大学出版部協会

 

写真、その語りにくさを超えて

新記号論叢書[セミオトポス]5
写真、その語りにくさを超えて

A5判 226ページ 並製
価格:2,640円 (消費税:240円)
ISBN978-4-7664-1532-2 C3372
奥付の初版発行年月:2008年05月

内容紹介

現代写真の実践を参照し、今後の写真論を検証。
▼写真家・細江英公、石内都、美術作家・池田朗子らの作品やその表現思想を参照し、「写真」の本質や意味を探究。既存の枠組みを超えた現代の写真技法とその思想に、今後の写真論がいかに対応していくべきか、その手がかりを提示する。
▼写真家自身による写真論として、「細江英公の球体写真二元論」「石内都、自作を語る」を収録。細江英公はデビュー前後の秘話や三島由紀夫や土方巽との交流など作品の制作にまつわる話、石内都は作家活動のルーツと最新作『INNOCENCE』を中心に実際の撮影活動に関して語る。


青山勝(あおやま まさる)
1967年生まれ。大阪成蹊大学芸術学部教員。写真、映画、現代美術、マンガなど、様々な視覚文化に関わる執筆・翻訳活動や展覧会の企画を行っている。共著に宮本隆司+八角聡仁編『現代写真のリアリティ』(角川書店、2003年)等、訳書にS・ティスロン『明るい部屋の謎』(人文書院、2001年)、G・モラ『写真のキーワード』(監訳、晃洋書房、2001年)、P・ヴィリリオ『自殺へ向かう世界』(共訳、NTT出版、2003年)、S・ティスロン『タンタンとエルジェの秘密』(共訳、人文書院、2005年)などがある。

池田朗子(いけだ あきこ)
美術家。岐阜県に生まれる。京都市立芸術大学大学院美術研究科、チェルシー・カレッジ・アートアンドデザイン(ロンドン)MAコース修了。写真やビデオを使ったインスタレーション作品を中心に発表。大阪、名古屋をはじめデンマーク、スウェーデンなど、海外での個展開催、「日韓写真展:コミカル&シニカル」等、グループ展参加多数。「天保山サントリーミュージアム」や、「大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室」等で、作品の手法を紹介するワークショップ等を開催。現在、大阪在住。

石内都(いしうち みやこ)
写真家。1979年「アパートメント」で第四回木村伊兵衛賞を受賞。90年代に入って「1・9・4・7」で同い年生まれの女性の手足を撮り、皮膚へと展開する。傷跡を撮った「SCARS」シリーズ等を経て、2005年ヴェネチアビエンナーレ日本館代表として「Mother’s」を発表。二〇〇八年には個展「ひろしま—strings of time」(2008年6月28日〜広島現代美術館)、ヨーロッパ巡回展「Ishiuchi Miyako1976-2005」など。近年の写真集に『INNOCENCE』(赤々舎、2007年)、『ひろしま』(集英社、2008年4月)など。

一瀬陽子(いっせ ようこ)
1976年生まれ。大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程修了。博士(言語文化学)。専門分野は、日本文化史、古代文学。主要著書として"Who Invented the Story of Class and Location?: Beyond the Ancient History of Japan"(『文化の解読 (7)』所収、大阪大学大学院言語文化研究科、2007年)などがある。

犬伏雅一(いぬぶせ まさかず)
1950年大阪生まれ。京都大学文学部言語学科卒業、大阪大学大学院文学研究科美学専攻修了、文学修士。YMCA予備校専任講師、河合塾専任講師を経て、2001年大阪芸術大学専任。現在、大阪芸術大学芸術計画学科教授。映像理論、美学が専門。写真を中心にして映像全般について研究。編著・訳書:『新世代写真術』(編著、フィルムアート社)、A・グローネマイヤー『ワールド・シネマ・ヒストリー』(共訳、晃洋書房)、ジャン=クロード・フォザ他著『イメージ・リテラシー工場』(共訳、フィルムアート社)などがある。

奥田博子(おくだ ひろこ)
1970年生まれ。現在、南山大学外国語学部准教授。専門はコミュニケーション・スタディーズ。論文には「政党の政治コミュニケーションの訴求力」(『流体生命論』、2005年)、"Murayama's Political Challenge to Japan's Public Apology" (International and Intercultural Communication Annual XXVIII, 2005)などがある。

河田学(かわだ まなぶ)
1971年生まれ。現在、京都精華大学・京都造形芸術大学非常勤講師。専門は文学理論・記号論・表象理論。共編著書に『知のリテラシー 文化』(ナカニシヤ出版、2007年)、主な論文に「フィクション・語り手・視点——映画における「カメラ目線」の問題を手がかりに」(『精華大学紀要』34、2008年)、「虚構的言説の記号論——虚構作品における指示再考」(『記号学研究』21、2001年)など。訳書にウォルター・ケンドリック『シークレット・ミュージアム——猥褻と検閲の近代』(共訳、平凡社、2007年)などがある。

清塚邦彦(きよづか くにひこ)
1961年生まれ。山形大学人文学部教授。専門は言語哲学、哲学的記号論。主要な論文に、「信念内容と社会慣習」(『理想』654号、1994年)、「近位説と遠位説:クワインの観察文理論に対するデイヴィドソンの批判について」(『科学哲学』35巻2号、2002年)、「写真とメディア」(『東北哲学会年報』23巻、2007年)など、また訳書に、P・グライス『論理と会話』(勁草書房、1998年)、D・デイヴィドソン『主観的、間主観的、客観的』(共訳、春秋社、2007年)などがある。

小池隆太(こいけ りゅうた)
1971年生まれ。山形県立米沢女子短期大学社会情報学科准教授。専門は現代思想・文化記号論・メディア論・情報デザイン。主要論文に「Roland Barthes,L'Empire des signes におけるエクリチュールと写真の問題について」(『関西フランス語フランス文学』第6号、2000年)、「士郎正宗作品における「女性」」(『マンガ研究』Vol.6、2004年)、「ケータイのテトラッド」(『新記号論叢書2 ケータイ研究の最前線』、慶應義塾大学出版会、2005年)などがある。

小林美香(こばやし みか)
写真研究者。写真や現代美術に関連するレクチャー、シンポジウム、ワークショップ、展覧会の企画に携わるほかに、執筆・翻訳を手がける。2007年秋からACC(Asian Cultural Council)の招聘により、ニューヨークの国際写真センター(ICP)にて開催される「Heavy Light: Recent Photography and Video from Japan」展の準備に携わる。著書に『写真を〈読む〉視点』(青弓社、2005年)、訳書に『写真のキーワード 技術・表現・歴史』(昭和堂、2001年)、『MAGNUM MAGNUM』(青幻舎、2007年)などがある。

細江英公(ほそえ えいこう) Eikoh HOSOE
1933年山形県米沢市生まれ。1960年『おとこと女』、1963年『薔薇刑』で評価を確立し、1969年『鎌鼬』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。主な写真集に「おとこと女」、「薔薇刑」、「鎌鼬」、「ガウディの宇宙」、「ルナ・ロッサ」、「胡蝶の夢 舞踏家・大野一雄」、「死の灰」などがある。1998年、一連の作品により紫綬褒章を受章。2003年世界を代表する写真家七人のひとりとして英王立写真協会創立一五〇周年特別記念メダル受章。2006年、写真界の世界的業績を顕彰するルーシー賞(米)の「先見的業績部門」を日本人として初受賞。2007年、旭日小授章を受章。2008年、毎日芸術賞を受賞。清里フォトアートミュージアム館長、東京工芸大学名誉教授。

前川修(まえかわ おさむ)
1966年生まれ。神戸大学人文学研究科准教授。専門は写真論、視覚文化研究、芸術学。著書に『痕跡の光学——W・ベンヤミンの「視覚的無意識」について』(晃洋書房)、共著に『心霊写真は語る』(一柳廣孝編、青弓社)。翻訳にジル・モラ『写真のキーワード』(共訳、昭和堂出版)、ウォーカー/チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門』(晃洋書房)などがある。

吉岡洋(よしおか ひろし)
1956年生まれ。現在、京都大学大学院教授。批評誌『ダイアテキスト』1〜8巻(京都芸術センター刊、2000〜03年)編集長、「京都ビエンナーレ2003」総合ディレクター。専門は美学、現代思想。著書には『「思想」の現在形』(講談社選書メチエ、1997年)、訳書にはマーク・ポスター著『情報様式論』(共訳、岩波現代文庫、2001年)などがある。

目次

序 記号学の新たな胎動が聴こえる  菅野盾樹

I フォトグラファー・オン・フォト
自作を通して語る細江英公の球体写真二元論  細江英公
石内都・負からはじまる写真  石内都 聞き手 吉岡洋

II 「写真を見る」ということ
ウォルトンの写真論をめぐって  
 ⅰ ケンドール・ウォルトンの透明性テーゼとリアリズム的写真観  河田学
 ⅱ 演じることと見ること  清塚邦彦 
ミルマニアの視点——写真は何次元か?  池田朗子+小林美香

III 写真論のトポグラフィ
写真の語りにくさ——写真論の現在  前川修
スティーグリッツの「沈黙」  犬伏雅一
発明か発見か——写真の黎明期における言説編成の力学  青山勝
ラウンドテーブル「写真研究のトポグラフィ——写真の語り難さについて」討議報告  小池隆太

IV 記号論の諸相
日本における「ヒロシマ」と「ナガサキ」——記憶の抗争  奥田博子
「日本人論」としての記紀論と津田左右吉  一瀬陽子


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