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形容詞17世紀フランス文法家証言集Ⅶ

17世紀フランス文法家証言集Ⅶ 形容詞

A5判 358ページ 上製
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-87354-743-5 C3085
奥付の初版発行年月:2021年11月 / 発売日:2021年11月下旬

内容紹介

 17世紀になると、フランス人の母国語に対する意識・姿勢が16世紀の人々と大きく変わった。16世紀の人々は母国語を思いのままに、自由奔放に使用したが、17世紀の人々は母国語に規律・規範を求めた。
 自由奔放な言葉使いから規律・規範を求める言葉使いへ、人々の母国語に対する対応姿勢の変化や彼等の取り組みは、17世紀のフランス語にも随所に見られる。
 例えば、Wartburgは、その例として、16世紀の自由奔放な言葉使いに取り組み、不明瞭な表現に規律・規範を設けたMalherbeの例を示している。
 本書で取り上げた形容詞でも、17世紀フランス文法家達は規律・規範を求めてさまざまな見解を主張している。
 彼等が留意し、規律・規範を求めた問題は多岐にわたる。
 形容詞の品詞としての位置づけについて、形容詞の一致、付加形用詞の位置、形容詞の比較、形容詞の女性形の作り方、形容詞の複数形の作り方、指示形容詞の古形の使用、所有形容詞の用法、若干の形容詞の特殊用法、指小語論争、等々に、17世紀フランスの文法諸家は、さまざま見解を表明している。
 例えば、形容詞の一致の問題では、後述のようにVaugelasはじめ、Th.Corneille、Andry、Académie などがDemiの一致に規律を求め、この語の不明瞭な使用の排除に努めている。
 Haaseは形容詞Demiの一致に関する17世紀フランス文法家たちの考えと、この語の17世紀における使用状況を用例に示し的確に記している。
 なお、現代フランス語では、Demiが名詞に前置される「demi- +名詞(例 demi-heure, etc.)」の場合、demiは接頭辞的使用)とみなされ、demiは不変。しかし、Demiが名詞に後置された「名詞+ et demi(例 deuxheures et demie, etc.)」の場合は、demiは先行名詞の性と一致する。ただし、数は常に単数形である。
 本書は、17世紀フランス文法家が取り組んだ形容詞の諸問題を調査対象とし、彼らの見解を収集した。とりわけ、フランス語の規律・規範に深くかかわった、OudinとVaugelasが留意し関心を示した形容詞の諸用法および形容詞の表現を主とした。
 したがって、本書は17世紀フランス文法家の形容詞に関する証言を調査・収集した資料集である。類書がとぼしい現在、このような証言資料集は17世紀フランス語解明やフランス語研究に寄与するといえる。

著者プロフィール

伊藤 誠宏(イトウ マサヒロ)

関西大学名誉教授 博士(文学)
著書
『若者の感性とリスク』(共著、北大路書房、2003年)
『色彩の魔力』(共編著、明石書店、2005年)
『17世紀フランス文法家証言集― 名詞の性―』(単著、関西大学出版部、2007年)
『社会人になるまえに読むマナーの常識と知識』(単著、神戸新聞総合出版センター、2009年)
『17世紀フランス文法家証言集Ⅱ ―Vaugelas, Nouvelles remarques sur la langue françoiseをめぐって―』(単著、関西大学出版部、2011年)
『ヨーロッパ・ジェンダー文化論』(共編著、明石書店、2011年)
『17世紀フランス文法家証言集Ⅲ ― 副詞―』(単著、関西大学出版部、2013年)
『17世紀フランス文法家証言集Ⅳ ― 動詞―』(単著、関西大学出版部、2015年)
『17世紀フランス文法家証言集Ⅴ ― 前置詞―』(単著、関西大学出版部、2018年)
『17世紀フランス文法家証言集Ⅵ ― 代名詞―』(単著、関西大学出版部、2020年)
論文  L’Astréeの言語 など

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき
Ⅰ.形容詞と品詞区分
Ⅱ.形容詞の性
 形容詞女性形
 文法諸家が留意した形容詞女性形
  Beau, Bel / Belle
  Gentil / Gentille
  Grand / Grande / Grand’
Ⅲ.形容詞の数
 複数形
 文法諸家が留意した形容詞複数形
  Penitentiel, Penitentiaux
  Vieil, Vieux
Ⅳ.形容詞の比較
 文法諸家が留意した比較表現
  Sans comparaison, et sans superlatif Prochain, Voisin
Ⅴ.形容詞の一致
 Vaugelasが留意した形容詞の一致
 性の異なる2つの名詞と形容詞の一致
  Vn adjectif avec deux substantifs de different genre
 比較文における形容詞の一致
  Si l’adjectif de l’vn des deux genres se peut appliquer à l’autre dans la comparaison.
 文法諸家が留意した形容詞の一致
  形容詞Demiの一致
  形容詞Feuの一致
 性(genre)の定まらない名詞と形容詞の一致
  Gensと形容詞の一致
  Personneと形容詞の一致
  Quelque choseと形容詞の一致
Ⅵ.付加形容詞の位置
 OudinあるいはVaugelasが留意した付加形容詞の表現
  les Blancs manteaux, du blanc mangé
  Un manteau court, un habit long
  Grand pere, Grand’mere / Pere grand, Mere grande
 付加形容詞の位置とその相違による意味の違い
   Sage femme / Femme sage
 不適切な位置に置かれた付加形容詞
  Epithete mal placé
 Vaugelasが問題視した付加形容詞の位置
  Vif-argent / Argent-vif
  Bonnet blanc / Blanc bonnet
Ⅶ.形容詞の指小辞
 Oudinが留意した形容詞の指小辞
  Beau, Belle / Bellot et Bellotte
  Fol et Folle / Folet, Follion et Follichon
  Gras / Grasset
  Mignard / Mignardelet et nonpas Mignardet
  Nouveau / Nouvelet
  Petit / Petiot
Ⅷ.指示形容詞
 古形および古い表現
  ① Cet / Cest, Cette / Ceste
  ② Cet homme-cy, Cette femme-cy / Cet homme-icy, Cette femme-icy, etc.
Ⅸ.所有形容詞
 ① Mon, ton, son : mon amie, ton amie etc.
 ② Mien, tien, sien : vn mien frere, vne tienne soeur, vn sien amy, etc.
 ③ J’ai mal à la tête. ← J’ai mal à ma tête. etc. Mon, ton, etc / Le, La etc.
Ⅹ.疑問形容詞
 Quel
Ⅺ.不定形容詞
 Aucun, Aucune, etc.
 Autre
 Certain
 Chaque, Chaques
 Force
 Maint
 Mesme, Mesmes etc.
 Nul, Nulle
 Plusieurs
 Quelconque Quelque
 Tel, Telle, etc.
 Tout, Tous, Toutes etc.
Ⅻ.留意すべき若干の形容詞の用法
 Deschaux et Secoux
 Faisable
 Fort, Court
 Grand, Gros
 Innumerable, Innombrable
 Méchant, Mauvais
 Mille, Milles
 Neuf, Nouveau
 Pardonnable, Excusable, Consolable, Inconsolable
 Septante, Octante, Notante
 Superbe


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