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エロ・グロ、珍書屋、教養主義地下出版のメディア史

地下出版のメディア史 エロ・グロ、珍書屋、教養主義

A5判 496ページ 上製
価格:4,950円 (消費税:450円)
ISBN978-4-7664-2803-2 C3036
奥付の初版発行年月:2022年03月 / 発売日:2022年03月下旬

内容紹介

近代日本の誇る教養主義の「裏通り」を一望する!

軟派出版の世界で、道楽知識人たちは国家権力と戯れ、一大文化空間を築いた――
「低俗」出版文化の歴史と「書物」「エロ」への欲望を可視化する意欲作

近代日本の出版文化は、岩波書店と講談社に代表される「知識人/大衆」という対比構造によって、しばしば教養主義の観点から論じられてきた。しかし、読書が大衆化した時代に、この図式に収まりきらない非正統的で「知的」な地下出版空間が存在した。
本書では、これまで閑却されてきた非公刊の軟派出版(性風俗、猟奇、犯罪を取り扱った刊行物)とその版元に注目し、教養主義の言説空間との関係性から捉え返すことで、地下出版界をメディア史的に体系化する。
「好色出版の帝王」梅原北明、「書痴」斎藤昌三、「軟派出版界の元老株」伊藤竹酔、「毒舌和尚」今東光など、多くの出版人の足跡を追いながら、同時代の社会運動や芸術運動とのかかわりのなかで広がった「知のネットワーク」を明らかにする。

◆口絵4頁と「地下出版界」関連年表を収録

著者プロフィール

大尾 侑子(オオビ ユウコ)

1989年東京都生まれ。桃山学院大学社会学部准教授。2014年、東京大学大学院学際情報学府博士後期課程満期退学、博士(社会情報学)。
主要業績に、「デジタル・ファンダム研究の射程──非物質的労働と時間感覚にみる「フルタイム・ファンダム」」(『ポストメディア・セオリーズ――メディア研究の新展開』ミネルヴァ書房、2021年)、「「白ポスト」という文化装置──兵庫県尼崎市における有害環境浄化活動のフィールドワーク」(『新社会学研究』5号、新曜社、2021年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 教養主義の「裏通り」
 1 知的上昇と、「エロ・グロ」の交差点
 2 先行研究と本書の立場
 3 用語の定義──「地下出版界」を捉えるためのキーワード
 4 分析方法
 5 本書の構成

 第一部 地下出版界の前史

第一章  〈社会運動〉としての自費出版同盟――毒舌和尚・今東光と雑誌『文党』の挑戦
 1 軟派出版前史──『文党』の創刊
 2 文壇のオルタナティヴを目指す
 3 街頭でのパフォーマンスと超党派性
 4 「自費出版同盟」構想の内実
 5 構想の失敗と、軟派出版への新たな兆し

第二章 文藝市場社の「誕生」――烏山朝夢から梅原北明へ
 1 梅原北明という演出者
 2 「赤色」と「桃色」を往還する 
 3 朝香屋書店から文藝市場社へ

第三章  「直筆原稿」のメディア論――文藝市場社の設立と直筆原稿叩き売り
 1 梅原北明と雑誌『文藝市場』の誕生
 2 雑誌『文藝市場』の創刊
 3 〈破棄される原稿〉への想像力
 4 アヴァンギャルド芸術と労働争議のなかで
 5 軟派出版界への足掛かり

 第二部 地下出版界の成立過程

第四章 〈変態〉な教養/教養としての〈変態〉――逆立ちした教養主義
 1 〈変態〉という新規財貨
 2 カタログ化される〈変態〉
 3 「趣味的研究」の系譜と趣味家のエートス
 4 逆立ちした教養主義
 5 水平的な連帯の愉しさ──「珍妙変態行楽」の開催
 6 「反-教化メディア」の教養観

第五章 愛書趣味とオブジェとしての書物――軟派出版界と限定本の快楽
 1 愛書趣味の涵養
 2 伊藤竹酔と軟派出版界
 3 円本と大衆的教養の時代
 4 艶本叢書の登場と予約全集/円本との差異化
 5 「あるべき書物像」の体現
 6 パラテクストを通じた愛書趣味の涵養
 
第六章 〈談奇〉の表象と東アジア――理想郷イメージとしての上海
 1 東アジアに向かう視線
 2 「上海」へのまなざし
 3 「国際的な一歩」としての上海移転
 4 〈談奇〉のネットワークと「近代」への応答
 5 「東アジア」に広がる地下出版界


 第三部 地下出版界の成熟と瓦解

第七章 「地下出版」の最期――大衆化するエロ・グロ・ナンセンスと珍書屋の受難
 1 広がりゆく「エロ・グロ・ナンセンス」
 2 軟派出版界に吹く“受難の嵐”
 3 「高級エロ」による「通俗エロ出版」批判
 4 軟派出版史の構築と「正統」化の実践
 5 「地下出版界」の成熟と「場」の瓦解

第八章 「裏道の文化」の行方――戦後に残された軟派出版界の残滓
 1 戦時下の「梅原北明」を辿る
 2 カストリ雑誌に現れた「斯界の権威」
 3 〈アブノーマルの共同体〉へ
 4 一九六〇~一九七〇年代、「アングラ」文化に見る足跡

終章 「攪乱」する思想としての地下出版
 1 メディア文化圏としての「高級エロ」出版
 2 軟派出版史を描き出す──メディア史研究への視座
 3 「趣味的研究」のネットワーク──社会学領野への視座
 4 本書の可能性と限界──地下出版界は、「知的共同体」たりえた
 か?
 5 「教養主義の裏通り」の隘路、受け継がれる「好色の魂」


付録 昭和「地下出版界」関連年表――梅原北明とその周辺
あとがき
参考文献一覧
図版出典一覧
人名索引


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