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 系統から遊び行動までカラスの自然史

カラスの自然史 系統から遊び行動まで

A5判 306ページ 並製
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-8329-8196-6 C3045
奥付の初版発行年月:2010年09月 / 発売日:2010年08月中旬

内容紹介

 カラス属は南米と南極を除く世界の5大陸に生息しており,大いに繁栄している。日本には主にハシブトガラスとハシボソガラスの2種のカラス類がすんでおり,さらに第3のカラスともいうべきミヤマガラスが季節ごとに訪れる。カラスは鳥類の中でも知能に優れ,ヒトとの知恵比べをするほどの頭脳の持ち主である。このようにカラス類は身近な存在である割には,忌避の対象となりこそすれ,従来,生態学や行動学の対象として詳細に研究されてこなかった。
 本書では,4部15章にわたって,18人の第一線の研究者たちが自然界における生活を理解するために,さまざまな角度からカラスに迫る。第Ⅰ部では,カラス科の系統関係に関する研究である。第II部では,生息環境と環境利用に焦点を当てる。第Ⅲ部ではこうしたカラスの食性や,その採食行動が生態系に与える影響などを解き明かしていく。第Ⅳ部では,カラスの社会性や文化,認知能力に関する興味深い知見を紹介する。


著者プロフィール

樋口 広芳(ヒグチ ヒロヨシ)

1948年生まれ
東京大学大学院農学系研究科博士課程修了
東京大学大学院農学生命科学研究科教授 農学博士
第4,9,14章執筆
主 著 飛べない鳥の謎―鳥の生態と進化をめぐる15章(1996,平凡社自然叢書),保全生物学(編著,1996,東京大学出版会),これからの鳥類学(共編,2002,裳華房),鳥たちの旅―渡り鳥の衛星追跡(2005,NHKブックス),鳥の自然史―空間分布をめぐって(編著,2009,北海道大学出版会),生命(いのち)にぎわう青い星―生物の多様性と私たちのくらし―(2010,化学同人)など

黒沢 令子(クロサワ レイコ)

1954年生まれ
北海道大学大学院地球環境科学研究科博士課程修了
NPO法人バードリサーチ研究員 博士(地球環境科学)
第14,15章執筆
主 著 鳥の自然史―空間分布をめぐって(編著,2009,北海道大学出版会)など
主訳書 よみがえった野鳥の楽園―英国ミンズミア物語(1995,平凡社),フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌(樋口広芳と共訳,2001,ハヤカワノンフィクション文庫),鳥たちに明日はあるか―景観生態学に学ぶ自然保護(2003,文一総合出版),鳥の起源と進化(2004,平凡社)

伊澤 栄一(イザワ エイイチ)

慶應義塾大学大学院社会学研究科准教授 博士(農学)
 第12章執筆

杉田 昭栄(スギタ ショウエイ)

宇都宮大学農学部教授 医学博士・博士(農学)
 第13章執筆

鈴木 仁(スズキ ヒトシ)

北海道大学大学院地球環境科学研究院准教授 学術博士
 第1章執筆

髙木 憲太郎(タカギ ケンタロウ)

NPO法人バードリサーチ研究員
 第5章執筆

中村 純夫(ナカムラ スミオ)

無所属のカラス類研究者
 第11章執筆

長谷川 雅美(ハセガワ マサミ)

東邦大学理学部生物学科教授 理学博士
 第8章執筆

藤田 素子(フジタ モトコ)

京都大学東南アジア研究所特定研究員 博士(環境学)
 第6章執筆

堀 正和(ホリ マサカズ)

水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所研究員 博士(水産科学)
 第7章執筆

百瀬 浩(モモセ ヒロシ)

中央農業総合研究センター鳥獣害研究サブチーム長 博士(理学)
 第3章執筆

森下 英美子(モリシタ エミコ)

文京学院大学環境教育研究センター研究員
 第4章執筆

山崎 剛史(ヤマサキ タケシ)

山階鳥類研究所研究員 博士(理学)
 第2章執筆

吉田 保志子(ヨシダ ホシコ)

中央農業総合研究センター主任研究員
 第3章執筆

吉田 保晴(ヨシダ ヤスハル)

 駒ヶ根市立博物館学芸員
 第10章執筆

Elisabeth Haring(エリザベス ヘリング)

ウイーン自然史博物館 D.Sc.
 第1章執筆

Alexey Kryukov(アレクセイ キュリーコフ)

 ロシア科学アカデミー生物土壌学研究所 D.Sc.
 第1章執筆

John M. Marzluff(ジョン M.マーズラフ)

ワシントン大学教授 Ph. D(Zoology)
 第15章執筆

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

口絵  
まえがき 
第Ⅰ部 系統と進化
第1章 カラス類の系統進化史(Alexey Kryukov・鈴木 仁・Elisabeth Haring) 
カラス科の種の多様性と起源 / カラス科の分子系統 / カラス類の地理的分化―ユーラシア大陸における東西分化 / ハシボソガラスの地理的構造 / サハリンのカラス類
第2章 カラスの種分化と地理的変異(山崎剛史)
種の定義と一般系統概念 / 種分化のメカニズム / 日本のハシブトガラスの地理的変異 / 体サイズの地理的変異とベルクマンの規則 / カラス類の種分化の特徴
第Ⅱ部 生態分布と環境利用
第3章 農村におけるカラス2種の環境利用と種間関係(吉田保志子・百瀬 浩)
営巣の環境利用 / 繁殖成績は何に影響されているのか / 都市と農村の繁殖状況を比べる / ハシボソガラスとハシブトガラスの種間関係
第4章 都市におけるハシブトガラスの局地移動(森下英美子・樋口広芳)
都市にすむハシブトガラスが嫌われるのは / 都市にすむカラスの追跡法 / カラスの背中にPHSを乗せるために / 飛び立ったカラスはどこへ? / カラスの暮らし / 安定的な食物と不安定な食物 / 都会はカラスの楽園なのか? 
第5章 日本におけるミヤマガラスの越冬分布とその変化(髙木憲太郎)
渡るカラス / 分布が拡がったミヤマガラス その経緯を探る / 分布拡大の原因 / 分布の拡大,なぜ東北で折り返したのか?
第Ⅲ部 食生活と生態系内の役割
第6章 栄養塩の供給から見る,都市におけるハシブトガラスの役割(藤田素子)
都市環境の生態学的な特徴 / なぜ都市でハシブトガラスの個体数が増加したのか / ねぐらに落とされる窒素・リンはどこから来るのか / 糞の化学 / カラスによる施肥効果
第7章 海辺におけるハシボソガラスの採食とその生態学的意義(堀 正和)
海辺のカラスたち / 冬~夏―繁殖期前から繁殖期にかけての採食行動 / 夏~秋―巣立ちから繁殖期後の採食行動 / カラスの採食行動の生態学的意義
第8章 カラスの果樹園―伊豆諸島におけるハシブトガラス島嶼個体群の生態寸描(長谷川雅美)
カラスの数と位置を記録する / 食物を探る / カラスが果樹園をつくる? / カラスとの交信 / なわばり内の果樹本数 / 畑のカラスと街のカラス / 他の島ではどうか 
第9章 カラスの特異な食習性と地域食文化(樋口広芳)
地域と結びついた特異な食習性 / カラスにとっての地域食文化 / 文化の伝播
第Ⅳ部 社会と行動
第10章 伊那谷におけるハシボソガラスの社会(吉田保晴)
捕獲方法 / 個体識別の方法 / 相手を追い出し,なわばり確保 / なわばりを持つことができない個体の採食地への出現 / ねぐらへの集結 / ねぐら場所の変遷
第11章 集団ねぐらから見たカラス社会の二重構造(中村純夫)
なわばりを持つものと持たざるもの / カラスの一生というのはどのようなものなのだろうか? / カラス社会の季節的変動を反映する季節ねぐら / 季節ねぐらの成立・消滅を,いつ,だれが,どのように決めているのか?
第12章 ハシブトガラスの群れにおける個体間関係とその行動・認知メカニズム(伊澤栄一)
カラスの社会 / ハシブトガラスの個体間優劣関係 / 個体間の優劣関係維持の行動メカニズム / コンタクトコールを用いた個体認識メカニズム / 今後に向けて
第13章 ハシブトガラスの識別能力(杉田昭栄)
実験結果を知る前に知っておくべき事項 / 色の識別能力 / カラスは○や×などの模様の区別をどれだけできるのか? / 人の顔写真を見分ける能力 / 識別能力に影響を与える色や空間 / カラスはグループ分けができるのか? / カラスは数や量の識別ができるのか? /
記憶の長さ
第14章 カラスの遊び(黒沢令子・樋口広芳)
「遊び」とは―定義 / カラスの「遊び」事例 / カラスの遊びのカテゴリー / なぜ遊ぶのか? / カラスの遊び研究の課題
第15章 人とカラスの文化的共進化(John M. Marzluff・黒沢令子)
文化的共進化 / 人とカラスの文化的共進化 / 変わる人の自然観
引用・参考文献
索  引


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