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世界史のなかの東アジアの奇跡

世界史のなかの東アジアの奇跡

A5判 776ページ 上製
定価:6,300円+税
ISBN978-4-8158-1000-9 C3022
奥付の初版発行年月:2020年10月 / 発売日:2020年10月上旬

内容紹介

脱〈西洋中心〉のグローバル・ヒストリー。――豊かさをもたらす工業化の世界的普及は、日本をはじめとする「東アジアの奇跡」なしにはありえなかった。それは「ヨーロッパの奇跡」とは異なる、分配の奇跡だった。地球環境や途上国の行方も見据え、複数の発展径路の交錯と融合によるダイナミックな世界史の姿を提示する、渾身のライフワーク。

前書きなど

これまでのほとんどの世界史は、ヨーロッパにおける近代の成立に決定的な意義を見いだしてきた。社会経済史学においては、イギリス産業革命を生み出した「ヨーロッパの奇跡」が、その後の2世紀における工業化の世界的普及の出発点として、特別な意義を与えられてきた。しかし、20世紀を終わって、16世紀以降の近代世界史を振り返ってみた場合、ヨーロッパの奇跡は、結局ごく少数の工業国家を生み出し、欧米先進国の国民の生活水準の向上をもたらしたにすぎなかったように見える。

これに対し、20世紀後半に生じた東アジア(日本、NIES、ASEAN、中国からなる東アジア、東南アジア諸国)の高度成長と生活水準の上昇、いわゆる「東アジアの奇跡」は、世界人口にはるかに重要なインパクトを与えたように思われる。それまで欧米に集中していた工業化がこれらの諸国を突破口にして発展途上国に広がり、従来とは比較にならないほど多くの人々を経済発展の波に巻き込んだからである。日本、NIESは欧米先進国と肩を並べるようになった。ASEAN、中国の成長によって、東アジア全体の生活水準も急速に向上した。成長の波はいまや他の東南アジア、南アジア諸国にも広がりつつある。それは、世界経済全体の成長に貢献したばかりではない。19世紀以降深刻化していた世界の貧富の格差はこれまでのように急速に悪化しなくなった。いわゆる南北問題に歯止めがかかったのである。われわれは、前世紀よりは世界の富がよ……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

杉原 薫(スギハラ カオル)

1948年、京都市に生まれる。1971年、京都大学経済学部卒業。1976年、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。大阪市立大学助教授、ロンドン大学上級講師、大阪大学教授、京都大学教授、東京大学教授、政策研究大学院大学教授などを経て、現在、総合地球環境学研究所特任教授、博士(経済学)。著書『アジア間貿易の形成と構造』(ミネルヴァ書房、1996年、日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞)、Japan, China, and the Growth of the Asian International Economy, 1850-1949(編著, Oxford University Press, 2005)、『歴史のなかの熱帯生存圏――温帯パラダイムを超えて』(共編、京都大学学術出版会、2012年)、Labour-Intensive Industrialization in Global History(共編, Routledge, 2013)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 東アジアの奇跡の意味するもの
1 本書の課題
2 ヨーロッパの奇跡から東アジアの奇跡へ
3 グローバル・ヒストリーへの三つの視点
4 本書の構成

第I編 東アジア型経済発展径路の成立と展開

第1章 勤勉革命径路の成立
1 はじめに
2 勤勉革命径路
3 西ヨーロッパとの比較
4 日本の位置

第2章 労働集約型工業化の成立と展開
1 はじめに
2 労働集約型工業化の成立
3 労働集約型工業化の展開
4 むすび

第3章 資源節約型径路の発見
1 はじめに
2 「化石資源世界経済」の興隆とアジアの対応
3 資源集約型径路から資源節約型径路へ
4 むすび

補論1 南アジア型経済発展径路の特質
1 はじめに
2 植民地化による「逸脱」とその性格
3 生存基盤の確保
4 むすび

第II編 近代世界システム像の再構築

第4章 近代国際経済秩序の形成と展開
――帝国・帝国主義・構造的権力
1 はじめに
2 地域経済秩序の併存体制――16-18世紀
3 帝国主義的国際経済秩序――19世紀-20世紀前半
4 開発主義的国際経済秩序――20世紀後半
5 むすび

第5章 近代世界システムと人間の移動
1 はじめに
2 「移民の世紀」の形成と構造
3 「大西洋経済」の発展とヨーロッパからの移民
4 アジアからの移民と地域ダイナミズム
5 むすび

第6章 19世紀前半のアジア交易圏
1 はじめに
2 アジア貿易統計のカバレッジ
3 アヘン貿易パラダイム
4 アジア間貿易の構造と趨勢
5 アジア間貿易の商品別構成
6 むすび

第7章 世界貿易史における「長期の19世紀」
1 はじめに
2 1840年における世界貿易の構造
3 世界貿易の構造変化
4 むすび 

第8章 東アジアにおける工業化型通貨秩序の成立
1 はじめに
2 国際通貨体制と東アジア「切り下げ圏」
3 「切り下げ圏」と輸入代替工業化
4 むすび 

補論2 イギリス帝国主義・シティー・工業化の世界的普及
――ケイン・ホプキンズ『ジェントルマン資本主義の帝国』の射程
1 はじめに
2 工業化の世界的普及における金融・サービス利害の役割
3 シティ・植民地支配・東アジアの工業化
4 脱植民地化・冷戦体制・戦後東アジアの成長 
5 むすび 

第III編 戦後世界システムと東アジアの奇跡

第9章 アジア太平洋経済圏の興隆
1 はじめに
2 冷戦体制と「東アジアの奇跡」
3 国際分業体制の大転換
4 文明の融合と共生
5 むすび

第10章 東アジア・中東・世界経済
――オイル・トライアングルと国際経済秩序
1 はじめに
2 オイル・トライアングルの成立と日本
3 オイル・トライアングルの拡大と東アジア
4 発展途上国への影響
5 むすび

第11章 中東軍事紛争の世界経済的文脈
――石油・兵器・資金の循環とその帰結
1 はじめに
2 オイル・トライアングルの発展
3 経済の軍事化と国際資金循環
4 むすび

第12章 戦後世界システムとインドの工業化
1 はじめに
2 インドの輸入代替工業化の特質
3 自由化への試みとその挫折
4 アジア太平洋経済圏との接触
5 むすび

第13章 グローバリゼーションのなかの東アジア
――1990年代の軌跡
1 はじめに
2 労働集約型工業化の拡大と深化
3 資源節約型発展径路の屈折
4 むすび

補論3 熱帯生存圏と「化石資源世界経済」の衝撃
1 はじめに
2 熱帯生存圏の形成とその特質
3 「化石資源世界経済」の衝撃
4 熱帯バイオマス社会の再編
5 むすび 

終 章 総括と展望
1 二つの径路の融合
2 環境経済史のなかの東アジア
3 持続的発展をどう捉えるか

参照文献
あとがき
初出一覧
図表一覧
索引


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