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流動する労働力と農家経営満洲の農村社会

満洲の農村社会 流動する労働力と農家経営

A5判 304ページ
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-7664-3010-3 C3022
奥付の初版発行年月:2025年02月 / 発売日:2025年02月中旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

逞しく生きた労働者の等身大の姿を描く

労働力移動と農家経営を中心にミクロな分析を行ない、 19世紀末から中国共産党の土地改革時期までの満洲社会像と農村経済の歴史的展開を浮き彫りにする力作。

満洲の開発・開墾は近代以降の複雑な内外情勢の中で急速に進展し、特に鉄道が重要な役割を果たした。また、20世紀初頭からは農業に加えて工業や鉱業などの諸産業も発展し、地域社会や人々の生活に大きな影響を与えることになった。 本書では、日本植民地史研究と中国近現代史研究の両方のアプローチから、満洲の労働力と農家経営に対してミクロな分析をする。とりわけ農村で生活する労働者たちに注目し、彼らの地理的移動と職業移動という二つの動きから農家経営のあり方や、現地農民の行動原理と経営戦略を捉える。

著者プロフィール

菅野智博(カンノトモヒロ)

慶應義塾大学経済学部准教授。
1987年中国吉林省生まれ。東北師範大学歴史文化学院での留学を経て、2011年宇都宮大学国際学部国際文化学科卒業、2013年一橋大学大学院社会学研究科修士課程、2018年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。日本学術振興会特別研究員DC1およびPD、中山大学歴史学系(珠海)副教授を経て、2021年より現職。専門は中国近現代史、東アジア近現代史。
共編著に『戦後日本の満洲記憶』(佐藤量・菅野智博・湯川真樹江編、東方書店、2020年)、『崩壊と復興の時代――戦後満洲日本人日記集』(佐藤仁史・菅野智博・大石茜・湯川真樹江・森巧・甲賀真広編著、東方書店、2022年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 農村から満洲を問う意味
1 満洲農村の軌跡──歴史的背景
2 日本における満洲研究の展開
3 満洲農村をめぐる論点──先行研究の整理と課題
4 研究手法と史料
5 本書の構成

第1章 近代日本の満洲農村調査
はじめに
1 満洲国成立以前の調査
2 産調による農村実態調査
3 農村実態調査の意義と批判
おわりに

第2章 雇農と村落社会
はじめに
1 村落形成と農業形態
2 雇農の労働形態
3 労働条件
4 年工の雇用と社会関係
5 雇用主との関係
おわりに

第3章 雇農の移動からみる社会関係
はじめに
1 雇農農家の移動
2 移動の動機と経路
3 大経営農家と雇農の関係──綏化県蔡家窩堡の事例
おわりに

第4章 農業労働力の雇用と労働市場
はじめに
1 南満洲における工夫市の形態分析
2 工夫市の利用者と雇用方法
3 工夫市と地域社会──盤山県を事例に
おわりに

第5章 農業外就業と農家経営──南満洲の遼陽県前三塊石屯を事例に
はじめに
1 農業外就業の展開
2 南満洲における農業経営と労働力
3 農業外就業と農家経営の多角化
おわりに 

第6章 分家からみる農家経営の変容──北満洲の蒼氏一族を事例に
はじめに
1 北満洲における農家経営形態
2 蒼氏の分家
3 分家に伴う農家経営の変容──大経営の拡大と中小経営の零細化
おわりに
補節 1980年代以降における蒼氏の宗族活動
蒼氏一族の分家資料

補論 1945年以降の農村社会──土地改革と互助合作の展開
はじめに
1 土地改革の展開
2 土地改革に伴う農業生産の諸問題
3 互助合作運動と農業生産
おわりに
 
終章 労働力と農家経営からみる満洲農村社会
1 本書の内容
2 本書の成果と位置づけ

主要史料一覧 
あとがき
索引


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