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戦間期アメリカの教育哲学と実践デューイと「生活としての芸術」

プリミエ・コレクション119
デューイと「生活としての芸術」 戦間期アメリカの教育哲学と実践

A5判 266ページ
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-8140-0390-7 C3310
奥付の初版発行年月:2022年01月 / 発売日:2022年01月下旬
発行:京都大学学術出版会  
発売:京都大学学術出版会
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内容紹介

1920年代から30年代、教育・哲学・芸術の専門家たちが連携し合う稀有な時代、世界を襲う大恐慌に生活物資が切り詰められるなか、教育哲学者デューイは、心を豊かにする芸術の必要を説く。

著者プロフィール

西郷 南海子(サイゴウ ミナコ)

1987年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。日本学術振興会特別研究員(DC1)を経て,2019年より大阪国際大学短期大学部非常勤講師。専門分野は教育哲学,美術教育。

主な著作
「A. C. バーンズとデューイの協働――バーンズ財団における⺠主主義のヴィジョンについて」(『日本デューイ学会紀要』第59号,2018年,日本デューイ学会研究奨励賞受賞),「ジョン・デューイの『子ども中心主義』批判――子どもの表現活動をめぐるM. ノームバーグとの論争に着目して」(『京都大学教育学研究科紀要』第65号,2019年),「タテカンの空間論――大学の縁に立つということ」(『世界』岩波書店,2019年),「世界大恐慌と連邦美術計画――1930年代アメリカにおける『万人のための芸術』」(『同志社アメリカ研究』第56号,2020年),「コロナ禍と『子ども文化』――パンデミックを生き抜く物語」(総合人間学会『コロナ禍を生きぬく,問いあい・思いやる社会を創造できるか』本の泉社,2021年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

口 絵

序 章 ジョン・デューイがいた時代
 1 はじめに
 2 「アメリカ美術」の台頭
 3 本書の課題と方法
 4 本書の構成
 コラム0 1920年代は「サッコ・ヴァンゼッティ事件」から始まった

第Ⅰ部 デューイの教育哲学における生活と芸術

第1章 デューイにとっての生命・教育・コミュニケーション
 1 デューイが生きた社会と哲学
   1-1.アメリカ史とデューイ
   1-2.「自己更新の過程としての生命」という教育哲学
 2 生命と教育の結びつき
   2-1.Life=ライフ=生命?
   2-2.進化に目的がないのであれば
 3 コミュニケーションの〈中に〉ある社会
   3-1.「トランスミッションに・よ・っ・て・」
   3-2.文明社会におけるコミュニケーションのあり方
 4 コミュニケーションの広がりから「グレート・コミュニティ」へ
 コラム1 1919年、デューイ来日

第2章 民主主義が「生き方」であるということ
 1 民主主義の形骸化に向き合う
   1-1.「自分が投票したところで何も変わらない」
   1-2.ソ連とドイツ、二つの全体主義の間で
 2 民主主義の何が創造的なのか
   2-1.創造的な個人を育てる
   2-2.経験の質を豊かにすることへの「信仰」
 3 生き方としての民主主義がアートであるということ
 コラム2 ハル・ハウスに「窯」があった

第3章 バーンズ財団における多文化のハーモニー
 1 「普通の人びと」の美的経験の場として
   1-1.デューイ芸術論の特徴
   1-2.バーンズ財団の設立
 2 財団の展示内容と方法
   2-1.「壁面絵」を通じた作品との対話
   2-2.アンサンブルに身をゆだねる
 3 ハーレム・ルネサンスと人びとのハーモニー
   3-1.黒人文化復興運動の牽引者としてのバーンズ
   3-2.デューイへの影響
 4 “Learning to see”を実現する
 コラム3 ホレース・ピピンを知らないわたしたち

第4章 進歩主義教育における芸術の位置づけ
 1 進歩主義教育とは
   1-1.進歩主義教育の流れ
   1-2.デューイの「子ども中心主義」批判
   1-3.進歩主義教育の諸相と進歩主義協会
 2 誌上シンポジウムにおけるノームバーグとデューイ
   2-1.『ニュー・リパブリック』を舞台として
   2-2.デューイの応答
   2-3.深刻化する大恐慌と教育への圧迫
 3 表現活動を通じた社会的連帯
   3-1.子ども個人に対するノームバーグの洞察
   3-2.デューイの反論
   3-3.デューイによる芸術教育擁護
 4 経験の分断を乗り越える芸術教育へ
 コラム4 マーガレット・ノームバーグと北川民次

第Ⅱ部 「芸術の民主化」と「芸術による民主化」

第5章 生活を描くリアリズムの教育哲学的意義
 1 ジョン・スローンと北川民次
   1-1.「芸術」の転換を目指して
   1-2.北川民次を取り上げる意味
 2 北川民次のニューヨーク時代
   2-1.フランス留学派との対比において
   2-2.「ジ・エイト」の美術史的意義
 3 リアリズムの諸相
   3-1.北川民次のスローン思想の受容
   3-2.スローンの“Realism”批判
   3-3.北川の児童画における「レアリズム」
 4 人格形成過程としての美術教育
 コラム5 失われた巨大壁画〜ロックフェラーセンターという場所で

第6章 デューイたちのメキシコ美術教育へのまなざし
 1 世界大恐慌下の芸術教育の意義
   1-1.必要なのはパンか、絵の具か
   1-2.初めての国際児童画展の開催(1934年)
 2 革命後メキシコの新教育と美術
   2-1.国民統合の手段としての美術
   2-2.デューイのメキシコ訪問
   2-3.メキシコ文部省の方針転換
 3 生活の中で生活を描く
   3-1.タスコ野外美術学校における実践
   3-2.ヴィジョンと創造的衝動
 4 人種や国籍を超えた美術教育の構想
   4-1.アメリカに戻ろうとしていた北川
   4-2.リトル・レッド・スクール・ハウスとの接点
 5 アメリカとメキシコ、交差するまなざし
 コラム6 「描こうとする精神」

第7章 世界大恐慌と連邦美術計画――芸術を通じたコミュニティの再創造
 1 大恐慌が生み出した連邦美術計画
   1-1.ニューディール政策の中の美術
   1-2.連邦美術計画はどのように論じられてきたか
 2 連邦美術計画の立案過程と内容
   2-1.プロジェクト始動まで
   2-2.生きる術としてのアート
   2-3.連邦美術計画の諸部門
   (1)ファイン・アート部門
     (壁画、彫刻、イーゼル絵画、グラフィックアート、写真)
   (2)プラクティカル・アート部門
     (インデックス・オブ・アメリカン・デザイン、ポスター、工芸)
   (3)美術教育(コミュニティ・アート・センター)
 3 ホルジャー・ケーヒルの思想
   3-1.アイスランド移民としてアートに出会う
   3-2.デューイの芸術論を引き継いで
 4 〈参加〉による公共性の創出
   4-1.市民としてのアーティスト、アーティストとしての市民
   4-2.現代によみがえる連邦美術計画
 コラム7 連邦美術計画から強制収容所へ〜日系人女性ミネ・オークボ

終 章 わたしたちにとっての「生活としての芸術」

あとがき
引用文献一覧
図版一覧
索引(人名/事項)


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