大学出版部協会

 

機械製作法要論

理工学講座
機械製作法要論

A5判 274ページ 上製
価格:3,740円 (消費税:340円)
ISBN978-4-501-41470-2(4-501-41470-7) C3053
奥付の初版発行年月:1999年03月 / 発売日:1999年03月中旬

内容紹介

 本書は,大学2〜3年次程度の学生,工業短期大学および工業高専の学生を対象として書かれた入門書である。機械を製作するために必要な各種加工法の原理から自動化,システム化までの要点を短期の学習で学べるようにした。各章末に演習問題を配し,巻末に詳しい解答をつけた。

前書きなど

 本書は大学2年次後期から3年次程度の学生,工業高専の学生を対象として書かれた教科書,入門書であり,機械を製作するに必要な各種加工法の原理,要点を短期の学習で通観できるようにまとめられている。
 本書の執筆を思い立った直接の理由は,著者自身が半期(15周),2単位の必修として”機械のつくり方”の大要を講義する必要に迫られたからである。多岐にわたる機械製作の全般を15周で講義するには上下巻450ページといった従来の教科書は使いようがなく,もっと内容を絞った少ないページ数の教科書が必要であった。本書はこのために書かれたものである。
 しかし,従来の内容を単に圧縮すれば,なぜそうなのかを抜きにした工具と加工機械,動かし方のカタログ的羅列となり,とかく学生に不評だった機械工作法講義の退屈さが助長されてしまう。そこで本質的に重要な諸事項,物理として興味ある諸点を残し,大なたを振るって事項を削減することにした。しかしそうはいっても必修講義であり,これ以外の機械製作関係の講義を選択しない学生も多いことを考えると一応のバラエティは残さざるを得ず,ジレンマであった。
 第一章は”機械材料”である。材料関係の講義は選択である場合が多く,鉄-炭素系状態図も知らない卒研学生が多いこと,そうした学生に鋳造の話をしても始まらないことを考えてあえてこの章を設けることにした。機械系学生に必須な常識は炭素鋼,鋳鉄に関するものであり,それらを詳しく,他は簡略に述べてある。
 第2章は”鋳造”であり,溶解・凝固の詳細,鋳造方案などは省略し,プラスチック成型形を含めて一通りの鋳造方式とそれらの得失を述べている。また,機械技術者としては鋳造品の強度や鋳造の加工精度,鋳造欠陥が重要であり,理解が得られるよう配慮した。
 第3章は”塑性加工”であり,鋼材製造の流れに沿う必要から塑性加工を第3章とした。塑性加工機械や詳細な加工技術はすべて省略し,力学的理解を中心に記述している。不備はあっても,このやり方で本質的な諸点はかなりよく把握できるものと考えている。
 第4章は”溶接,接着”であり,なぜ部材どうしが”くっつく”のかから始めている。一通りの溶接方式をエネルギービーム溶接と対比して述べているが機械技術者にとって重要な溶接欠陥,脆性破壊,残留応力についてかなりのページ数を割いた。また将来の重要性を考えて圧接,接着剤接合を加えた。
 第5章は”切削加工”であるが,力学的理解のみでは明らかに不十分であり,まとめるのに苦労した。2次元切削から,3次元切削へ橋渡しする考え方で記述を進め,切削の諸現象については物性物理的な視点から理解が得られるように配慮している。また,各種切削方式は原理的な手動機械によって特長,弱点を対比して説明するようにし,NC工作機械は第8章で述べることにした。
 第6章は”研削加工”,”砥粒加工”であり,母性原理と浮動原理を正面に据えたまとめ方をしている。研削加工では切削加工との違いがわかる程度の解析とし,加工方式も特長,弱点を明らかにする説明をとしたが,興味をひきそうな曲面研削加工も加えた。また砥粒加工では浮動原理を中心とした説明とし,製品例を示して重要性を指摘した。
 第7章は”特殊加工”であり,前章までの慣用加工法では対処できない場合があることの指摘から始めている。この章では多くの加工法をとりあげなかったが,放電,電解,エネルギービームの物理,物性,化学に立脚した説明を行い,基礎的な理解と各加工法特徴把握ができるようにした。
 第8章は”自動化,システム化”であり,機械加工における合理化をめざした自動化,システム化のアプローチを述べている。コンピュータ技術の発達した現在では,これらの技術は多種多様であり,これらをただ単に紹介するだけでは読者にとって印象の浅いものになってしまう。そこで個々の技術に対する記述は避け,自動化,システム化の指針やポイントを明らかにすることを第一に考えて全体の大筋を述べた。
 なお,各種には”手強い”演習問題を配し,巻末に丁寧な解説を付した。本文の説明不足を補い,さらに勉強したい学生諸君の向学心を刺激したかったからである。
 いずこも同じ状況と思われるが,著者の勤務する私立大学機械工学科では,いわゆる大学設置基準の大綱化や18歳人口の激減から,カリキュラムの簡素化が強く推進される一方,コンピュータ技術,情報・システム関係の講義は充実しなければならない事情にあり,その結果
2年次:機械製作法概論(2単位),工作実習(2単位)
3年次:加工の力学(2単位),機械加工学(2単位)
4単位:生産加工システム(2単位)
しか加工関係の授業は許されていない。最初に述べるように2単位で機械工作法の講義をしなければならないのである。著者の経験によれば15周(私学では 13周ぐらいが実情)で本書のすべての内容について講義するのは困難であるが適当な省略があれば可能である。第1章は省略できるし,加工関係教員の専門に応じて設置されている後続の講義にまかせた省略ができるからである。上述の本学の例では,第5章,第6章の解析的な説明は機械加工学で,第8章の多くは生産加工システム,工作実習で講義してもらっている。
 本書の性格上,専門外の記述をせざるを得ず,多くの独断と誤りをおかしたと思われるが,大方の御叱正をまって是正していきたいと考えている。また筆者の専門外の章では多くの説明図を名著から引用させて頂いた。厚く御礼申しあげたい。本書の出版に際しては東京電機大学出版局植村八潮氏,石沢岳彦氏に非常なお骨折りを頂いた。記して厚く申しあげる次第である。

平成11年早春

著者


目次

第1章 機械材料
1.1 鋼・鋳鋼
1.2 鋳鉄
1.3 非鉄金属
1.4 非金属
演習問題
参考文献

第2章 鋳造
2.1 鋳造の必要性と弱点
2.2 鋳造作業の概要
2.3 砂型鋳造
2.4 金型鋳造
2.5 特殊な鋳造法
2.6 鋳物の欠陥
2.7 プラスチックスの成形
演習問題
参考文献

第3章 塑性加工
3.1 塑性力学の基礎
3.2 圧延加工
3.3 鍛造加工
3.4 押出し加工,引抜き加工
3.5 プレス成形
3.6 せん断加工
3.7 転造加工
3.8 塑性加工の潤滑
演習問題
参考文献

第4章 溶接と溶着
4.1 溶接,接着原理
4.2 溶接加工
4.3 溶接部の欠陥
4.4 圧接加工
4.5 ろう接加工,接着剤による接合加工
演習問題
参考文献

第5章 切削加工
5.1 切削加工の必要性と弱点
5.2 切削過程の諸現象
5.3 形削り加工,平削り加工
5.4 旋削加工
5.5 フライス切削加工
5.6 穴あけ加工,穴ぐり加工
5.7 歯車の切削加工
演習問題
参考文献

第6章 研削加工・砥粒加工
6.1 研削加工,砥粒加工の必要性と弱点
6.2 研削砥石,砥粒
6.3 研削の諸現象
6.4 平面研削加工
6.5 円筒研削加工
6.6 心無研削加工
6.7 曲面の研削加工
6.8 ホーニング,超仕上げ
6.9 遊離砥粒加工
演習問題
参考文献

第7章 特殊加工
7.1 特殊加工の必要性
7.2 放電加工
7.3 電解加工・電解研削
7.4 エネルギービーム加工
7.5 超微細加工
演習問題
参考文献

第8章 自動化,システム化
8.1 自動化,システム化の必要性
8.2 数値制御(NC)加工
8.3 加工システム
8.4 生産システム
演習問題
参考文献

演習問題の解答

索  引


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。