アレクサンドロス以後 長いヘレニズムとギリシア世界 Age of Conquests: The Greek World from Alexander to Hadrian (336 BC - AD 138)
価格:6,930円 (消費税:630円)
ISBN978-4-8158-1170-9 C3022
奥付の初版発行年月:2024年09月 / 発売日:2024年09月下旬
ヒト・モノ・アイデアの活発な移動、メガシティや新宗教の出現、市民の政治参加とその浸蝕──。西地中海から中央アジアまでひろがった言語・制度・文化は、在地社会と交わりながらかつてない光景をもたらした。ローマ支配下でも継続したギリシア人の「グローバル」な拡散・統合を、500年のスパンで展望する画期的通史。
アンゲロス・ハニオティス(アンゲロス ハニオティス)
Angelos Chaniotis
1959年アテネ生まれ。ハイデルベルク大学にて博士号・教授資格を取得。ニューヨーク大学教授、ハイデルベルク大学教授、同大学副学長、オクスフォード大学オール・ソウルズ学寮上級研究員等を経て、2010年よりプリンストン高等研究所古代史・古典学教授。本書の他、『ヘレニズム世界の戦争──社会史と文化史』(2005年)をはじめ著作多数。
藤井 崇(フジイ タカシ)
1978年 山口県に生まれる
2003年 京都大学大学院文学研究科修士課程修了
2010年 ハイデルベルク大学哲学部博士課程修了
京都大学白眉センター特定助教、関西学院大学准教授等を経て、
現 在、京都大学大学院文学研究科准教授、Dr. phil.(古代史・刻文学)
著訳書:
クリストファー・ケリー『1冊でわかるローマ帝国』(訳、岩波書店、2010年)
Imperial Cult and Imperial Representation in Roman Cyprus (Stuttgart: Franz Steiner Verlag, 2013)
目次
日本語版へのまえがき
凡 例
地 図
序
第1章 すべてはどうはじまったのか(前356年~前323年)
—— マケドニアからオイクメネへ
父の遺産(前356年頃~前336年)
息子のビジョン(前336年~前331年)—— トロイアからエジプトへ
ペルシアへの道(前331年~前327年)—— 復讐者アレクサンドロス
ポトス(前327年~前324年)—— 限界を目指す欲望
不死へ(前324年~前323年)
アレクサンドロスの遺産
第2章 後継者たち(前323年~前275年)
—— 王国を作った山師たち
継承の問題(前323年)
後継者たち —— 野心の肖像画美術館
ラミア戦争あるいはヘラス戦争(前323年~前322年)
将軍から王へ(前322年~前306年)
帝国の夢(前306年~前281年)
シチリアの冒険
最後の山師 —— ピュロス
東と西の新世界 —— 別々の、しかしつなぎ合わされた世界
第3章 短い3世紀の「古い」ギリシア(前279年~前217年)
—— 生存・自由・覇権を求める闘い
遍在する戦争
新しい蛮族(前279年~前277年)—— ギリシア世界に入るガリア人
クレモニデス戦争(前267年~前261年)
アラトス、そしてアカイア人の興隆(前251年~前229年)
権力の回復者(前239年~前221年)—— ドソンとクレオメネス
「同盟市戦争」(前220年~前217年)—— ギリシア人だけで戦った最後の大戦争
第4章 プトレマイオス朝の黄金時代(前283年~前217年)
短い3世紀におけるプトレマイオス朝の覇権
東部戦線異常あり(前274年~前253年)—— シリア戦争
犯罪の陰に女あり(前246年~前241年)—— ラオディケ戦争とベレニケの髪の房
プトレマイオス朝の最後の勝利 —— ラピアの戦い
第5章 王と王国
バシレイア —— ヘレニズム王権の多様な起源
家族の問題としての王権
新しい行政上の課題 —— 帝国を統治する
都市と王 —— 自治をめぐる闘いと自由という幻想
ヘレニズム王権の軍事的性格
ヘレニズム王の人間的神性
権力を交渉する
君主政を演出する
第6章 連邦と帝国の世界のなかでの都市国家
ポリス —— 現実での衰退と観念での継続
ポリスにあふれる世界
ヘレニズム期の連邦主義 —— 大きな期待と大きな失敗
政治制度
民主政という幻想と金権政治という現実
ヘレニズム期のスター・システム —— 扇動家、僭主、世襲の王家、英雄
第7章 絡まり合い(前221年~前188年)
—— ローマの登場
シュンプロケ —— グローバル・ヒストリーの誕生
「女、火、海」(前229年)—— バルカン半島にローマ人を連れてきた戦争
信頼と忠誠から拡大へ —— ローマの帝国支配への最初の一歩
パロスのデメトリオスと第二次イリュリア戦争(前219年~前218年)
西方の黒雲(前217年~前205年)
大錯綜(前215年~前204年)—— 第一次マケドニア戦争
エジプトの危機と日和見的同盟(前204年~前201年)
ローマ帝国主義の転換点?(前200年~前197年)—— 第二次マケドニア戦争
自由(前196年)—— 宣言とその影響
死にいたる対立(前196年~前189年)—— アンティオコス三世とローマ
アパメイアの和約(前188年)—— 東方ギリシア語圏の歴史の転換点
ギリシアが人士を産まなくなった時
第8章 ギリシア国家からローマ属州へ(前188年~前129年)
習慣としての支配
マケドニア王国の終焉(前179年~前167年)
グラエキア・カプタ(前167年~前146年)—— ギリシアの属州化
同盟王国から属州へ(前159年~前129年)—— アッタロス朝の最後の王たち
搾取としての領土拡張 —— アシアにおけるローマの徴税請負人
第9章 アジアとエジプトのヘレニズム王国の衰亡(前188年~前80年)
東方の「神々の黄昏」
ユダヤでの文化衝突 —— 最高神官から王へ
中央アジアでのギリシア人王国の興隆と衰退
セレウコス朝の内紛と緩慢な死
ゲーム・オブ・スローンズ —— プトレマイオス朝の内戦
第10章 来寇する野心家たちの戦場(前88年~前30年)
戦争をできる自由に焦がれて
ポントス —— 辺境の王国から国際舞台へ
第一次ミトリダテス戦争とスラの台頭
第二次・第三次ミトリダテス戦争とルクルスの野心
対海賊戦争とポンペイウスの台頭
ポンペイウスのローマ期東方の構想
最後のプトレマイオス朝の王たち —— 支配者からローマの主人の庇護民へ
ローマの情事 —— クレオパトラとカエサル
独裁者は死んだ。歓呼を受けるのは誰だ
ヘレニズム最後のドラマ —— アントニウスとクレオパトラ
第11章 ローマ期東方(前30年~138年)
—— 地方の歴史とそのグローバルな背景
地の神々と天の王たち
グローバル・ヒストリーを眺めるギリシア人
アウグストゥスと元首政の形成
ローマ期東方を編成する —— 藩属王と領土併合
ギリシアと小アジアを蘇生する
ネロ、そしてギリシア人の短い自由とユダヤ人の長い闘争
ギリシア人を帝国エリートに統合する —— フラウィウス朝
オイクメネの境界を固める —— トラヤヌスとハドリアヌス
第12章 アウグストゥスからハドリアヌスまでの皇帝、都市、属州(前30年~138年)
人類への神慮の贈り物 —— ローマ皇帝
遠くにあって支配する —— 目にみえる皇帝
テオイ・セバストイ —— 皇帝の神性
属州行政
都市 —— 伝統的なポリス、ローマ植民市、政治生活
第13章 社会経済状況
—— ギリシア都市から「普遍的」ネットワークへ
社会的ヒエラルキーを再編する —— 財産、法的身分、社会的地位
教養ある男たち —— 教育と技能を通じた社会上昇
権力への近さと社会上昇
ヘレニズム期ギリシアの喫緊の課題とその解決の失敗
住めば都 —— ヘレニズム期の移住
職業の専門化と移動性
パクス・ロマナ —— 継承された緊張と新たな環境
第14章 社会と文化の流行
—— 恩恵施与者、自発団体、エペボス、運動競技者、女性、奴隷
トレンドとイノベーションを突き止める
「エヴェルジェティズム」—— 恩恵施与、社会的名声、政治的権力
自発団体
競技祭文化とスポーツ・娯楽の国際的スター
都市の価値観と市民のアイデンティティを形成する
—— エペベイアとギュムナシオン
新しい結婚様式と女性の可視化
シェイズ・オブ・グレイ —— ヘレニズム世界とローマ期東方の奴隷制
第15章 都市の儀礼から大神主義へ
—— コスモポリタニズム世界の諸宗教
世界の流行と個人の経験
「長いヘレニズム期」の宗教の、何が「ヘレニズム的」なのか
祭 礼
伝統的な神々への嗜好の変化
エジプトとエジプト化する宗教
ミトラ
最高神、ユダヤ教の影響、一神教的傾向
奇跡の時代
耳を貸したまえ —— 神的なものとの個人的な交流
伝統的な密儀宗教
来 世
宗教のイノベーション —— 宗教家、宣教師、「聖人」
キリスト教と宗教的不寛容のはじまり
第16章 ギリシア人とオイクメネ
六次の隔たり —— 古代の「グローバル化」
接続可能性 —— 小さな世界
移動する人々
文化の一体化と地域の伝統
訳者あとがき
研究案内と史料
文献一覧
年 表
図版一覧
索 引