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 グローバルな記憶文化の形成ヒロシマ

ヒロシマ グローバルな記憶文化の形成 Hiroshima: The Origins of Global Memory Culture

A5判 424ページ 上製
定価:4,800円+税
ISBN978-4-8158-0994-2 C3021
奥付の初版発行年月:2020年07月 / 発売日:2020年07月中旬

内容紹介

原爆とホロコーストの交点へ——。かつて「75年間は草木も生えない」と言われた都市は復興を遂げ、平和記念公園は「穏やかな」聖地と化した。どのようにして? 追悼・記念や観光をめぐる記憶の政治、証言とトラウマ、絡み合う犠牲者言説などに注目し、世界のなかのヒロシマの位置を問い直す挑戦作。

前書きなど

私の最初の著作『ヒロシマ』を日本語に翻訳できないか、という問い合わせを数年前に若尾祐司さんからいただきました。日本の読者のみなさんに、直接日本語で自分の研究を伝えられる機会が得られることに、私はとても感激しました。というのも、この本は「グローバルな記憶文化」を副題にしていますが、なによりも「日本の歴史」を考察しています。それに、当然のことですが、参考にした史料の多くも日本語で書かれていますから、日本語で読まれ、日本語で読みたい読者の誰もが手に取れる本に、本来すべき性格のものだからです。

この本の執筆に際し、日本の数多くのアーキビスト、歴史家、図書館職員、市民運動家のみなさんのお力添えを得ました。ですから、この本が日本語に翻訳されるのはとても幸福なことでもあります。取材や調査の手助けをしていただいた広島、長崎をはじめ全国の方々に、この翻訳書『ヒロシマ』を通して、私の思いと感謝の気持ちをお伝えすることができます。本書を、執筆に協力してくださった多くのみなさんにささげたいと思います。

そして、若尾祐司さん、竹本真希子さん、髙橋優子さん、西井麻里奈さんからなる翻訳者の皆さんにも心から感謝いたします。彼らは、とても素晴らしい仕事をしてくれました。私が使用した国内外の数多くの史料の原文を確認する作業に精力的に取り組んでくれました。この本は私の博士論文も研究に基づいて書かれています。かなり以前の作業であるため、元の史料を手元で見つけられないことや、メモした事柄を正確に確認することができないといったこともありました。翻訳者のみなさんは、史料を突き止めて必要な校訂をほどこすためにたゆまぬ努力をされました。この翻訳を成功させようと、みなさんが払われた努力に深く感謝します。本当にありがとうございま……

[「日本語版へのはしがき」冒頭より]

著者プロフィール

ラン・ツヴァイゲンバーグ(ラン ツヴァイゲンバーグ)

1976年、イスラエル生まれ。ニューヨーク市立大学にて博士号(歴史学)取得。現在、ペンシルヴェニア州立大学准教授。本書『ヒロシマ』により、米国アジア研究協会のジョン・ホイットニー・ホール著作賞を受賞。

若尾 祐司(ワカオ ユウジ)

1945年生まれ。名古屋大学名誉教授。法学博士。
著作:『核開発時代の遺産』(共編著、昭和堂、2017年)

西井 麻里奈(ニシイ マリナ)

1988年生まれ。大阪大学大学院文学研究科助教。博士(文学)。
著作:『広島 復興の戦後史』(人文書院、2020年)

髙橋 優子(タカハシ ユウコ)

1981年生まれ。九州大学大学院地球社会統合科学府博士後期課程修了。博士(学術)。
著作:“Identities Surrounding a Cenotaph for Korean Atomic-bomb Victims,” in Korean Studies, 42(2018)

竹本 真希子(タケモト マキコ)

1971年生まれ。広島市立大学広島平和研究所准教授。博士(政治学)。
著作:『ドイツの平和主義と平和運動』(法律文化社、2017年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡 例
日本語版へのはしがき

序 章
ヒロシマと記念の政治
イスラエル並びに西側陣営におけるホロコーストとヒロシマ
異なる知のかたち——戦争による破断、そしてパラダイムとしての体験とトラウマの登場

第1章 平和の閃光
 ——広島における都市計画・記念・政治 一九四五~五五年
はじめに——原爆を説明する
記念——「原爆が平和をもたらした」
ヒロシマを売り込む(1)——観光産業、資金調達、原爆遺産のはじまり
ヒロシマを売り込む(2)——一九四九年広島平和記念都市建設法
丹下健三と広島平和記念公園の形成
結び——ヤド・ヴァシェム、ヒロシマ、そして一九四〇年代

第2章 近代の不安
 ——恥と誇りの狭間の生存者たち 一九四五~六〇年
はじめに——感情の反転と生存者の創出
変遷——感情のレジームと生存者たちの反応
選択——広島の生存者と反核運動
原爆乙女と感情包摂の論理
結び——恥と誇りの狭間で

第3章 社会主義者の原爆と平和の原子力
 ——近代性の展示と平和への闘い 一九五五~六二年
はじめに——不穏な一九五〇年代
反核運動の台頭と没落
冷戦下の近代性——平和記念公園、「原子力平和利用」、広島復興大博覧会
広島城の奇妙な物語——原爆の影のなかの郷愁と観光産業
結び——広島、米国、そして広島史の基軸

第4章 心の傷
 ——ロバート・リフトン、PTSD、生存者とトラウマの精神医学的再評価
はじめに——精神医学、トラウマ、ヒロシマとその他の生存者
日本の精神医学と原爆
西洋の精神医学と生存者の補償議論
ロバート・リフトンの広島とPTSDの誕生
結び——核の恐怖、生存者、広島の忘れ去られた役割

第5章 広島・アウシュヴィッツ平和行進
はじめに——証言の世紀
世界の虐殺犠牲者の団結——平和行進の出発
広島のアイヒマン——日本人の目から見たホロコースト
シンガポール——「血債」
生存者の国で——イスラエルでの平和行進
死の形見の交換——平和行進、アウシュヴィッツに到着
結び——広島・アウシュヴィッツ委員会の結成と連帯のための動員

第6章 平和の聖地
 ——暴力、観光産業、平和記念公園の聖地化 一九六三~七五年
はじめに——神聖なるものの利用
平和の聖堂——原爆ドームの保存
自衛隊のパレード、暴徒と化す学生、暴走族
神聖なるもの——原爆資料館のリアリズム論争
結び——ヤド・ヴァシェムとアウシュヴィッツにおける観光産業・暴力・政治

第7章 赤リンゴの皮をむく
——広島・アウシュヴィッツ委員会と広島・アウシュヴィッツ記念館 一九七三~九五年
はじめに——追悼のグローバル化
はじまり——記念館キャンペーンの開始
広島とアウシュヴィッツにおけるローマ・カトリック教会の普遍主義
国際的な文脈——イスラエル、ポーランド、そしてユダヤ人の方向転換
犠牲をめぐる競争とアラブの抗議
アウシュヴィッツ記念館計画の崩壊
結び——アウシュヴィッツ記念館とヒロシマの記憶の戦争

終 章 もうひとつの爆心地(グラウンド・ゼロ)
——ヒロシマ、アウシュヴィッツ、九・一一、それらの間の世界

謝 辞
訳者あとがき

主要参考文献
図版一覧
索 引


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