大学出版部協会

 

 日本とイギリス高等継続教育の現代的展開

北海道大学大学院教育学研究院研究叢書 1
高等継続教育の現代的展開 日本とイギリス

A5判 288ページ
価格:6,600円 (消費税:600円)
ISBN978-4-8329-6692-5 C3037
奥付の初版発行年月:2008年05月 / 発売日:2008年05月下旬

内容紹介

これまで教育学の範疇から除外されがちであった高等教育・継続教育について、特に英国の事例によりながらわが国の実態と比較検証する。各種の実践に光を当て、学校、地域社会、青年・成人を結ぶ、創造されるべき新たな高等継続教育の課題を探求した意欲作。

著者プロフィール

姉崎 洋一(アネザキ ヨウイチ)

1950年 富山県生まれ
1974年 名古屋大学教育学部教育学科卒業
1976年 名古屋大学大学院教育学研究科博士前期課程修了
1979年 名古屋大学大学院教育学研究科博士後期課程単位等取得退学
1987年−88年 英国リーズ大学成人継続教育学部客員研究員
愛知県立大学文学部、埼玉大学教育学部を経て、
現在 北海道大学大学院教育学研究院教授
主要著作・論文
 姉崎洋一、長澤成次、辻浩編、『社会・生涯教育文献集Ⅱ、社会・生涯教育計画と住民の主体形成』、日本図書センター、2000年
姉崎洋一・鈴木敏正編『公民館実践と「公民館をつくる学び」』北樹出版、2002年
「社会教育・生涯学習を推進する条例・規則の動向と課題」日本教育法学会編『講座現代教育法』第三巻、三省堂、2001年
「転換期の英国大学と大学成人教育の岐路−リーズ大学を中心に」『北海          道大学大学院教育学研究科紀要』第93号、2004年
「教育基本法と社会教育法制−今おきていることは何か」月刊社会教育編集部編『公民館60年 人と地域を結ぶ「社会教育」』、国土社、2005年
「大学・高等教育機関の地域社会貢献をめぐる争点と課題」大学評価学会年報『現代社会と大学評価』第3号、晃洋書房、2007年

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき
序 章 現代教育改革と高等継続教育の革新
はじめに
第1節 世界史的転換期における現代教育改革の様相
1 近代と近代批判
2 国際的な教育改革動向
第2節 20世紀の教育的達成と限界をいかに総括するか
1 児童の世紀から生涯学習の世紀へ
2 世紀転換期から21世紀段階の課題

第1章 現代生涯学習の意義と革新
第1節 生涯学習の現代的意義
1 生涯学習の思想と歴史——前史
2 生涯学習の現代的意義
3 生涯学習理念の国際的進展
第2節 地域の国民統治をめぐる国家政策と生涯学習
はじめに
1 危機に立つ国家
 (1) 国家政策における危機意識
 (2) 新自由主義政策の徹底とその破綻——国際的レベルでの揺り戻し
 (3) 日本の1990年代——改革と対抗のダイナミクス
2 教育改革プログラムの意図
 (1) 国家構造改革政策としての教育改革
 (2) 教育改革関係審議会の相次ぐ諮問と答申
 (3) 国民側のオルタナティブ政策と運動の動向
3 地域をめぐる国家教育政策——その再編成のヘゲモニーをめぐって
 (1) 主体形成をめぐる危機
 (2) 教育改革の構図——国と地域再編成のグランドデザインとは?
4 国家政策としての教育改革——地域と教育の再編をめぐって
 (1) 教育政策把握の多角的総合的視野の必要
 (2) 地域生涯学習政策の構図——中教審・生涯学習審の接近と統合
 (3) 国家的地域統合と国民的な地域づくりとの分岐点
第3節 日本と英国の生涯学習研究——比較研究の視点
はじめに——日英生涯学習の比較研究に関しての若干の方法的視点
1 日本と英国の生涯学習研究分析の前提——教育における比較研究の可能性と限界
 (1) 教育の比較研究をめぐる歴史的論争点の推移
 (2) 生涯教育——学習政策の国家的類型性
 (3) 日本の生涯学習政策の歴史的変化
 (4) 生涯学習の教育制度・政策上のインパクト
2 英国「成人継続教育」の先行研究とその系譜——日英生涯学習比較研究の前提として
 (1) 古木弘造,宮原誠一,小堀勉,津高正文,碓井正久らの第1世代研究
 (2) 真野典雄,諸岡和房らの第2世代研究
 (3) 宮坂広作,上杉孝實,藤岡貞彦,島田修一,小川剛,奥田康弘,朝倉征夫,香川正弘,加藤詔士らの第3世代研究
 (4) 佐久間孝正,川添正人,鈴木敏正,姉崎洋一,左口真朗,田村佳子,矢口悦子,渡邊洋子らの第4世代研究
3 日英生涯学習の比較研究においての今後の検討課題
 (1) 日英生涯学習研究において比較検討すべき実践的理論課題
 (2) 日英相互の生涯学習研究上の共通実践課題

第2章 青年・成人の学びの共同化と自己形成
第1節 都市勤労青年の学習・教育実践とその社会的性格——生活史学習を中心に
はじめに
1 青年の生活(史)過程の基本的諸問題
 (1) 世代論的アプローチの若干の留意点
 (2) 戦後第3世代——低成長下の青年たちの基本的特徴
 (3) 他世代との関連における低成長下の青年の社会的困苦の歴史的変化
2 都市青年の学習・教育実践の基本的諸課題——生活史学習の展開を中心に
 (1) 青年把握の変革的視点
 (2) 生活史学習——青年の集団的自己認識と自己変革の方法として
 (3) 生活史学習論の歴史的性格
3 生活史学習をめぐる現代的諸問題
 (1) 生育史上の「負荷」の取り戻し,やり直しの困難さとその克服
 (2) 現実の「生活」困難とその克服
 (3) 将来の生活設計の困難と克服
4 おわりに——残された諸問題
第2節 1990年代の青年の自己形成と理論課題
はじめに
1 現代学校の苦悩—— 「企業社会の社会化」と「人間(子ども・青年・成人)の社会化」の狭間の苦悶
 (1) 企業社会の社会化と学校の病理
 (2) 第14期中教審答申「新しい時代に対応する教育の諸制度の改革」(1991年4月19日)の危機意識
 (3) 1990年代教育政策の主要骨格
 (4) 学校の病理と人間の社会化
2 現代学校体験の抑圧的重みと「体験」の再解釈と組み替えの課題
 (1) 学校が強いるもの・求めるもの=「抑圧的重み」の正体
 (2) 学校体験・価値の呪縛的内面化とその重み——価値の優先順位(priority)の強いられた固定化
 (3) 学校体験・価値観の相対化の課題(自分さがし,自分くずし,自分づくり)—— 「価値」のパラダイム転換
補論 生涯発達・生涯形成の教育学への転換を——子どもの教育学の呪縛からの脱却の必要
1 「子どもから出発する教育学」の重要性を否定するわけではない。その深化と拡大の必要
2 「生涯形成」の自己決定学習を軸とした教育学と教育制度環境実現の課題
第3節 英国の若者支援方策の矛盾と打開をめぐる課題——T.ブレア政権の若者就労支援施策を中心に
1 階層・階級社会と青年期の二重構造
2 対抗的文化の衰弱
3 シティズンシップ,社会的排除,ワークフェア
4 ブレア政権の若者支援政策の光と影——ブレアの時代に何が始まったか?
5 ブレア政権の若者・家族政策の地域レベルの実態

第3章 大学成人教育の役割と現代的革新
第1節 成人基礎教育・識字教育の革新——リーズ大学・パイオニアワークの事例から
はじめに
1 英国における社会的不利益層の抱える問題点——識字・成人基礎教育の前提
 (1) 社会的不利益層の様相と成人教育の問い直し
 (2) 社会的不利益層の固定化と教育システムの矛盾
2 1990年代成人基礎教育の取り組み——リーズ大学・パイオニアワーク実践を手がかりに
 (1) リーズ大学・パイオニアワークとは何か
 (2) リーズ大学・パイオニアワークの基盤的条件とその実践的・研究的系譜
 (3) パイオニアワークの開始
 (4) パイオニアワークの方法意識
 (5) パイオニアワーク事業の成果——チューター・受講生の評価
第2節 1990年代の英国大学成人教育の協働的実験と課題
はじめに
1 コミュニティ成人教育・地域再生計画と大学の役割
 (1) コミュニティ成人教育の歴史的生成
 (2) コミュニティ成人教育の歴史的展開(1970〜80年代から90年代)
2 コミュニティ成人教育の社会経済的基盤——1970〜90年代の行財政改革に即して
3 コミュニティ成人教育と大学成人教育発展の課題
 (1) ケビン・ウォード(K.Ward)の整理
 (2) コミュニティ成人教育の2つの方向
4 リーズ市単一再生予算事業(SRB)とコミュニティ成人教育の役割
 (1) 都市再生・再開発でのリーズ地域の位置
 (2) 地域再生計画とコミュニティ成人教育の役割
第3節 英国における大学成人教育の危機と新しい可能性
1 大学成人教育の意味するものをめぐって——伝統と改革の間で
 (1) 大学成人教育の伝統の精神をめぐって
 (2) 大学成人教育の「危機」の到来
2 大学成人教育の改革への歴史的動態——英国大学成人教育の時期区分
3 1990年代の大学成人教育改革の課題
 (1) 1990年代改革の新たな要因
 (2) 大学成人教育の主体とパートナー
4 おわりに——ブレア政権以降の新たな変化の胎動

第4章 学習者主体の職業能力開発と高等教育の協働
第1節 生涯学習(成人継続教育)時代の労働生活と学習
はじめに——ユートピアとしての「生涯学習」?
1 生涯学習(成人継続教育)時代の意味するもの
 (1) 現代「生涯学習(成人継続教育)」政策——日本の現実
 (2) 「哲学の貧困」——権利論,国家論なき「生涯学習」議論
 (3) 私たちの求める生涯学習(成人継続教育)の課題
2 労働生活と生涯学習——シュタイヤ会議から受け取るもの
3 今後の課題
第2節 職業能力開発と英国ED(労働者能力開発)プログラムが提起するもの
1 ED(労働者能力開発)学習プログラムの意味するもの
 (1) サッチャー時代の問題性
 (2) 英国の伝統的「教育・職業訓練」観の転換の開始
2 ED(労働者能力開発)学習プログラムとは何か
3 ED(労働者能力開発)学習プログラムのもたらしたもの
4 我々の今後の検討課題
第3節 中高年トータルライフプラン開発——英国の事例から
はじめに——英国の高齢化社会と生涯設計
1 英国のトータルライフプランの問題の所在
 (1) 福祉国家政策の急激な変容ともたらされた現実
 (2) トータルライフプランの担い手と方法——市民の生涯設計と組織・機関(自治体,企業,労働組合)
2 英国のトータルライフプランへのアプローチについて
 (1) 高齢化社会における個人主義とシティズンシップ
 (2) サードエイジのとらえ方
 (3) 階層とコミュニティ
 (4) 企業の従業員(=労働者)管理の英国的スタイルとその変容
 (5) 職業教育・能力開発と従業員(=労働者)の自己実現——自治体,企業,労働組合の関与の在り方
3 イギリス・フォードの事例
 (1) フォードの従業員研修体系
 (2) 従業員研修体系の概要
 (3) 本調査対象「The Employee Development and Assistance Programme, EDAP:従業員能力開発および支援プログラム」の概要
4 1989〜93年のプログラム内容
 (1) EDAPの所管
 (2) EDAPの実施要綱
 (3) EDAPの内容と形態
5 EDAPの今後の課題
 (1) 個人の生涯発達とEDAPの役割
 (2) 企業と労働組合の協約の継続
 (3) 国,自治体,研究者の協力の継続

第5章 大学と社会とのパートナーシップ構築のための現代的課題
第1節 大学と地域社会のパートナーシップ構築は可能か?——生涯学習・地域再生と大学の社会的貢献活動
はじめに——大学の理念・使命とは何か
1 戦後初期の大学理念に欠落していたもの
 (1) 大学理念をめぐって
 (2) 大学理念の社会的性格をめぐる歴史的諸相
 (3) 新制大学の目的規定に欠落した理念とは?
 (4) 戦後における大学の社会貢献の歴史的系譜
2 大学はいかなる価値資源をもって社会貢献活動を行なうか
 (1) 大学地域付加価値メカニズム
 (2) 大学のジレンマ——ソーシャルニーズとアカデミックニーズとの応答責任  180
 (3) 大学と社会との関係構築の在り方をめぐって
 (4) 大学の社会貢献の形態と効用
3 大学と地域社会のパートナーシップ構築は可能か
 (1) 大学と地域と民衆の関係性——ミッション:何のための大学か
 (2) 大学と社会のパートナーシップの理論・実践問題
 (3) 大学と社会とのパートナーシップ構築の形態と相互関係
 (4) 大学類型による活動優先順位の差異構造
 (5) パートナーシップ類型——コミュニティ連携モデル,エンパワーメントモデル,産官学連携モデル
 (6) 今後の研究課題
第2節 英国高等教育の現実と課題
はじめに
1 英国高等教育の現状
 (1) 高等教育の量的動態
 (2) スタッフ
 (3) ガバナンス
2 近年の英国高等教育改革——2004年高等教育法の意味するもの
3 近年の英国高等教育の焦点的課題
 (1) 大学のリーダーシップ,ガバナンス研究
 (2) 大学種別による統治システムの差異
 (3) 大学評価の基準,方法,公正性
 (4) 大学スタッフの身分,契約関係
 (5) 大学の社会貢献,大学文化の変化
第3節 英国レジデンシャルカレッジの実験——ノーザンカレッジの場合
はじめに
1 レジデンシャルカレッジの英国成人継続教育のなかでの位置づけ——その過去と現在
2 ノーザンカレッジの歴史的性格とその特徴
 (1) ノーザンカレッジの基本的特徴
 (2) ノーザンカレッジの設立経緯とその固有性
3 14年の歩み(1978〜92)とカレッジの役割
 (1) 地域LEAに支えられてきた14年
 (2) 労働組合
 (3) 大  学
4 ノーザンカレッジの教育——学習事業の特色とその教育的価値
 (1) 主要教育事業の特色
 (2) コースの種類と特徴
5 ノーザンカレッジが挑戦し提起しているもの
 (1) 学生の主体形成の困難な闘いとその可能性
 (2) ノーザンカレッジの提起しているレジデンシャルカレッジの教育的価値とそのオルタナティブな方向性
資料1 長期コースカリキュラム(1988/89)
資料2 女性学・1年コース(1990/91)
第4節 社会的排除と高等継続教育の再編構造——ノーザンカレッジの地域再生実践を軸に
はじめに
1 ノーザンカレッジの概要
2 社会的排除概念における英国的文脈
3 英国成人継続教育実践の文脈での社会的不利益層と社会的排除問題
4 ノーザンカレッジの1980年代から90年代前半の教育的実践
5 ノーザンカレッジの地域再生方略の試みと社会的ミッションの探求
 (1) 継続高等教育法(1992)のインパクト
 (2) 1992年継続高等教育法以降の政策的動向
 (3) ノーザンカレッジの役割と課題
第5節 地域に生きる大学——コミュニティ発展型高等教育モデルの可能性を探る
はじめに——オホーツク地域の概観
1 北見市,紋別市,網走市における大学展開の歴史的動向
 (1) 北見市における大学の歴史的展開
 (2) 紋別市の大学展開と撤退
 (3) 網走市での大学展開
2 コミュニティ発展型モデルの吟味
 (1) オホーツク地域の大学を取り巻く環境(ネガティブな面)
 (2) オホーツク地域の大学を取り巻く環境(ポジティブな面)
 (3) オホーツク地域の大学のたどっている3つの軌跡
3 地域の大学とコミュニティ発展との相互関係へのいくつかの示唆


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