大学出版部協会

 

アジアの中の日本現代における人の国際移動

慶應義塾大学東アジア研究所叢書
現代における人の国際移動 アジアの中の日本

A5判 450ページ 上製
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-7664-1929-0 C3336
奥付の初版発行年月:2013年03月 / 発売日:2013年03月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
この大学出版部の本一覧
在庫あり

内容紹介

<TPP参加の最重要イシューは『人の国際移動』!>

▼2013年2月、安倍首相はTPP参加へと大きく舵を切った。国内では、産業保護政策との関連でとかく「モノ」の移動が注目されがちだが、日本社会に最も大きなインパクトを与えるのは、「人の国際移動」である。
▼経済面を見ると、TPP参加は、一方で生産年齢人口の減少に伴う労働力輸入、他方で日本人労働者の雇用確保というジレンマに加え、アジア諸国間での「トップ人材争奪戦」が本格化し、それが各国の国際競争力を左右する時代が到来することを意味する。
▼しかし、政治面・社会面を見ると、話はそれだけにとどまらない。流入した多文化・多国籍からなる人々と、どのように共存し、より豊かな社会を築いていくべきなのか。政府による中長期的ビジョンの提示と国民の広範な合意形成が不可欠なのはもちろんだが、地方自治体にとっては具体的かつ眼前の 問題でもある。
▼これに対し、本書は、国内外の詳細なフィールドワークの積み重ねから、具体的政策課題を抽出する。「多文化共生社会」は単なる耳触りのよい桃源郷思想ではなく、政治・経済・社会分野を横断する21世紀日本の喫緊の課題であることが明らかにされる。

著者プロフィール

吉原 和男(ヨシハラ カズオ)

慶應義塾大学文学部教授。1949年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専門分野:華僑史、歴史人類学。主要著作:『拡大する中国世界と文化創造―アジア太平洋の底流』(共編著、弘文堂、2002年)、ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

【編者】
吉原 和男(よしはら かずお)
慶應義塾大学文学部教授。

【執筆者】(掲載順)
関根 正美(せきね まさみ)
慶應義塾大学法学部教授。1951年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専門分野:現代オーストラリア論、国際社会学。主要著作:『多文化主義社会の到来』(朝日新聞社、2000年)、ほか。

浅川 晃広(あさかわ あきひろ)
名古屋大学大学院国際開発研究科講師。1974年生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位修得退学、博士(学術)。専門分野:国際人口移動論。主要著作:『近代日本と帰化制度』(溪水社、2007年)、ほか。

明石 純一(あかし じゅんいち)
筑波大学人文社会系助教。1972年生まれ。筑波大学大学院国際政治経済学研究科博士課程修了、博士(国際政治経済学)。専門分野:移民研究、グローバル・ガバナンス論。主要著作:『入国管理政策―「1990年体制」の成立と展開』(ナカニシヤ出版、2010年)、ほか。

吉原 直樹(よしはら なおき)
大妻女子大学社会情報学部教授、東北大学名誉教授。1948年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学、社会学博士。専門分野:都市社会学、地域社会学。
主要著作:『モビリティと場所―21世紀都市空間の転回』(東京大学出版会、2008年)、ほか。

小林 真生(こばやし まさお)
国立民族学博物館共同研究員。1975年生まれ。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程修了。専門分野:社会学。主要著作:『日本の地域社会における対外国人意識―北海道稚内市と富山県旧新湊市を事例として』(福村出版、2012年)、ほか。

奈倉 京子(なぐら きょうこ)
静岡県立大学国際関係学部専任講師。1977年生まれ。中山大学大学院人文学院(現社会学与人類学学院)人類学系博士課程修了。専門分野:文化人類学、中国系移民研究、華南僑郷研究。主要著作:『帰国華僑―華南移民の帰還体験と文化的適応』(風響社、2012年)、ほか。

藤野 陽平(ふじの ようへい)
日本学術振興会(東京外国語大学)特別研究員。1978年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程単位取得退学、博士(社会学)。専門分野:宗教人類学。主要著作:『台湾における民衆キリスト教の人類学―社会的文脈と癒しの実践』(風響社、2013年)、ほか。

八尾 祥平(やお しょうへい)
早稲田大学アジア研究機構研究助手。1977年生まれ。首都大学東京大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門分野:社会学、移民(華僑)研究。主要著作:「1950年代から1970年代にかけての琉球華僑組織の設立過程―国府からの影響を中心に」『華僑華人研究』第8号(2011年)、ほか。

柳 蓮淑(ユ ヨンスク)
大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員、法政大学社会学部兼任講師。1962年生まれ。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程単位取得退学、博士(学術)。専門分野:エスニシティ論、ジェンダー論、韓国語圏研究。主要著作:『韓国人女性の国際移動とジェンダー―グローバル化時代を生き抜く戦略』(明石書店、2013年)、ほか。

ジョハンナ・ズルエタ(Johanna Zulueta)
アテネオ・デ・マニラ大学社会学究科・日本学研究科講師、一橋大学日本学術振興会外国人特別研究員。1978年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。専門分野:社会学、移民研究、日本・沖縄学。主要著作:“Living as Migrants in a Place That Was Once “Home”:The Nisei, the U.S. Bases, and Okinawa Society”,in Philippine Studies :Historical and Ethnographic Viewpoints, volume 60, number 3, pp. 367-390, September 2012、ほか。

橋本 直子(はしもと なおこ)
国際移住機関(IOM)駐日事務所プログラム・マネジャー。1975年生まれ。オックスフォード大学大学院難民研究所修士課程修了。専門分野:難民・強制移住学、国際難民法・人権法。主要著作:“Counter-Trafficking in Japan,”Forced Migration Review, issue 30, April 2008, Refugee Studies Centre、ほか。

人見 泰弘(ひとみ やすひろ)
名古屋学院大学外国語学部講師。1980年生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。専門分野:国際社会学。主要著作:「難民化という戦略―ベトナム系難民とビルマ系難民の比較研究」『年報社会学論集』(関東社会学会)21巻(2008年)、ほか。

倉沢 宰(くらさわ さい)
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授。1945年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程単位取得退学。専門分野:社会変動論、東南アジア地域研究、文化摩擦と共生。主要著作:『東南アジアの社会変動と教育』(共著、第一法規、1986年)、ほか。

王 雪萍(おう せつへい)
東京大学教養学部講師(専任)。1976年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了、博士(政策・メディア)。専門分野:日中関係、現代中国政治。主要著作:『改革開放後中国留学政策研究―1980-1984年赴日本国家公派留学生政策始末』(中国・世界知識出版社、2009年)、ほか。

横田 祥子(よこた さちこ)
日本学術振興会(東京外国語大学)特別研究員。1976年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。専門分野:社会人類学、家族、国際結婚、再生産労働。主要著作:「負債関係に働く力学―台湾中部の地方都市における国際ブローカー婚の互酬性」『白山人類学』vol. 14(2011年)、ほか。

魯 ゼウォン(ノ ゼウォン)
天理大学国際学部准教授。1963年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。専門分野:韓国社会学、移民研究。主要著作:『アジア社会と市民社会の形成―その課題と展望』(共著、文化書房博文社、2009年)、ほか。

李 姃姬(イ チョンヒ)
慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所研究員、桜美林大学基盤教育院兼任講師、東洋大学社会学部非常勤講師。1966年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程退学。専門分野:政治社会論。「韓国の『多文化社会』化についての一考察」『千葉商大紀要』第48巻第1号(2010年)、ほか。

石高 真吾(いしたか しんご)
大阪大学グローバルコラボレーションセンター招聘研究員、同大バンコク教育研究センター客員フェロー。1971年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程後期課程単位取得退学、博士(人間科学)。専門分野:文化人類学、タイ地域研究。主要著作:「『正統性』の揺らぎ―タイ国のナック・レン・プラー」『人間科学研究』(大阪大学大学院人間科学研究科)第4号(2002年)、ほか。

倉沢 愛子(くらさわ あいこ)
慶應義塾大学名誉教授。1946年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学、コーネル大学大学院修了、博士、Ph.D.(社会学)。専門分野:インドネシア現代史。主要著作:『戦後日本=インドネシア関係史』草思社(2011年)、ほか。

寺澤 宏美(てらざわ ひろみ)
名古屋大学・名古屋外国語大学非常勤講師。1958年生まれ。名古屋大学大学院国際開発研究科博士後期課程修了、博士(学術)。専門分野:在日日系人(主にペルー人)、社会学。
主要著作:『地球時代の多文化共生の諸相―人が繫ぐ国際関係』(共著、行路社、2009年)、ほか。

高橋 典史(たかはし のりひと)
東洋大学社会学部准教授。1979年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位修得退学、博士(社会学)。専門分野:宗教社会学。主要著作:「ハワイ日系仏教における故国日本」『宗教研究』83巻3号(2009年)、ほか。

目次

はじめに――本書刊行まで  吉原和男

序章 日本から考える「人の国際移動」 吉原和男
 一、現代日本における少子化と外国籍住民の増加を考える視点
 二、アジアの中の日本
 三、本書がめざすところ、そして「移民」という用語
 四、本書の概要

第1部 人の国際移動と日本
第1章 多文化社会の将来に向けて――ノルウェー事件と日本
    関根政美
 はじめに
 一、移民国家と非移民国家
 二、移民国家と非移民国家の収斂と分散
 三、アンネシュ・ブレイビクが理想とする日本
 四、多文化主義の成功と失敗
 おわりに

第2章 近現代日本における外国人概念の変遷――明治初期から現在まで
    浅川晃広
 はじめに――「移住」と「国籍」のズレ
 一、明治前期の「外国人」――開国から内地雑居まで
 二、戦前期における「外国人」――「内地雑居」から敗戦まで
 三、戦後における「外国人」概念の変化
 四、「移住者」としての外国人の増加
 おわりに

第3章 現代日本における入国管理政策の課題と展望  明石純一
 はじめに
 一、日本の入国管理政策――政策批判から看取できること
 二、2009年の入管法改正と近年の政策提言
 三、入国管理の機能特性――労働者の受入れと国際比較の視点から
 おわりに

第4章 モビリティ・スタディーズから「移民の社会学」へ  吉原直樹
 はじめに
 一、「移民社会学」の原風景――初期シカゴ学派と遷移地帯の物語
 二、「移民社会学」へ/から(1)――グローバルとローカルとのはざ
   まで
 三、「移民社会学」へ/から(2)――ポストコロニアルの地平
 おわりに

第2部 アジアから日本へ
第5章 地域社会を通じて見た外国人技能実習制度
    ――北海道稚内市の事例を中心に  小林真生
 はじめに
 一、制度形成の経緯および概要
 二、稚内市の技能実習生をめぐる状況
 三、外国人技能実習制度の課題
 四、課題改善に向けて
 おわりに

第6章 「中国系」住民と日本人住民との「融合的コミュニティ」構築に
    向けて

    ――京都府N団地自治会の取り組みを事例として  奈倉京子
 はじめに
 一、「X区」地域、N団地の概要と特殊性
 二、住民の特徴と住民間の関係
 三、自治体の取り組みから見る「共生」のための努力と課題
 おわりに

第7章 東アジア圏内で展開する中華系キリスト教
    ――移動と宗教という観点から  藤野陽平
 はじめに
 一、在日中華系キリスト教の概要
 二、独立系教会の東アジア展開――真耶穌教会を事例として
 おわりに

第8章 戦後における琉球華僑をめぐる記憶と忘却
    ――「石垣市唐人墓建立事業」を事例に  八尾祥平
 はじめに
 一、「正史」としての「石垣市唐人墓建立事業」
 二、琉球華僑にとっての「石垣市唐人墓建立事業」
 おわりに

第9章 「ムラの国際化」再考――山形県在住の韓国人妻の事例から
    柳 蓮淑
 はじめに
 一、日本の農村で国際結婚が増える背景
 二、なぜ日本の農村に結婚移住するのか――「文化的逃避・避難」者としての韓国人女性
 三、結婚直後の地位とジェンダー関係の再編のための交渉
 四、「戸沢流キムチ」の誕生と高麗館、韓国人妻
 おわりに

第10章 沖縄における「フィリピン・ウチナーンチュ」の「帰還」移動
     ――移動の交差する場所  ジョハンナ・ズルエタ
 はじめに
 一、沖縄という場所――ホスト社会としての沖縄
 二、越境する沖縄――フィリピンへの移動
 三、一時的なプロセスとしての「帰還」
 おわりに

第11章 新日系フィリピン人の現状――日比の比較を通して
     橋本直子
 はじめに
 一、「新日系フィリピン人」(JFC)とは
 二、JFCおよびその母親が直面している問題
 三、JFCへのアンケート調査――日比間の比較
 四、JFCへのアンケート調査――日本在住JFCの中での比較
 おわりに

第12章 在日ビルマ系難民の移住過程
     ――市民権・雇用・教育をめぐる諸問題  人見泰弘
 はじめに
 一、ビルマ系難民の移住背景
 二、調査の概要
 三、難民政策と市民権の享受
 四、「外国人労働者」としての移民労働市場への参入
 五、難民二世と学校教育
 おわりに

第13章 在日ムスリムコミュニティと東日本大震災被災者支援
     倉沢 宰(サイエド・ムルトザ)
 はじめに
 一、ソーシャル・キャピタルの視点
 二、在日ムスリム人口
 三、在日ムスリムに関する先行研究
 四、在日ムスリムコミュニティの特徴
 五、大塚モスク
 六、東日本大震災被災者支援活動
 おわりに

第3部 比較の視点から考える日本
第14章 日本への中国国費留学生の進路選択
     ――改革・開放初期の学部留学生へのインタビュー調査を通じ
       て  王雪萍
 はじめに
 一、改革・開放初期の中国政府の日本への国費学部留学生の派遣政策
 二、中国人国費学部留学生の留学終了後の進路選択
 おわりに

第15章 台湾における多文化主義の変容
     ――婚姻移民の増加と変容する「血」のメタファー
       横田祥子
 はじめに
 一、台湾の多文化主義の系譜
 二、婚姻移民への支援政策
 三、変容する「血」のメタファー
 おわりに

第16章 ニューヨーク市のコリアンタウンにおける民族関係の再構築
     ――クイーンズ区フラッシング地区を事例に  魯ゼウォン
 はじめに
 一、ニューヨーク市における移民集団人口の推移
 二、ニューヨーク市における韓人人口の推移
 三、フラッシング地区における人種別人口の推移
 四、コリアンタウンとしてのフラッシング地区
 五、コリアンタウンに定着する朝鮮族
 六、朝鮮族の民族組織の形成過程と役員の意識
 七、韓人社会から見た朝鮮族
 おわりに

第17章 韓国における多文化社会化の進行と移民政策の現状
     李 姃姬
 はじめに
 一、移民政策の転換
 二、移民の送出国から受入れ国へ
 三、韓国における「多文化社会」の現状
 四、李明博政権の移民政策
 おわりに

第18章 タイ国ラノーン県のミャンマー人移民
     ――不安とともに生きる  石高真吾
 はじめに
 エピソード:紙飛行機少年モンの話
 一、地理的・歴史的背景
 二、フィールドの位置づけ
 三、なぜ越境移民がタイへ?
 四、制度面――法律
 五、ラノーン――タイ人よりもミャンマー人の多い国境の町
 六、問題と対策
 おわりに――日本とのかかわり

第19章 オランダ領東インドにおける日本人社会の終焉  倉沢愛子
 はじめに
 一、戦争の勃発と蘭印の定住型邦人
 二、敗戦と日系二世の運命
 三、蘭印への「帰国」後の運命
 おわりに

第20章 在日ペルー人コミュニティとカトリック教会  寺澤宏美
 はじめに
 一、宗教行事「奇跡の主」
 二、名古屋市・緑ヶ丘教会における活動事例
 おわりに

第21章 外国人支援から見る現代日本の「移民と宗教」
     ――在日ブラジル人とキリスト教会を中心として  高橋典史
 はじめに
 一、日本における移民と宗教をめぐる研究状況
 二、地域社会における「移民と宗教」――静岡県浜松市を一例として
 三、各地のカトリック教会による移民支援
 おわりに

あとがき 吉原和男
索 引
執筆者紹介


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。