アジア都市の成長戦略 ――「国の経済発展」の概念を変えるダイナミズム
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-7664-2524-6 C3033
奥付の初版発行年月:2018年06月 / 発売日:2018年06月中旬
【受賞】
2018年度第六回【岡倉天心記念賞】受賞!
「都市」の競争が「国の発展」を牽引する
いまや世界の大都市圏トップ10のうち8つまでをアジアの大都市が占めるようになった。本書は都市発展の基本である「農村から都市への人口流入」「段階的工業化」「経済特区(SEZ)効果」に加え、後発国の不利を逆に後発者利得に転化するフロッグリープ成長の現実や、ITスタートアップ企業がグローバル企業に飛躍する深圳の都市エコシステムなどを考察する。“都市地経学(ジオ・アーバノミクス)”の視点からアジアを捉え、アジアのこれからを読むユニークな都市経済論。
・ 経済成長・発展は、これまで一国単位の成果として把握・認識されて
きたが、本書は発展のコア(中心)がもはや国ではなく都市レベルと
なってきているという事実を踏まえ、それを新しいメルクマール(指
標)として提示する、画期的な一冊。アジアをこの「都市」というア
ングルから捉え分析することで、アジア論に新しい一石を投じる。
・ 今や世界の大都市圏のトップ10のうち8つまでをアジア地域が占めるよ
うになった。
21世紀は「アジアの世紀」といわれるが、アジアはどれほど強く成長し
ているのだろうか。
バーナンキ・ショックのあと、しばらく成長が足踏みしていたアジア地
域だが、昨今では成長環境が厳しくなっているヨーロッパ、南米、アフ
リカと比較して成長力が回復してきており、日本も再び対アジア・ビジ
ネスに乗り出そうと動き始めている。
いま、世界の中で最も前途が明るいのは、やはりアジアである。
・ 本書はアジア各国の首都のみならず、主要都市が軒並み拡張を続け、
「国単位」のメルクマールに代わる「都市(地域)単位」の成長・発展
モデルがアジアで育成されたことを解説する興味深い一冊。
・ 本書では、都市発展の基本パターンである
◆農村から都市への人口流入、
◆段階的工業化、
◆郊外へのスプロール(地域拡張)化――などに加え、
◆後発国だった不利から逆に「後発者利得」に便乗して発展段階をス
キップし、一気にステージを上げる“フロッグリープ(蛙跳び)”成長の
実現、
◆先進国企業の対アジア投資が「世界の工場」化の促進のみならず
内需型工業とサービス産業の成長を促したメカニズム、
◆デジタル時代の新しいビジネス拠点として、ITベンチャーが勃興
する「メガシティ型」経済発展モデルを提示する、など、
著者独自の視点をふんだんに踏まえる。
・ 上記のような動きは各都市が類似した行動をとるため、都市間競争が激
化し、新しい成長分野の開拓、都市の再開発やインフラ整備など、
経済にダイナミズムをもたらす効果が生まれる。
これらの状況を掘り下げて解説するとともに、アジアの今後の発展の方
向も示していく。
・ 本書で想定する「アジア」の範囲は、中国、ASEAN、南アジア(イン
ド、バングラデシュ、パキスタン)であり、それ以西の中近東は含まな
い。
また、日韓は各都市との比較対象としてのみ扱う。
目次
第1章 アジアの大都市の現況
1 アジアのメガシティの形成
2 アジアの都市力
3 都市と農村――人口移動のモメンタム
第2章 人口移動と大都市圏の形成
1 人口移動と経済発展
2 タイ、ベトナムの人口移動
3 中国の人口移動
4 国境を越えた人口移動
第3章 中国にみるアジア大都市の成長メカニズム
1 アジアの都市の成長モデル分析
2 内需牽引型成長への転換
3 イノベーション型成長の模索
4 都市を支える産業、産業を支える都市
第4章 インフラ整備が促すアジア都市経済の高度化
1 アジア名物〝交通渋滞〟
2 都市の生活インフラ
3 成長を左右するインフラ投資
第5章 都市と産業立地ネットワーク――成長領域の拡大
1 「経済開発区」の効果
2 アジアの都市間競争
第6章 アジアの都市とエネルギー・環境
1 環境と都市生活
2 都市生活を脅かす環境悪化の弊害
3 アジア都市のエネルギー戦略
第7章 「都市力」がアジアを牽引する
1 深圳――「新・深圳モデル」に注目せよ
2 ホーチミン――「激動の20世紀」を耐えた民族力
3 シンガポール――〝李王朝〟の統治と奇跡の半世紀
4 ヤンゴン――「複雑系」が抱える潜在力と矛盾
5 デリー――「アジアの中心」を目指して
参考文献