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アフォーダンス理論で世界と出会う保育実践へのエコロジカル・アプローチ

保育実践へのエコロジカル・アプローチ アフォーダンス理論で世界と出会う

A5判 上製
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7985-0256-4 C3037
奥付の初版発行年月:2019年04月 / 発売日:2019年04月中旬

内容紹介

日々の保育のなかで子どもたちが出会っている「環境」を理解するにはどのようなアプローチが必要なのか。本書は、筆者自身が保育者として経験した事例を、エドワード・リードの生態学的経験科学の立場から記述・考察することで、理論と実践を往還する新たな保育環境論を構築する。その軸となるのが、「出会われていない環境」の概念である。保育者と子どもを取り巻く環境は、未だ出会われざる側面を隠しつつそこにある。「ありふれた日常」がもつ豊かな保育の可能性を掘り起こす、「エコロジカル・アプローチ」提唱の書。

著者プロフィール

山本 一成(ヤマモト イッセイ)

九州大学大学院人間環境学府を修了後、京都造形芸術大学こども芸術大学にて
芸術教育士として勤務し、保育実践の経験を積む。退職後、京都大学大学院
教育学研究科にて博士(教育学)を取得。現在、滋賀大学教育学部講師。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 はじめに
 初出一覧
 凡  例

序 章 保育実践へのエコロジカル・アプローチに向けて

 1.本研究の問題意識
 2.本研究の構成

  第?部 生きられた環境の保育実践研究の必要性

第1章 環境概念についての理論的諸問題
      「生きられた環境」の記述へ向けて

 1.ダーウィンの進化論  世界観の変容と有機体─環境論の誕生
 2.ユクスキュルの環境論  動物が生きる環境への問い
 3.シェーラーの人間論  人間の世界の固有性への問い
 4.デューイの経験論  有機体─環境のトランザクションとしての経験と成長
 5.教育的状況において生きられた環境を記述する方法

第2章 保育環境研究とその課題
      保育環境研究のメタ理論の必要性

 1.保育環境研究とその課題
 2.体験の保育学とその課題

第3章 現象学的保育研究の功績と課題
      他なるものの意味作用の背景化

 1.フッサールの現象学的方法
 2.現象学的保育研究における理論的課題
 3.保育環境の実在論に基づく生きられた経験の科学へ

  第?部 エコロジカル・アプローチに基づく生きられた環境の保育実践研究論

第4章 記述される経験の側面性と記述の相補性
      プラグマティズムを手がかりにした保育実践研究論

 1.経験を記述する保育実践研究─表情的記述と機能的記述
 2.記述される経験の側面性
 3.プラグマティズムから保育実践研究を捉えなおす
 4.保育実践研究の地平  経験の多様性の尊重へ向けて

第5章 環境の「意味」と「価値」の記述と経験の成長
      エドワード・リードの生態学的経験科学

 1.エコロジカルな「意味」と「価値」を含んだ経験科学の構築
 2.多元的リアリティをもつ経験概念の再興
 3.経験の成長へ向けた探求  記述のパラドクスを超えて
 4.子どもにとっての「意味」と「価値」を探求すること

第6章 「そこにあるもの」のリアリティの探求
      「自然な実在論」から捉えなおす保育環境のアフォーダンス

 1.保育者は子どもと「共通のリアリティ」をもつことができるのか
 2.パトナムの「自然な実在論」
 3.アフォーダンスの記述を通した環境のリアリティの探求
 4.保育における「そこにあるもの」の価値

  第?部 生きられた環境の記述的保育実践研究

第7章 人的環境:「みんなにとってのヒロシ」との出会い

 1.主体性のジレンマとその克服の試み
 2.人間─環境のトランザクションの記述から教育的関わりを問いなおす
 3.保育者─環境─子どもという系の記述
 4. 「環境としての子ども」の記述
 5. 「みんなにとってのヒロシ」のリアリティと研究の課題

第8章 物的環境:「贈与される砂」との出会い

 1.環境を通した保育と環境との出会いの創発性
 2. 「ありふれたもの」の充たされざる意味
 3.潜在する環境の「意味」と「価値」との出会い
 4.保育環境に潜在する「意味」と「価値」に開かれること

第9章 自然や社会の事象:「気づかれていない命」との出会い

 1.保育者と子どもはどのように自然と出会うか
 2.種との出会い:「くりかえす命」のリアリティ
 3.野菜との出会い:「食べられる命」のリアリティ
 4.馬との出会い:「表現する命」のリアリティ
 5. 「気づかれていない命」と自然体験
 6.エコロジカル・アプローチの射程と限界

終 章 生活のなかで日常を超えるエコロジカル・アプローチ
      保育における「出会われていない環境」の探求と自己変容

 1.日常を超えることの教育的意味
 2.環境との出会いの記述がメディアとなるとき
 3. 「出会わせようとする」ことの陥穽
 4.保育環境への姿勢
 5.私自身にとっての保育環境のリアリティ

 文献一覧
 あとがき
 索  引


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