内容紹介
春画,新発見の肉筆画など,浮世絵の意外な姿が注目を集めている.そもそも「浮世絵」とは何であり,絵師とはどんな者たちだったのか.錦絵中心の作家・作品論や,「憂き世=仏教的諦念」説のむこうに,今日のサブカルにも通じるジャンルの生命力を見る,新しい浮世絵観を打ち立てる試み.
目次
はじめに 二一世紀の新たな浮世絵観へ向けて
1 浮世絵の再検討
浮世絵とは何か?/浮世絵と風俗画/日本の風俗画/江戸絵画における浮世絵の扱われ方/狩野派絵師,守篤の『画?』
/『古画備考』にみる絵師分類/遊女歌舞伎の人気から生まれた、立ち美人図/再び,浮世絵という言葉の定義
2 「浮世」という、ことば
「うき世」の登場 漢語の用例/仏教語としての「うき世」/仏教語辞典の「うきよ」/日本古代の史料における「うきよ」
/中世鎌倉期の「うきよ」/中世室町期の「うきよ」/狂言とも通じる室町の浮世観,そして桃山へ
3 「浮世絵」誕生の軌跡
江戸初期の「うきよ」——『可笑記』と『浮世物語』/江戸期の「浮世」関連用語——当世か、好色か/浮世概念と浮世絵・浮世草子
4 浮世絵誕生以降
浮世絵の語が意味するもの/浮世絵師の出現/小説挿絵なるものの価値1/居初つなと,宮崎友禅/「日本絵師」の誕生
/岩佐又兵衛,浮世絵元祖説/『江戸名所屏風絵』と又兵衛、師宣/「浮世絵師」を避けることの意味/日本絵師の終焉
/最後に,浮世画工と本絵師/付録 浮世絵と思想
5 浮世絵観の再構築
浮世観の再構築/浮世絵師の多元性
6 近代文学と浮世絵
近代文学と浮世絵/浮世絵とサブカルチャーの蜜月/附論,浮世絵と教科書