未完の多文化主義 アメリカにおける人種,国家,多様性
価格:6,160円 (消費税:560円)
ISBN978-4-13-056122-8 C3036
奥付の初版発行年月:2021年02月 / 発売日:2021年02月上旬
人種,民族,階級,ジェンダー,セクシュアリティなど「多」の分断を抱える現代のアメリカ合衆国は,いかなる「一」であろうとしてきたか.公民権運動以来の多様性の政治を歴史社会学的に追い,いまバックラッシュのなかで失敗が宣告される「アメリカ型多文化主義」にアメリカを動かすダイナミズムを読む.
南川 文里(ミナミカワ フミノリ)
立命館大学国際関係学部教授
上記内容は本書刊行時のものです。
目次
序 章 多文化主義が終わる時代に?
第I部 多文化主義への社会学的アプローチ
第1章 多文化主義の社会学――アメリカ型多文化主義を考える視座
1 社会学研究の対象としての多文化主義
2 多文化主義とは何か
3 アメリカ型多文化主義とは何か
4 多文化主義という事象の歴史社会学
第II部 アメリカ型多文化主義の成立
第2章 人種リベラリズムと公民権――アメリカ多元主義と非差別政策の系譜
1 20世紀転換期の多元主義の系譜
2 人種リベラリズムと非差別政策
3 1964年公民権法と制度的人種主義
4 新しい多元主義――人種と多様性をめぐる対抗政治
5 人種リベラリズムの時代と胎動する多文化主義
第3章 非差別と平等のための積極的措置――連邦政府と公民権改革
1 「もう一つの多元主義」への跳躍?
2 雇用機会均等委員会と非差別政策の形成
3 人種主義を数値化する
4 積極的措置の内実
5 公民権改革は何を変えたのか?
第4章 人種を数える――連邦政府における人種とエスニシティの標準化
1 「人種エスニック五角形」のアメリカ
2 分権的な連邦統計制度と人種エスニックなカテゴリーの標準化
3 OMB指令15号――標準化とその実践
4 人種エスニック五角形の動態的編成
第5章 中立性規範と多様性規範――バッキ裁判とアメリカ型多文化主義の転換点
1 積極的措置の危機
2 「逆差別」論争への道程
3 多文化主義と2つの規範
4 アメリカ型多文化主義の転換点
第III部 多様性規範と反多文化主義の時代
第6章 多文化教育における包摂と多様性――ニューヨーク州教育改革を事例に
1 多文化主義論争の登場――多文化教育と「文化戦争」
2 1980年代における教育改革と多文化主義
3 包摂のカリキュラム
4 包摂から多様性へ――反多文化主義と多文化主義の折衝
5 包摂,分裂,多様性――何が残り,何が欠落したか
第7章 反多文化主義の住民運動――カリフォルニア州における中立性規範と人種政治
1 中立性規範による反多文化主義
2 カリフォルニア地域政治における反多文化主義
3 反「優遇措置」の住民提案――カリフォルニア州提案209号
4 中立性規範による人種政治
5 反多文化主義の時代へ
第8章 多人種主義の挑戦――人種エスニック五角形の危機と再編
1 「アメリカの新しい顔」
2 多人種主義運動と人種エスニック統計
3 多人種の数え方――OMB指令15号の再検討
4 修正される多文化主義――「1つ以上をマーク」ルールの確立
5 多人種主義と「数値」の政治
第9章 多様性への多文化主義――オバマ現象/トランプ現象への水脈
1 21世紀の多文化主義――新自由主義と安全保障化のなかの多様性
2 多様性規範をめぐる政治――グラッター判決と積極的措置
3 多様性規範の時代――オバマ現象と多文化主義
4 トランプ現象と反多文化主義の政治
5 アメリカ型多文化主義の「現在」
終 章 「未完のプロジェクト」のゆくえ
Multiculturalism as an Unfinished Project:
Race, State, and Diversity in the United States
MINAMIKAWA Fuminori