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 行政機構の確立と明治社会監獄の近代

監獄の近代 行政機構の確立と明治社会

A5判 434ページ 上製
定価:6,000円+税
ISBN978-4-7985-0273-1 C3021
奥付の初版発行年月:2020年01月 / 発売日:2019年12月中旬

内容紹介

明治政府は従来とは大きく異なる国家体制や法制度を整えながら近代化をめざした。明治の社会において、人びとは様々な自由と権利を獲得し経済発展による恩恵を享受した一方で、大きな社会変動にうまく適応できず、貧困に陥ったり、反政府活動や政治運動に身を投じたりするなどして犯罪者となり、監獄に収容されることも決して珍しくなかった。

かかる犯罪者を社会から隔離し、更生させ、再び社会復帰させる場としての監獄の諸制度も作られていった。新たな時代の監獄を、明治社会のなかでどのように位置づけていくのか。監獄行政に携わった人びとは試行錯誤を繰り返し、不平等条約の解消にも関わる国際的な水準を目指して改良を進めていった。

本書では、監獄行政の視点から社会との相互作用に注目し、明治期において監獄行政の組織やその仕組みがいかなるかたちで作られ、受刑者の処遇が行われたのかを考察する。明治の監獄は経済、議会政治、宗教、地域社会などとどのように関わりながら、専門性を獲得し、組織と行政運営の自立を確立させていったのだろうか。

第1部では、内務省内における行刑機構の形成過程に注目する。監獄行政が様々な課題、とりわけ財政問題の解決を図りながらいかにして専門知の獲得と行政の方向性を定めていったのか、北海道集治監での囚徒作業、監獄費国庫支弁問題、明治20年代前後の監獄改良事業および東京府の巣鴨監獄建築事業を題材にする。

第2部では、囚徒の精神的な改善を行う監獄教誨制度の確立過程を取り扱う。内務省は財政的自立化を進めながら、同時に国際的な監獄改良ネットワークに接続して専門知の形成も図っていた。監獄行政の中枢を担うようになる小河滋次郎、明治初年から篤志的に教誨に携わってきた東西本願寺、あるいは教誨の制度策定にも関わるようになる原胤昭や留岡幸助らキリスト者。これらの関係性の中から、いかなる監獄教誨制度が生まれ、それが行刑機構の確立にどう作用したのか。そして最後に、それに深く立ち会った宗教への影響についても考察する。

著者プロフィール

赤司 友徳(アカシ トモノリ)

2015年、九州大学大学院人文科学府博士後期課程単位取得退学。ルール大学ボーフム東アジア研究学部
客員研究員、ルーヴェン・カトリック大学文学部客員研究員などを経て、現在、九州大学大学院医学
研究院学術研究員(九州大学医学歴史館学芸員)。博士(文学、九州大学)。

主な著作
 寺内正毅関係文書研究会編『寺内正毅関係文書 1』(共著編、東京大学出版会、2019年)
「巣鴨監獄の誕生  ある公共建築事業を政治史として」(『九州史学』第184号、2019年)
「第一次世界大戦下におけるある知識人の日  波多野培根と大戦報  」(『西南学院史紀要』第10巻、2015年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 問題の設定と視角

  1 先行研究の整理・課題
  2 本書の課題と視角
  3 本書が対象とする時期
  4 本書の構成

  第Ⅰ部 明治期監獄行政機構の形成過程

第1章 外役から内役へ
    ──北海道集治監での監獄作業および処遇方針の変容とその歴史的位置づけ──

 はじめに
 第1節 徒流刑地としての北海道
  1 明治初年の刑法典と「監獄則」の制定過程
  2 明治刑法典における徒流刑
  3 樺戸集治監の設置
 第2節 北海道集治監における監獄作業
  1 北海道集治監と外役
  2 明治10年代後半の政府部内における囚徒処遇の方針
  3 外役の実態とその変化
 第3節 監獄改良の進展と感化主義への転換
  1 旧弊への批判
  2 明治22年「監獄則」の蹉跌
  3 北海道集治監の変調
 おわりに

第2章 明治中期における監獄費国庫支弁問題とゆるやかな制度変化

 はじめに
 第1節 監獄費地方税支弁化による監獄運営の混乱
  1 内務省の場合
  2 府県の場合
  3 監獄関係者の場合
 第2節 初期議会における監獄費国庫支弁法案とその政治的文脈の変化
  1 法案提出──第2議会
  2 法案趣旨の変化、内務省と監獄課──第3議会
  3 政府の方針転換と法案支持者の拡大──第4・第5・第6議会
 第3節 監獄費国庫支弁法案の成立とその課題
  1 法案審議の再開と監獄局の再置
  2 横浜商業会議所所員監獄視察報告一件
  3 法案の成立とその課題──第13・第14議会
 第4節 監獄費国庫支弁問題と監獄行政における制度変化
 おわりに

第3章 明治20年前後における監獄改良
    ──監獄行政の営為とドイツ監獄学の受容──

 はじめに
 第1節 監獄を取り巻く国内外の状況
  1 監獄改良の国内的背景
  2 対外的背景としての条約改正問題
 第2節 大日本監獄協会有志獄事協議会
  1 協議会の概要
  2 協議会における議事内容
 第3節 フォン・ゼーバッハと監獄改良
  1 監獄官練習所設立の経緯
  2 フォン・ゼーバッハの業績の再検討
 おわりに

第4章 巣鴨監獄の誕生──ある公共建築事業を政治史として──

 はじめに
 第1節 監獄建築基準の制度的変遷──明治初年から巣鴨監獄落成まで
 第2節 石川島監獄移転地の選定をめぐる東京府会、警視庁
 第3節 弥生党と木曜党──明治21年6月臨時会
 第4節 巣鴨監獄基本設計の策定
  1 第一案と総工費の決定──明治21年6月~明治22年5月
  2 大日本監獄協会の意見と第二案──明治22年6月~明治23年7月
  3 二つの意見と第三案──明治23年10月~明治24年3月
 第5節 内務省の反省と監獄建築標準の挫折
  1 巣鴨監獄への不満
  2 監獄建築標準の設置構想とその頓挫を経て
 おわりに

  第Ⅱ部 監獄行政機構の確立と宗教

第5章 内務省と仏教教誨師──教誨制度における協調関係の実態──

 はじめに
 第1節 明治14年以前の教誨の実況
  1 国民教化運動と囚徒説諭
  2 囚徒説諭の行政的手続き
  3 囚徒説諭の内容と実施状況
 第2節 「常置教誨師」制度──内務省と宗教勢力の協調関係
  1 明治14年「傭人分課例」「司獄官吏傭人設置程度」「監獄則」──「教誨師」の明文化
  2 内務省と仏教者の協調関係
 第3節 常置教誨師制度の確立と東西本願寺
  1 明治22年「監獄則」「監獄則施行細則」「看守及監獄傭人分掌例」
  2 常置教誨師の待遇──東京府諸監獄の事例
  3 薄給の教誨師たち、東西本願寺の動機
 第4節 教誨制度をめぐる協調関係の変化──内務省と仏教者
  1 大日本監獄協会有志獄事協議会
  2 監獄教誨師会議の流行
  3 本山派遣による仏教教誨の課題
 おわりに

第6章 内務省の教誨政策と北海道集治監キリスト教教誨師

 はじめに
 第1節 監獄関係者たちの教誨論
 第2節 キリスト教教誨師による教誨活動
  1 兵庫仮留監時代の原胤昭
  2 北海道集治監時代の原胤昭と「同情会」
  3 原胤昭と留岡幸助の海外交流
 第3節 大井上輝前典獄と「北海道バンド」の教誨事業
  1 北海道集治監「教誨規程」
  2 北海道集治監教誨師会同
  3 北海道集治監における監獄改良事業の終焉
 第4節 内務省の教誨方針──小野田元凞警保局長、板垣内務大臣、小河滋次郎監獄事務官
  1 小野田元凞警保局長時代
  2 小河滋次郎の教誨方針と明治三一年典獄諮問会議
 おわりに

第7章 19世紀末における監獄改良のグローバルネットワーク
    ──小河滋次郎、留岡幸助の人脈形成──

 はじめに
 第1節 万国監獄会議と日本の参加
 第2節 留岡幸助の人脈形成とその広がり
  1 北海道集治監空知分監教誨師時代──1891(明治24)年5月~1894(明治27)年5月
  2 米国遊学時代──1894(明治27)年5月~1896(明治29)年5月
  3 帰国後──1896(明治29)年5月以降
  4 同志社系の人びとによる留岡人脈の活用
 第3節 監獄官僚系の人びとによる国際交流
  1 大日本監獄協会
  2 清浦奎吾
 第4節 小河滋次郎による人脈形成、その活用と情報発信
  1 日本の監獄関係者への情報提供
  2 小河滋次郎と留岡幸助の文通
 おわりに

第8章 「監獄教誨」制度の確立と巣鴨監獄教誨師事件

 はじめに
 第1節 巣鴨事件前夜
  1 有馬四郎助の動向
  2 内務省の監獄教誨方針と留岡幸助の採用
  3 共和演説事件
 第2節 巣鴨監獄教誨師事件
  1 巣鴨事件の発端
  2 石川舜台の檄文に対する反応──内務省、東本願寺
  3 巣鴨事件の政治化過程
  4 巣鴨事件の決着
 第3節 巣鴨事件以後の教誨制度「監獄教誨」の確立
  1 明治32年「監獄則」「監獄則施行細則」の改正
  2 明治36年「監獄官制」の改正
 おわりに

終 章 監獄行政機構の自立とその意義

 あとがき
 注
 事項索引
 人名索引


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