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エドワード・ギボンの啓蒙野蛮と宗教 I

野蛮と宗教 I エドワード・ギボンの啓蒙 Barbarism and Religion, vol. 1

A5判 340ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-1041-2 C3022
奥付の初版発行年月:2021年10月 / 発売日:2021年10月中旬

内容紹介

ヨーロッパの文明につきまとう「野蛮と宗教」という主題。それを壮大な世界史のなかで描き上げた歴史家ギボンの生涯を軸に、多様な啓蒙思想との出会いから、『百科全書』との対決、ローマ帝国史の着想までをたどる。『マキァヴェリアン・モーメント』の著者によるもう一つの主著、ついに邦訳開始。

前書きなど

本書は、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を中心とするいくつかの研究のうち、最初に刊行されるものである。私の焦点はしばしば、かの偉大な書物の本文に置かれるだろうし(この第I巻には当てはまらないけれども)、『衰亡史』を読むのに有益だと思われる様々なテクストに置かれることもあるだろう。このように焦点を拡大するのは、十八世紀における歴史叙述と他の知的活動を描き出すことで、より大きな舞台装置のなかにギボンの歴史書と歴史家としての人生を位置づけるためである。そうすることで我々は、『衰亡史』をその時代と文化の産物として理解できるようになるだろう。二〇世紀の終わりにおいても〔本書第I巻の出版は一九九九年〕、いくつかの分野でギボンが成し遂げた業績を検証し、その評価を定めることができる専門家は存在するだろう。その場合、ギボンは彼らと同時代の同等の研究者たちと同じように扱われ、敬意を込めて批判の対象とされることもある。しかし、私がここに提出する著作は、前述のとおり別の目的をもっている。『野蛮と宗教』はローマ帝国の歴史叙述への貢献ではなく、十八世紀のヨーロッパ文化の歴史叙述への貢献を目指しているのである。

本書ができあがるまでには長い時間がかかった。その経緯をここで要約しておきたい。一つには、そうすることが、感謝すべき多くの恩義に報いるための手始めとなりうるからであるが、しかしそれ以上に、この著作の性格を読者に理解してもらうのに役立つだろうからである。この主題の書物を書くという考えが最初に思い浮かんだのは、一九七六年一月のローマのパガニカ広場においてであった。私は、アメリカ芸術科学アカデミーとエンサイクロペディア・イタリアーナが主催する会議に招待されていた。ギボンの〔『衰亡史』〕第一巻の刊行から二〇〇周年――一九七六年は多くの二〇〇周年記念の年だった――と、西ローマ帝国の最後の皇帝ロムルス・アウグストゥルスの廃位一五〇〇周年との双方を記念するための会議であった。我々はカピトリーノの丘の階段の上――そこではギボンが一七六四年の一〇月十五日に座って瞑想していたかもしれない――……

[「序文」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

J・G・A・ポーコック(ジェー ジー エー ポーコック)

J. G. A. Pocock
1924年ロンドン生まれ、ニュージーランドのクライストチャーチで育つ。ケンブリッジ大学にて博士号取得。現在、ジョンズ・ホプキンズ大学名誉教授。思想史研究における世界的第一人者。邦訳に『マキァヴェリアン・モーメント』(名古屋大学出版会、2008年)、『徳・商業・歴史』(みすず書房、1993年)、『島々の発見』(名古屋大学出版会、2013年)がある。本書『野蛮と宗教』により、アメリカ哲学協会のジャック・バーザン賞を受賞。

田中 秀夫(タナカ ヒデオ)

1949年、滋賀県に生まれる。1978年、京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。甲南大学教授、京都大学教授、愛知学院大学教授などを経て、現在、京都大学名誉教授、博士(経済学)。著訳書『スコットランド啓蒙思想史研究』(名古屋大学出版会、1991年)、『啓蒙と改革』(名古屋大学出版会、1999年)、『アメリカ啓蒙の群像』(名古屋大学出版会、2012年)、『近代社会とは何か』(京都大学学術出版会、2013年)、『スコットランド啓蒙とは何か』(ミネルヴァ書房、2014年)、ポーコック『徳・商業・歴史』(訳、みすず書房、1993年)、ポーコック『マキァヴェリアン・モーメント』(共訳、名古屋大学出版会、2008年)、ロビンズ『イギリス18世紀のコモンウェルスマン』(訳、ミネルヴァ書房、2020年)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例
謝辞
参照、引用、翻訳について

序 文

第I部 イングランドとスイス 1737-63年

第1章 パトニー、オクスフォード、イングランド啓蒙の問題
ギボン家、そして教会と国家の危機
スタワヘッド訪問とアングリカンの歴史叙述への冒険
オクスフォードのギボン――権威の危機

第2章 ローザンヌとアルミニウス派の啓蒙

第3章 若きギボンの再教育
――方法、不信仰、歴史への転回

第4章 ハンプシャー民兵軍と近代の問題

第5章 野営での研究
――博読と語りの探究

第II部 パリとの出会いと博学の擁護 1758-63年

第6章 英仏の啓蒙における学識の政治学

第7章 碑文・文芸アカデミーにおける博学と啓蒙

第8章 ダランベールの『百科全書序論』
――啓蒙哲学者の歴史認識

第9章 『文学研究試論』
――想像力、アイロニー、歴史

第10章 パリと文人
――経験と回想

第III部 ローザンヌとローマ、ある主題への旅 1763-64年

第11章 ローザンヌへの復帰と博学の追究

第12章 ローマへの旅と意図の変化

エピローグ ギボンと「異なるリズム」


訳者あとがき
参照文献
索引


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