の問題

 6.1 Charles の「三段階説(TSV)」とその理論的背景
 6.2 意味表示の両義性
 6.3 意味表示と定義
 6.4 ὅτι ἔστι の真としての用法

第7章 アリストテレスの探究プログラム

 7.1 問題の所在と先行研究の概観
 7.2 「事実」と「あるかどうか」の区別
 7.3 先後性テーゼの担保
 7.4 中項問題の解決
 7.5 探究と論証の関係

   第Ⅳ部 論証と探究の背景にあるもの

第8章 意味と思考

 8.1 『命題論』第1章16a3-9 と伝統的解釈
 8.2 虚構的対象についてのアポリアと Charles による解決法
 8.3 言語・意味・思考
 8.4 アリストテレスの楽観的真理観

第9章 第一原理の布置    経験と知性

 9.1 「高次の学的学び」解釈
 9.2 「経験のドクサ理論(DTE)」解釈
 9.3 経験の連言的名目的定義としての解釈
 9.4 原理を原理として使用する
 9.5 経験と知性の間

第10章 『後書』は誰が読むべき著作か

 10.1 講義の聴講者
 10.2 『後書』の聴講者
 10.3 知識と方法   『後書』の有用性と限界点

結 論

 あとがき
 初出一覧
 参考文献
 索 引


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