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 南アジアの開発と司法試される正義の秤

試される正義の秤 南アジアの開発と司法

A5判 298ページ 上製
定価:5,400円+税
ISBN978-4-8158-0976-8 C3032
奥付の初版発行年月:2020年02月 / 発売日:2020年02月中旬

内容紹介

文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示す。

前書きなど

インドにおいて1970年代後半から展開した公益訴訟(public interest litigation)は、世界にもまれにみる司法積極主義として注目を集めた。この訴訟形態を創造することにより、インドに広く存在する文字も読めないような社会的弱者層の人権を守り、彼らに正義を届けるという大義にもとづき、最高裁判所(最高裁)が――一般にその権限の発動については最も受動的な位置にあるにもかかわらず――いわば能動的な活動を展開しはじめたのである。

インドを中心とする南アジア諸国には世界人口の15%近くが集中し、かつ貧困線以下で生活するいわゆる貧困層の人口も、今なおこの地域でおよそ3億人と世界の3割強を占める。こうした膨大な社会的弱者層の権利侵害の問題が最高裁にまで持ち込まれることは、世界最大の民主主義を誇るインドにおいても、1970年代半ばまでほぼ皆無であった。

ところが、1970年代後半に至ると、インド最高裁は、審理も開始されずに収監され続けている人々や、前貸しによる債務を負わされて奴隷的な労働を強いられる慣行に苦しむ人々に、手を差し伸べはじめた。具体的には、新聞記事にもとづく訴えや、訴訟を起こす知識も資力もない人々からの手紙を正式に……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

佐藤 創(サトウ ハジメ)

1971年生
1997年 早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了
2009年 ロンドン大学SOAS経済学研究科博士課程修了,Ph. D.
    日本貿易振興機構アジア経済研究所主任研究員等を経て
現 在 南山大学総合政策学部教授

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡例

序 章 岐路に立つ公益訴訟という試み

第I部 インド

第1章 開発政策と司法積極主義の変遷
1 司法制度の概観
2 財産権をめぐる政権と司法の対立
3 「公益」をめぐる政権と司法の協働的対立
4 経済社会の発展段階と司法

第2章 公益訴訟の展開
――その光と陰
1 公益訴訟の始まりと確立
2 公益訴訟の拡大
3 公益訴訟の迷走
4 押し寄せ続ける最高裁への手紙

第3章 公益訴訟とはなにか
――伝統的訴訟モデルとの相違
1 訴訟手続
2 権利と救済手段
3 現代型訴訟としての公益訴訟
4 インド固有の特徴と普遍的な特徴

第4章 公益訴訟を可能にする諸要因
――制度変容のダイナミズム
1 令状管轄権
2 令状管轄権の継受と展開
3 公益訴訟の制度的条件
4 公益訴訟の政治経済的条件

第5章 公益訴訟と上位裁判所裁判官の任命方法
――政権と司法の綱引き
1 先任慣行の確立
2 裁判官任命方法に関する判例の展開
3 憲法第99条改正違憲判決
4 インド司法の抱える問題

第II部 他の南アジア諸国

第6章 パキスタンにおける公益訴訟の展開
――軍政と民政の反復と司法
1 司法制度の概観
2 民政復活と公益訴訟の始まり
3 軍事政権の復活・終焉と公益訴訟
4 行き過ぎた司法積極主義の功罪

第7章 バングラデシュにおける公益訴訟の展開
――政争に巻き込まれる司法
1 司法制度の概観
2 民主化後の公益訴訟の展開
3 非政党暫定政府制度の廃止と公益訴訟
4 政党政治の混迷と基軸のない司法の関与

第8章 スリランカとネパールにおける公益訴訟の展開
1 スリランカ公益訴訟の確立
2 スリランカ公益訴訟の特徴
3 ネパール憲法の変遷
4 ネパール公益訴訟の展開とその特徴

終 章 公益訴訟の両義性と政治の司法化
――南アジアの開発と司法

参考文献
資料
あとがき
事項索引
判例索引


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