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 生成のフランス文学文学作品が生まれるとき

文学作品が生まれるとき 生成のフランス文学

A5判 528ページ 上製
定価:5,000円+税
ISBN978-4-87698-949-2 C3090
奥付の初版発行年月:2010年10月 / 発売日:2010年10月中旬

内容紹介

文学作品とは,そして文学的創造行為とは何だろうか.手書き原稿・メモ・下書き・校正など,印刷稿に先立つすべてのテクストを分析対象とする「生成研究」の視点から,フランス文学史上の15人の作家に新たな光を当て,かれらの創作の秘密へと接近する.作家ごとの生成研究の最新状況案内と,フランス各地の文書館案内とを付す.

著者プロフィール

田口 紀子(タグチ ノリコ)

 1953年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。パリ第4大学文学博士。現在京都大学大学院文学研究科教授。専門はフランス語学、テクスト言語学。

 主要業績:『身体のフランス文学—ラブレーからプルーストまで』(吉田城と共編、京都大学学術出版会、2006年)、「フィクションとしての旅行記—メリメの『カルメン』に見る「スペイン性」の表象」(『グローバル化時代の人文学—対話と寛容の知を求めて 上』京都大学学術出版会、2007年)ほか。

吉川 一義(ヨシカワ カズヨシ)

 1948年生まれ。1977年、パリ第4大学文学博士、東京大学大学院博士課程満期退学。東京都立大学教授を経て、京都大学大学院文学研究科教授。専門は近現代フランス文学。

 主要業績:『プルースト美術館』(筑摩書房、1998年)、Index gnral de la Correspondance de Marcel Proust(共編、京都大学学術出版会、1998年)、『ディコ仏和辞典』(共著、白水社、2003年)、『プルーストと絵画』(岩波書店、2008年)、Proust et l’art pictural(Champion, 2010)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 生成論の射程 [田口紀子]

1 文学作品が誕生するためには

2 生成研究の方法

3 本書の構成



第Ⅰ部 規範と創造



第1章 詩人バイフの旧約聖書詩篇翻案の生成——十六世紀における詩と音楽の奇妙な結合 [伊藤玄吾]

1 旧約聖書詩篇の翻案とバイフ

2 バイフの三つの詩篇翻案手稿の比較

3 「見出された」バイフの作品

コラム ドゥルオ会館における古書・自筆稿類の競売[吉井亮雄]



第2章 ラシーヌ悲劇の生成過程[永盛克也]

1 ラシーヌの自筆草稿について

2 ラシーヌ悲劇の「生成」研究——模倣とレトリックの観点から

3 悲劇の創作過程——詩学と劇作法の観点から

4 『タウリケーのイフィジェニー』のプラン

5 『ブリタニキュス』におけるテクストの記憶

第3章 ルソーの『告白』における夜明けの光景と描写詩[井上櫻子]

1 「啓蒙」の世紀に、詩は衰退したのか

2 『告白』第四巻における「幸福な一日」の描写

3 『四季』の歌の系列

4 循環する時間意識と再生への願い

5 むすびにかえて——ルソーの「独自性」とは?

研究ノート 作家の「独自性」とは—アンシャン・レジーム期の文学と「系列的アプローチ」 [井上櫻子]



第Ⅱ部 変奏と転調



第4章 ジェラール・ド・ネルヴァル——変奏の美学 [水野 尚]

1 総合的生成研究に向けて

2 草稿の文献学的研究

3 同一素材再利用とネルヴァルの美学

4 同一の異なったテクスト——民謡集のネルヴァル的変奏

コラム ロヴァンジュール文庫 [鎌田隆行]

第5章 フロベール『ボヴァリー夫人』の生成——ラリヴィエール博士の人物像の解釈をめぐって [松澤和宏]

1 「没個性」の美学とラリヴィエール博士

2 プラン・筋書きにおけるラリヴィエール博士の人物描写

3 下書き初期段階における人物描写の造形

4 下書き後半の段階における人物描写の彫琢

5 ラリヴィエールの登場

6 オメ家での昼食

7 隣人愛と博愛主義の間

第6章 ランボー『地獄の季節』生成の一面——一八七二年の詩における「教訓的な声」 [中地義和]

1 『地獄の季節』の言語

2 一八七二年の韻文詩における「教訓的な声」

3 主題論的転置(韻文詩のモティーフの散文への取り込み)

4 結び

第7章 カミュ『幸福な死』から『異邦人』へ [三野博司]

1 カミュにおける生成研究

2 『幸福な死』と『異邦人』の生成

3 退屈な日曜日——メルソー、ムルソー、ロカンタン

コラム 現代出版資料研究所(IMEC) [桑田光平]

第8章 レーモン・クノーの自伝的エクリチュール、あるいは消去の技法 [久保昭博]

1 文学と抹消

2 自伝と叙情

3 技法と構成——『最後の日々』

4 記憶と語り——『オディール』

5 叙情主体の回復——『柏と犬』

6 生成研究について



第Ⅲ部 時代の中での創造



第9章 ルソーにおけるリズム論と夢想の詩学 [増田 真]

1 ルソーにおける音楽論と創作技法

2 ルソーの音楽論におけるリズムの位置

3 リズムと夢想

研究ノート 十八世紀の草稿——地下文書と手書きの完成品 [増田 真]

第10章 プルーストと写真芸術 [小黒昌文]

1 写真をめぐる日常

2 写真の芸術性

3 「機械の眼」が突きつける「現実」

コラム 近代テクスト草稿研究所(ITEM)とは [吉川一義]

第11章 サルトル作品における生成研究の可能性——『自由への道』を中心に [澤田 直]

1 草稿資料の現状

2 代表的な生成研究

3 『自由への道』をめぐって

4 『自由への道』への新たなアプローチ

5 生きることと書くこと



第Ⅳ部 草稿が語るもの



第12章 パスカルの『パンセ』——「中断された作品」の生成論 [塩川徹也]

1 『パンセ』という書物は存在するか

2 未定稿の編集と出版

3 テクスト生成論の前提と限界

研究ノート バルザックの作品生成と研究の現状 [鎌田隆行]

第13章 フロベール『ブヴァールとペキュシェ』における教育と自然 [和田光昌]

1 ある個人的信念

2 第十章の書き出しにおける「自然」

3 奇妙な一文

4 自然と神の摂理

5 教育のわざと書くことのユートピア

研究ノート フロベールの草稿研究の現状 [松澤和宏]

研究ノート ゾラに関する生成研究の現状 [吉田典子]

第14章 ジッド『狭き門』の成り立ち——構想・執筆から雑誌初出、主要刊本まで [吉井亮雄]

1 ジッド研究の現状と学術版の作成

2 『狭き門』の着想と執筆過程

3 自筆稿・タイプ稿・校正刷

4 主要刊本の概略

第15章 プルースト草稿研究の基礎と実践 [和田章男]

1 プルースト草稿研究の基礎

2 プルースト草稿研究の実践1——ジルベルト登場場面の生成過程

3 プルースト草稿研究の実践2——ジルベルトとサンザシ

4 生成研究の展望

コラム フランス国立図書館手稿部での日々 [吉川一義]

第16章 コラージュの残骸の美とハーモニー——カイエ34における花咲く乙女たちの物語の素描 [加藤靖恵]

1 「カイエ34」について

2 少女たちの挿話における画家の役割

3 印象派の海の絵と水の精の乙女たち

4 少女たちの名前をめぐって

5 変容し続ける印象とエクリチュールの増幅

6 画家のパレット、少年のまなざし

第17章 ポール・ヴァレリーと生成の詩学 [森本淳生]

1 ヴァレリー研究と草稿

2 詩(へ)の回帰

3 行為と詩学

4 待機と偶然

5 出来事としてのポイエイン

コラム ジャック・ドゥーセ文庫 [吉井亮雄]

第18章 シュルレアリスムと手書き文字の問題——鳥たちからの伝言 [鈴木雅雄]

1 加筆というアポリア

2 変形から反復へ

3 声と手書き文字

4 鳥たちからの伝言



あとがき [吉川一義]



人名索引


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