演劇場裏の詩人 森鴎外 若き日の演劇・劇場論を読む
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-7664-1938-2 C3074
奥付の初版発行年月:2012年04月 / 発売日:2012年04月下旬
美を追究した「文豪」の演劇論を読む――。
1884~88年のドイツ留学中、若き森鴎外は、ライプツィヒ、ドレースデン、ベルリン、ミュンヒェンといった都市の劇場に足しげく通い、観劇体験を重ねた。「劇場は唯準に高尚なる官能にのみ委ねたる場」とゲーテの言葉を訳出・紹介し、舞台上演を人の感性に働きかける「詩情の発揮の場」と高く評価していたのである。
帰国後発表された演劇をめぐる鴎外の文章は、当時のヨーロッパの新聞・雑誌・著作と対話を交わした結果であり、独自の視座から日本の演劇状況に改良を求める野心的なものであった。
本書は、日独のオリジナル資料を文献学的アプローチのうえ詳細に分析し、日本の演劇の近代化をめざした若き文豪の演劇・劇場論を再構成する画期的な試みである。
目次
序
第一章 一八八〇年代のドイツと鴎外の観劇体験――劇場と制度
一 『独逸日記』を読む――「営業の自由」と劇場の展開
二 『舞姫』のなかのベルリン・ヴィクトリア劇場
第二章 都市と劇場――安全な劇場をめぐる言説
一 鴎外の劇場史――「欧州劇場の事」
二 「劇場の雛型」を読む
三 「劇場の大さ」を読む
第三章 演劇の近代――欧化主義と国粋主義の対立を超えて
一 日本で最初のドイツ語雑誌『東漸新誌』
二 「簡樸なる劇場」のルーツ
三 ミュンヒェン演劇改革
四 額縁舞台の克服
五 文学者と劇場――「演劇場裏の詩人」
第四章 言文をめぐる論争と演劇翻訳――逍遥と鴎外
一 逍遥の「読法を興さんとする趣意」――近代的朗読法の確立
二 鴎外の「逍遙子の朗読説」――芸術としてのデクラメーション
三 逍遙と鴎外における言と文
四 脚本形態の伝統の継承
五 逍遥の演劇翻訳――院本体の継承
六 鴎外の演劇翻訳――「高尚な妙曲」
第五章 演劇とオペラ――「美」を語る地平へ
一 諸芸能に貫通する「一条の道理」
二 言葉と音楽――「楽劇材料」
三 ヴァーグナー体験 ――「西楽と幸田氏と」
四 鴎外文庫所蔵の『オルフォイス』ドイツ語台本
補章 鴎外と慶應義塾
結語