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自然・文化・社会の融合体としての島々島嶼地域の新たな展望

国際沖縄研究所ライブラリ
島嶼地域の新たな展望 自然・文化・社会の融合体としての島々

A5判 402ページ 上製
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-7985-0130-7 C3036
奥付の初版発行年月:2014年04月 / 発売日:2014年04月下旬

内容紹介

沖縄や太平洋島嶼地域に代表される小島嶼地域は,大国のスタンダードによるグローバリゼーションの中で常に世界の「周縁」に置かれてきた。しかし今,島々の個性と多様性が再評価され始めており,これらを通して島嶼地域の存在感を示すことによって「中心」へと躍り出ることのできる時代へと移行しつつある。本書では,沖縄や太平洋島嶼地域が抱える諸問題を解決し,未来の展望を切り拓くための具体的な方策を提言すべく,様々な分野の専門家が多角的にアプローチすることによって「新しい島嶼学」の構築を試みる。
琉球大学国際沖縄研究所による研究プロジェクト「新しい島嶼学の創造 日本と東アジア・オセアニア圏を結ぶ基点としての琉球弧」の前半の成果をまとめた一冊。

著者プロフィール

藤田陽子(フジタヨウコ)

現職:琉球大学国際沖縄研究所教授
専門:環境経済学
主要業績:
藤田陽子(2011)「太平洋島嶼国における自然環境保全とその利用に関する現状と課題―パラオ共和国を事例として」前門晃・梅村哲夫・藤田陽子・廣瀬孝 編著『太平洋の島々に学ぶミクロネシアの環境・資源・開発』彩流社,第3章.
土屋誠・藤田陽子(2009)『サンゴ礁のちむやみ 生態系サービスは維持されるか』東海大学出版会.

渡久地 健(トグチケン)

現職:琉球大学法文学部人間科学科准教授
専門:地理学
主要業績:
早石周平・渡久地健 編(2010)『海と山の恵み―沖縄島のくらし 2』ボーダーインク.
渡久地健・目崎茂和(2013)「正保琉球国絵図に描写された奄美・沖縄のサンゴ礁と港」International Journal of Okinawan Studies, Vol.3, no.2.

かりまたしげひさ(カリマタシゲヒサ)

現職:琉球大学法文学部国際言語文化学科教授
専門:琉球語学
主要業績:
かりまたしげひさ(2009)「琉球語音韻変化の研究」言語学研究会 編『ことばの科学』第12号.
かりまたしげひさ(2011)「琉球方言の焦点化助辞と文の通達的なタイプ」『日本語の研究』第7巻4号.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 「国際沖縄研究所ライブラリ」刊行にあたって

 まえがき

序章 「新しい」島嶼学  過去を振り返り,未来を見据える  

  第1節 はじめに
  第2節 夢以外に何があるのか
  第3節 島嶼の利益を前面に
  第4節 数多くの取り組み
  第5節 島嶼学とは何か?
  第6節 「新しい島嶼学」とは?
  第7節 島の中心性
  第8節 過去はプロローグである

    第1部 環境・文化・社会の融合体としての島嶼

第1章 島嶼社会の可能性と生物・文化多様性

  第1節 はじめに
  第2節 島の「豊かさ」と「貧しさ」
  第3節 多様性とはなにか
  第4節 日本列島のなかの離島
  第5節 島嶼の未来
  第6節 本当の「豊かさ」と離島

第2章 ブーゲンヴィル島(パプアニューギニア)の言語文化多様性

  第1節 はじめに
  第2節 ブーゲンヴィル:西欧世界との接触から今日まで
  第3節 「村の地域語学校」(Viles Tokples Skuls)
  第4節 内戦後の学校教育の状況
  第5節 ブーゲンヴィルの言語文化多様性の未来に向けて
  第6節 沖縄とブーゲンヴィル

第3章 島おこしと観光  「観光地」と「生活空間」の両立は可能か  

  第1節 「島」という夢
  第2節 注目を浴びる島:屋久島
  第3節 自然保護を重視している島々
  第4節 瀬戸内海の島(1):観光空間の創出
  第5節 瀬戸内海の島(2):交流する島
  第6節 結論

第4章 ハワイにおける再生可能エネルギーの政策展開

  第1節 はじめに
  第2節 ハワイにおけるエネルギー事情―その特徴と課題
  第3節 ハワイにおけるクリーンエネルギー普及の目標
  第4節 再生可能エネルギー補助の経済学
  第5節 クリーンエネルギー目標達成に向けた政策
  第6節 今後のエネルギー・島嶼研究に関する示唆

第5章 太平洋島嶼の漁村における海洋管理責任と女性の役割  原点からの再考  

  第1節 はじめに
  第2節 研究の背景
  第3節 太平洋島嶼が抱える漁業の主要な問題
  第4節 乱獲と資源管理
  第5節 管理行動に対する倫理的な留意事項
  第6節 海洋教育と学習環境
  第7節 太平洋の島々の子どもたちの学習環境
  第8節 変化をもたらす主体としての女性たち
  第9節 ジェンダー問題の解決にむけて
  第10節 結論

第6章 太平洋島嶼における地域主体型の漁業管理とその意義

  第1節 はじめに
  第2節 沿岸漁業の現状
  第3節 持続可能性に対する脅威
  第4節 地域主体型資源管理の合理性
  第5節 地域主体型の漁業管理
  第6節 取り組むべき課題
  第7節 進むべき道

第7章 パラオにおける自然共生型地域計画

  第1節 はじめに
  第2節 地域分析の方法
  第3節 自然と共生する暮らしの原型
  第4節 近代の発展の光と影
  第5節 自然共生型地域計画の展開
  第6節 おわりに

    第2部 琉球・沖縄からの発信

第8章 戦後沖縄における食事・栄養と食環境の変遷

  第1節 はじめに
  第2節 栄養転換とは?
  第3節 沖縄における栄養転換を考える意義とは?
  第4節 米国統治下における沖縄の栄養転換:脂肪を中心に
  第5節 日本復帰後の沖縄の栄養転換:食塩と外食環境の変遷
  第6節 今後の展望:「チャンプルースタディ」による試み
  第7節 おわりに

第9章 沖縄におけるソーシャル・キャピタルと健康

  第1節 ソーシャル・キャピタルと健康
  第2節 沖縄のコミュニティにみるソーシャル・キャピタルの関連資源
  第3節 沖縄における「健康の社会的決定要因」(social determinants of health)

第10章 離島における教育の情報化と広域連携の効果

  第1節 はじめに
  第2節 我が国の情報化と教育の課題
  第3節 地域情報化の新しい方向性
  第4節 地域とクラウドサービス
  第5節 地域ICT利活用における課題
  第6節 教育におけるクラウド活用
  第7節 沖縄県宮古島市の教育情報化
  第8節 おわりに

第11章 島嶼地域における環境と社会インフラ

  第1節 環境と社会インフラの意味
  第2節 島嶼地域の社会インフラ
  第3節 島嶼地域に期待される環境像

第12章 消滅危機言語の教育可能性を考える  多様な琉球諸語は継承できるか  

  第1節 はじめに
  第2節 琉球諸語の位置づけ
  第3節 琉球諸語は多様で個性的な方言からなる
  第4節 少数者の言語の変容と消滅の危機
  第5節 消えゆく伝統文化と方言語彙
  第6節 画一化
  第7節 マイノリティの中のマイノリティ
  第8節 方言教育の可能性
  第9節 「方言のことを教える」
  第10節 多様な方言の教育は可能か
  第11節 おわりに

第13章 奄美・沖縄のサンゴ礁漁撈文化  漁場知識を中心に  

  第1節 島々を縁どるサンゴ礁の重要性
  第2節 有形・無形のサンゴ礁漁撈文化
  第3節 漁場知識としてのサンゴ礁地名
  第4節 サンゴ礁漁撈文化の継承にむけて

第14章 沖縄から島嶼地域の海岸防災を考える

  第1節 サンゴ礁と海岸地形が織りなす白砂の浜
  第2節 サンゴ礁は天然の防波堤
  第3節 サンゴ礁と津波
  第4節 沖縄における海岸防災の知見を他の島嶼地域の海岸防災に活かす

第15章 離島の地理的特性が地方団体の経営効率性に与える影響

  第1節 はじめに
  第2節 総合的な効率性の測定と離島の有無
  第3節 離島の地理的特性が技術効率性に与える影響
  第4節 むすび

第16章 沖縄および太平洋島嶼の水利用と水源管理

  第1節 はじめに
  第2節 沖縄島の水資源と水利用
  第3節 宮古島の水と地下ダム
  第4節 太平洋島嶼地域の水資源と水利用の事例
  第5節 おわりに―島嶼地域の水問題の解決に向けて

終章 自然・文化・社会の融合体としての島嶼地域と「新しい島嶼学」の展望

  第1節 はじめに
  第2節 島嶼における劣位性と優位性
  第3節 沖縄の自然環境保全と適正活用
  第4節 島嶼におけるキャリング・キャパシティの捉え方
  第5節 各島の特性を踏まえた島嶼社会構築の必要性
  第6節 むすび―「新しい島嶼学」の構築と人材育成の必要性

 執筆者・訳者紹介

 索引

関連リンク

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