生命と自然 ヘーゲル哲学における生命概念の諸相
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-588-15138-5 C1010
奥付の初版発行年月:2024年07月 / 発売日:2024年07月中旬
論理学・自然哲学・精神哲学からなるヘーゲルの体系において、「生命」と「自然」との関係は複雑であり、かつ複合的である。さらに「生命概念」は、内容的には、法哲学、精神哲学や宗教哲学においても重要な役割を果たしており、ヘーゲルの体系のさまざまな部分に関わっている。本書はヨーロッパと東アジアの気鋭の研究者が、ヘーゲル哲学における「生命と自然」の諸相を描きだし、その意味を解明する。
大河内 泰樹(オオコウチ タイジュ)
大河内 泰樹(オオコウチ タイジュ)
1973年生まれ。京都大学大学院文学研究科教授。2007年哲学博士(ルール大学ボッフム)。専門は、ヘーゲルを中心とするドイツ古典哲学、批判理論。著書に、『国家はなぜ存在するのか――ヘーゲル「法哲学」入門』NHK出版、2024年近刊予定、『哲学史入門Ⅱ――デカルトからカント、ヘーゲルまで』(共著)、NHK出版、2024年、Ontologie und Reflexionsbestimmungen. Zur Genealogie der Wesenslogik Hegels, Königshausen und Neumann, 2008; 編著 Hegel über Leben und Natur. Sinn und Aktualität, Königshausen und Neumann, 2024など。
久冨 峻介(クドミ シュンスケ)
久冨 峻介(クドミ シュンスケ)
京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。京都大学人文学連携研究者。哲学・思想史。„Die Zeiten des Bunds unserer Geister“: Leben als Schlüsselbegriff der Frankfurt-Homburger Konstellation, in: Taiju Okochi (Hrsg.), Hegel über Leben und Natur, Königshausen & Neumann, 2024; 「「カオス」から「秩序」へ――「最終的な真理」の場としての『精神現象学』「宗教」章」(『Scientia』、第三号、2023年)、Hegels Kunstbegriff in den Jenaer Jahren: Zur Differenzierung von Kunst und Religion (Tetsugaku, vol. 5, 2021) など。
・執筆者・訳者紹介
クラウス・フィーヴェーク(Klaus Vieweg)
1953年生まれ。フリードリヒ・シラー大学(イエーナ)哲学教授(現在は退官)。東アジア・ヘーゲル・ネットワークおよびヨーロッパ・ヘーゲル・ネットワーク「Hegels Relevanz」の共同設立者。主な研究テーマはドイツ観念論、ヘーゲル、実践哲学、懐疑主義の歴史と理論、ヘーゲルの伝記。主な業績に、Anfänge. Eine andere Geschichte der Philosophie, München 2023; Kant und der Deutsche Idealismus (Hg.) Darmstadt 2021; The Idealism of Freedom: For a Hegelian Turn in Philosophy, Boston, Leiden 2020; Hegel. Der Philosoph der Freiheit. Biographie, München 2019 (4 editions; in English: Stanford UP 2023); Das Denken der Freiheit – Hegels Grundlinien der Philosophie des Rechts, München 2012〔日本語訳は法政大学出版局より近刊予定〕.
中島 新(ナカシマ アラタ)
1988年生まれ。ボン大学哲学科博士課程。専門はシェリング自然哲学および現代実在論。論文に、「実在論的転回?――シェリング・ヘーゲル自然哲学にかんする近年の研究動向について」(『Moralia』30号、2023年)、「未来を孕むマテリエ――E・ブロッホのシェリング受容をめぐる考察」(季報『唯物論研究』163号、2023年)、共訳書にマルクス・ガブリエル著『超越論的存在論――ドイツ観念論についての試論』(人文書院、2023年)など。
クリスティアン・イリース(Christian Illies)
1963年キール生まれ。コンスタンツで生物学を学ぶ(1989年修了)。1995年にカントの倫理学で博士号(オックスフォード大学/マグダレン・カレッジ)、2002年にアーヘン工科大学で超越論的論証に関して教授資格を取得。V・ヘースレのもとでエッセン大学助教授、アイントホーフェン工科大学助教授、2006年よりデルフト工科大学教授、2008年よりバンベルク大学哲学部教授。2023年より、人間と美学研究所(バンベルク大学/コーブルク応用科学大学)共同所長。主な著書に、The Grounds of Ethical Judgement, Oxford University Press, 2003; Philosophische Anthropologie im biologischen Zeitalter, Suhrkamp, 2006; Philosophy of Architecture, Cambridge: Cambridge Architectural Press 2014 (mit Nicholas Ray) など。
権寧佑(クォン ヨンウ/Young Woo Kwon)
1974年韓国ソウル生まれ。2012年ハイデルベルク大学においてヘーゲル哲学に関する論文で博士号を取得。2022年より高麗大学哲学科准教授。主な業績に、Über den Reflexionsbegriff und die Funktion der Reflexion in der Moralität und Sittlichkeit bei Hegel, Berlin 2013; „Vom Verhältnis zwischen dem Sein und Wesen in der Hegelschen Logik“, in: Hegel-Jahrbuch Vol. 2019; „Myth of Given and the Hegelian Turn“, in: Hegel-Yeongu Vol. 47, Seoul 2020など。
大橋 良介(オオハシ リョウスケ)
1944年生まれ。シェリングとハイデガーに関する研究で1974年にミュンヘン大学で博士号を取得。1983年、ヘーゲル論理学に関する研究で教授資格(ヴュルツブルク大学)。大阪大学を退職後、ケルン大学、テュービンゲン大学、ウィーン大学、ヒルデスハイム大学などで客員教授を務める。日独文化研究所所長。京都工業繊維大学名誉教授。著書に、Phänomenologide der Compassion. Pathos des Mitseins mit den Anderen, 2018、Kire. Das Schöne in Japan, 第二版、2014、Die Phänomenologide des Geisets als Sinneslehre, 2009など。
木本 周平(キモト シュウヘイ)
1982年生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科文化基礎論専攻博士後期課程単位取得退学。法政大学ボアソナード記念現代法研究所客員研究員。哲学。「概念形成論史の中の「具体的普遍」」(東京都立大学編『哲学誌』63号、29–55頁、2021年)、「19世紀ドイツの論理学史における抽象説批判の系譜」(「抽象と概念形成の哲学史」研究会・研究報告論集『抽象の理論をめぐる哲学史――古代から近代まで』、144–158頁、2021年)。
ラルフ・ボイタン(Ralf Beuthan)
オットー・フォン・ゲーリッケ大学(マグデブルク)で博士号を取得。現在、韓国ソウルの明知大学教授。現在の研究テーマは、ドイツ観念論と現代哲学、メディア哲学(映画、ビデオゲーム、デジタル、AI)。
岡崎 佑香(オカザキ ユカ)
京都大学大学院文学研究科博士課程(研究指導認定退学)。博士(文学)。哲学。立命館大学専門研究員/日本学術振興会特別研究員PD。
史偉民(シー ウェイミン/Weimin Shi)
ゲオルク・アウグスト大学(ゲッティンゲン)で博士号を取得。台湾台中にある台湾・東海大學哲学部教授。専門分野は、ヘーゲル哲学、ドイツ観念論、ロビン・ジョージ・コリングウッド哲学、現代新儒学など。
劉創馥(ラウ チョン゠フック/Chong-Fuk Lau)
ハイデルベルク・ルプレヒト・カールズ大学でヘーゲルに関する論文で博士号を取得。香港中文大学哲学部教授。主な著書に、Hegels Urteilskritik, München 2004;その他Kant-Studien; Kantian-Review; Kant-Yearbook; Hegel-Jahrbuch; The Owl of Minerva; The Review of Metaphysics; Idealistic Studies; Perspektiven der Philosophieなどにカントとヘーゲルに関する論文を多数執筆している。
陳浩(チェン ハオ/Chen Hao)
清華大学(北京)哲学部准教授。中国の清華大学で哲学博士号を、2011年に日本の東北大学で法学博士号を取得した。現在の研究テーマはドイツ哲学、特にヘーゲルとマルクスの社会・政治理論。中国語、日本語の論文や編集著作に加え、英語論文に“Producing for Oneself or for Others”がある。その他の業績に、“Labor and the Actualization of Human Nature” (Studies in Marxism, 2013); “The Significance of the Concept of Individual for Young Marx’s Civil Society Theory” (GEMC Journal, 2013) などがある。
南基鎬(ナム キホ/KiHo Nahm)
1970年生まれ。韓国加平郡出身。2008年、ルール大学ボーフムにてヘーゲルの法哲学に関する論文で博士号を取得。2018年より延世大学哲学科教授。2023年没。Hegels Begriff der Sittlichkeit in dessen Genese und in den Jenaer Systementwürfen(博士論文、2008年)、 „Burschenschaft und Hegels Politische Stellung – Ist Hegel Eigentlich Preußischer Staatsphilosoph? –“, in: EPOCH AND PHILOSOPHY – A Journal of Philosophical Thought in Korea, Vol. 23-1, 2012; „Hegels Option bei der Todesstrafe“, in: Archiv für Rechts- und Sozialphilosophie, Vol. 100, 2014 issue 4; „Hegels Theorie des Krieges“, in: Archiv für Rechts- und Sozialphilosophie, Vol. 106, 2020 issue 3; 야코비와 독일 고전철학(『ヤコービとドイツ観念論』)2023年。
洪凱源(ホン カイユアン/Kaiyuan Hong)
1989年中国福建省生まれ。2022年、ルール大学ボーフムにてヘーゲルの精神哲学に関する論文で博士号取得。2023年より清華大学研究員。近著に、„Die Morgenröte des Geistes“ : Eine Studie zu Hegels Konzeption des Orients und Philosophie des Geistes in der Berliner Zeit, Hamburg(2024年刊行予定)がある。
岡崎 龍(オカザキ リュウ)
1987年生まれ。フンボルト大学ベルリン哲学部修了、博士(哲学)、獨協大学外国語学部ほか非常勤講師、哲学・倫理学。単著:Zur kritischen Funktion des absoluten Geistes in Hegels Phänomenologie des Geistes, Berlin 2021; 編著:Religionsphilosophie in und nach der Klassischen Deutschen Philosophie, Berlin 2024; 共訳:ジュディス・バトラー著『欲望の主体――ヘーゲルと二十世紀フランスにおけるポスト・ヘーゲル主義』、堀之内出版、2019年など。
太田 匡洋(オオタ タダヒロ)
1990年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。沼津工業高等専門学校准教授、近代ドイツ哲学。『もう一つの19世紀ドイツ哲学史――ポストカントにおける哲学方法論の系譜』(京都大学学術出版会、2022年)、Confronting the German Idealist Tradition: Jakob Friedrich Fries, the Friesian School and the Neo-Friesian School (Routledge, 2023); “Induktion und Abstraktion bei Schopenhauer: Die Umstellung der methodologischen Hauptbegriffe durch Rezeption der Philosophie von Jakob Friedrich Fries”, in: Das neue Jahrhundert Schopenhauers: Akten des Internationalen Forschungsprojekts anlässlich des 200. Jubiläums von Die Welt als Wille und Vorstellung 2018-2020, Königshausen & Neumann 2022, pp. 41–54など。
松岡 健一郎(マツオカ ケンイチロウ)
1974年生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士課程満期中退。博士(哲学)。同志社大学文学部嘱託講師。哲学。『ヘーゲル論理学の「無限性」理論』(2011年、同志社大学博士論文)、「シェリングの対話篇『絶対的同一性の体系について』」(2020年、日本シェリング協会編『シェリング年報』第28号)、「ピラトの問いとヘーゲルの答え」(2023年、日本ヘーゲル学会編『ヘーゲル哲学研究』第29号)など。
岩田 健佑(イワタ ケンスケ)
シュトゥットガルト州立造形芸術アカデミー博士課程。哲学・美学。「ヘーゲル『芸術哲学講義』における近代芸術の客観性――ベルリン後期の論考における想像力と実体的本質としての感覚」(『美学』、2020年)、Die Struktur des Dramas in den Vorlesungen über die Philosophie der Kunst (Hegel-Jahrbuch, 2019)など。
齋藤 嵩真(サイトウ シュウマ)
1999年生まれ。京都大学大学院文学研究科修士課程修了。専門はドイツ古典哲学を中心とした哲学・思想史。
矢端 崇(ヤバタ シュウ)
国際基督教大学大学院博士課程。政治哲学・政治理論。
小原 優吉(オハラ ユウキチ)
1996年生。東京大学人文社会系研究科博士課程。哲学・倫理学。「二重の端緒としての感覚的確信――『精神現象学』感覚的確信章における「意識」と「われわれ」」(『倫理学紀要』第31輯、2024)、「『精神現象学』自己意識章における欲望――マクダウェルおよびコジェーヴの解釈との対比から」(『哲学の探求』第48号、2021)。
嶺岸 佑亮(ミネギシ ユウスケ)
1985年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(文学)。東北大学大学院文学研究科助教。哲学・倫理学。(単著)『ヘーゲル 主体性の哲学――〈自己であること〉の本質への問い』東北大学出版会、2018年。(単著)『自己意識の哲学――私が私であることとは』ミネルヴァ書房、2023年。「自己保存するとは〈他なるもの〉に開かれていることである――イエーナ期ヘーゲルの形而上学」『Moralia』第30号、東北大学倫理学研究会、2023年など。
目次
序 大河内泰樹
文献略号一覧
第Ⅰ部 自然
1 親和力──ヘーゲルの自然哲学と本質的な哲学的諸カテゴリー(クラウス・フィーヴェーク/岡崎龍゠訳)
2 ヘーゲル自然哲学における物質概念について──なぜ物質よりも先に空間と時間があるのか(中島新)
3 牝牛に学ぶこと──ヘーゲルとともに、自然哲学と自然との付き合いの人倫によせて(クリスティアン・イリース/太田匡洋゠訳)
第Ⅱ部 生命
4 正常な異常──ヘーゲルの有機体論における「死に至る病」(大河内泰樹)
5 自然と精神のあいだの矛盾としての生命(権寧佑/太田匡洋゠訳)
第Ⅲ部 論理
6 ヘーゲル論理学における「生」の問題(改稿)(大橋良介)
7 論理的生命概念の二面性──前概念的行為者性とその明確化(木本周平)
8 ヘーゲルの「ゴースト・イン・ザ・シェル」──死せるオブジェクトたちの不気味な生命/ヘーゲルの機械論論理のポスト・ヒューマン的読解(ラルフ・ボイタン/松岡健一郎゠訳)
9 ヘーゲル論理学における概念の類種関係と性差(岡崎佑香)
第Ⅳ部 体系への道
10 「私たちの精神の連盟の時代」──フランクフルト-ホンブルク・コンステラツィオンのキーコンセプトとしての「生」(久冨峻介)
11 『精神現象学』における真理と真理への道──実在論か観念論か(史偉民/岡崎龍゠訳)
第Ⅴ部 精神
12 自然における生命としての言語(劉創馥/岩田健佑、齋藤嵩真、矢端崇゠訳)
13 自然と契約を越えて──「人格性」に基づいたヘーゲルの所有権論(陳浩/小原優吉゠訳)
14 ヘーゲル宗教哲学における自然と生命の目的論的関係(南基鎬/岩田健佑゠訳)
15 ヘーゲルの宗教哲学における人間学的構想およびその問題系(洪凱源/嶺岸佑亮゠訳)
あとがき 久冨峻介
執筆者・訳者紹介