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日琉同祖論再読伊波普猷の政治と哲学

伊波普猷の政治と哲学 日琉同祖論再読

A5判 326ページ 上製
価格:4,400円 (消費税:400円)
ISBN978-4-588-15130-9 C1010
奥付の初版発行年月:2022年10月 / 発売日:2022年10月上旬

内容紹介

沖縄学の父、伊波普猷の「日琉同祖論」を日本への同化/日本からの異化という二項対立構造から解放し、脱構築的読解により「政治」を開始するための場としての〈主体〉を導き出す。伊波普猷を読み直すという行為は、伊波が消去しようとした「政治」から出発し、今あるのではない様に、世界を変容させるための方途を摑もうとする営みである。沖縄近現代思想史の核心への果敢な試み。

著者プロフィール

崎濱 紗奈(サキハマ サナ)

1988年沖縄生まれ。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻(表象文化論)博士課程単位取得退学。博士(学術)。東京大学東アジア藝文書院(EAA)特任助教。専門領域は沖縄・日本近現代思想史、ポストコロニアル研究。主な論文に、〈第三次反安保運動下的沖繩基地問題:從SEALDs談起〉(馮啓斌・崎濱紗奈共著、《文化研究》第21期2015年秋季、交通大學出版社)、“‘Political Philosophy’ of Ifa Fuyū: the Limits of Identity Politics” (Identity and Movements, EAA Booklet No. 17, East Asian Academy for New Liberal Arts, the University of Tokyo)、「「東アジア」において理論を希求するということ──沖縄の「復帰」をめぐる考察を出発点として」(『日本學論集』第44号、グローバル琉球沖縄研究所・慶煕大学大学院日本学研究会)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章
 はじめに
 第一節 本書の目的
  1–1 脱構築的読解
  1–2 「政治哲学」と〈政治神学〉
  1–3 伊波のテクストの只中において生じる脱構築
 第二節 関心の所在
 第三節 本書の構成

第一章 沖縄近現代思想史における根幹問題としての「主体」
 第一節 伊波普猷という問題──「同化」と「異化」をめぐって
  1–1 戦略的同化主義
  1–2 同化主義批判
 第二節 「政治」と「倫理」
 第三節 「政治」と「主体」
 第四節 伊波普猷の「日琉同祖論」と「政治」

第二章 「政治哲学」としての「初期日琉同祖論」
 第一節 「個性」の領域
 第二節 旧慣温存から土地整理へ──沖縄における資本主義の浸透
 第三節 「辺境」としての沖縄
 第四節 「個性」を配置する「神」

第三章 蘇鉄地獄下における「沖縄人」の再人種化
 第一節 蘇鉄地獄
 第二節 「沖縄的労働市場」と「沖縄人」の再人種化
  2–1 「沖縄的労働市場」と「沖縄人」
  2–2 「擬似エリート層」と「日本人」への同化
 第三節 「沖縄問題」の誕生──「さまよへる琉球人」と沖縄青年同盟
 第四節 沖縄救済論──救済されるべき「対象」としての「沖縄」

第四章 郷土論的展開──純粋無垢な共同体「まきよ」の発見と「稲」
 第一節 資本主義への対抗としての柳田民俗学
 第二節 郷土研究──病への処方箋
 第三節 伊波普猷の「政治」
 第四節 悪い「稲」──原初の租税と奴隷
  4–1 「奴隷制度」の「魔術」的起源
  4–2 原初の租税としての「稲」
 第五節 善い「稲」──純粋無垢な共同体「まきよ」

第五章 記紀神話への挑戦──アマミキヨの南漸
 第一節 〈原日本〉=〈原沖縄〉としての「日琉同祖論」
 第二節 北上説と南漸説──「稲」の来歴
 第三節 「政治」のはじまり──「父」による「母」の征服
 第四節 遠来神の足跡
 第五節 折口信夫の神学

第六章 〈政治神学〉としての「日琉同祖論」
 第一節 「祖先神」と「遠来神」の融合
 第二節 伊波普猷の戦争責任──「決戦場・沖縄本島」をめぐって
 第三節 「真の神」の到来──伊波普猷における政治的ロマン主義
 第四節 国家という場所──「海部」と「天孫」の二項対立の止揚

終章 予期せぬ「他者」の到来と、消去不可能な「政治」──〈政治神学〉としての「日琉同祖論」の脱構築

あとがき

参考文献一覧
索引


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