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 一般均衡から経験科学へカルドア 技術革新と分配の経済学

カルドア 技術革新と分配の経済学 一般均衡から経験科学へ

A5判 256ページ 上製
定価:5,400円+税
ISBN978-4-8158-1006-1 C3033
奥付の初版発行年月:2020年11月 / 発売日:2020年11月中旬

内容紹介

シュンペーターとケインズの融合や格差問題など、現代的領域の先駆者として理論に革新をもたらす一方、国連職員、開発経済学者、英労働党顧問などのさまざまな顔を通じて社会に深くかかわり、現実に即した経済学の必要を訴え続けた稀代のエコノミストの全体像を提示する。

前書きなど

本書は、ニコラス・カルドア(Nicholas Kaldor, 1908-1986)の技術革新と分配の経済学を中心に、彼の経済思想の形成過程を、一般均衡から経験科学への変遷の上で明らかにするばかりでなく、カルドアの経済学の現代的意義を探るものでもある。カルドアは現代経済学の様々な領域に対して創造的な才能を発揮した、20世紀を代表するイギリスの経済学者である。ジョン・メイナード・ケインズがこの世を去った後の「ケンブリッジ学派」の支柱として活躍し、政治家や経済学者らからは親しみをこめて「ニッキィ」と呼ばれた。カルドアのキャリアと功績は、経済理論家、ケインジアン、税務顧問、開発経済学者、イギリス労働党の経済顧問、マネタリズムと新古典派経済学の批判者、と多岐にわたっている。とりわけ戦後の労働党内閣の経済顧問として、選択的雇用税の導入、イギリスのEC加盟への反対、サッチャー政権への厳しい批判など、第二次世界大戦後のイギリス社会の方向性に多大な影響を与えた。社会科学者であるフランシス・スチュアート(オックスフォード大学名誉教授)とメアリー・カルドア(LSE教授)は、愛妻クラリスとの間に生まれた娘である。

「ケンブリッジ学派」とは、もともとアルフレッド・マーシャルを祖とする「ケンブリッジ学派」を意味する。カルドアが属した「ケンブリッジ学派」は、その次の世代にあたる。ジョーン・ロビンソン、リチャード・カーン、ピエロ・スラッファらケインズの薫陶を受けた経済学者たちが集った学派である。彼らは、ポール・サミュエルソンやロバート・ソローらの「新古典派総……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

木村 雄一(キムラ ユウイチ)

1974年生まれ。2005年、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。一橋大学社会科学古典資料センター助手、埼玉大学教育学部・教育学研究科准教授、Visiting Professor of Université Lumière Lyon 2, Triangle-ISH等を経て、現在、日本大学商学部准教授、博士(経済学)。著書、『LSE物語』(NTT出版、2009)、『福祉の経済思想家たち』(共著、ナカニシヤ出版、2007)、『市場社会論のケンブリッジ的展開』(共著、日本経済評論社、2009)、『進化経済学の諸潮流』(共著、日本経済評論社、2011)、『文化経済学』(共著、ミネルヴァ書房、2016)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 ニコラス・カルドア
――一般均衡から経験科学へ
1 ニコラス・カルドア――現代経済学の巨人
2 カルドアをめぐる先行研究――課題と方法

第1章 現実の経済社会への関心
――ハンガリーからイギリスへ
1 オーストリア=ハンガリー二重帝国
2 カルドアの誕生――エリートユダヤ人の家庭にて
3 第一次世界大戦とインフレーション
4 ドイツ・ベルリン大学
5 LSE――アリン・ヤングと「ロビンズ・サークル」
6 アメリカ留学とその後
7 小 括

第2章 一般均衡理論の探究
――ミクロからマクロへ
1 1930年代の経済学とカルドア
2 均衡経済学
3 企業の理論と不完全競争
4 厚生経済学と補償原理
5 オーストリア資本理論と景気循環論
6 賃金と雇用、投機と流動性選好
7 ミクロからマクロへ
8 小 括

第3章 戦争と戦後の国際経済秩序
――応用経済学者としてのデビュー
1 ケンブリッジのLSE
2 戦費調達と国民所得計算、社会保障と完全雇用
3 国際経済秩序の再建――LSE辞職、国連、そしてケンブリッジ
4 小 括

第4章 ケンブリッジ学派の主導者
――成長と分配、法則と実証、二部門モデル
1 カルドアとケンブリッジ学派
2 成長と分配モデル――理論から法則へ
3 「ジャン・バティスト・カルドア」
4 シュンペーターとケインズの融合――技術革新と分配の経済学
5 資本主義と経済成長
6 循環的・累積的因果関係論と収穫逓増
7 未完成の二部門モデル
8 小 括

第5章 エコノミスト・カルドア
――理論と実践
1 多才な実践派エコノミスト
2 労働党政権の経済顧問――税制改革の提言
3 EC加盟反対の論陣
4 開発経済学の実践と世界経済の安定
5 ミルトン・フリードマンの「マネタリズム」との対決
6 マーガレット・サッチャーの「新自由主義」への糾弾
7 小 括

終 章 カルドアの遺産
1 晩年の貢献
2 資本主義、技術革新、分配の経済学
3 一般均衡から経験科学へ
4 社会改革のエコノミスト
5 カルドアの遺産


参考文献
ニコラス・カルドアの年譜
あとがき
人名・事項索引


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